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更新日 2011-05-17 | 作成日 2007-10-09

Research

Based on Wheat Cell-free Protein Production System

IMG_1273 のコピー.JPGisola d'Ischia

遠藤研の研究テーマ

ポストゲノム研究に必要とされるバイオ技術は、ゲノムに記載されている生命情報を読み解くことです。このためには先ず、(1)遺伝子情報から高品質のタンパク質を自由自在に生産して、(2)それらの機能や構造を生化学的に記載し(遺伝子辞書作り)、(3)タンパク質の複雑なネットワーク地図を描き、それらの文意を理解することが必須となります。遺伝子情報だけでは、タンパク質分子の言わばスペルが判明しただけで、その意味は不明なのです。そこで、遠藤研では、40億年の進化シナリオと現生命体ドラマの読破に向けて、上記のバイオ要素技術の研究・開発を進めています。

2011   〈8つのテーマで研究を進めています〉

19FV3506_加工up2.jpgコムギ無細胞タンパク質合成法の確立
EU.jpgタンパク質ライブラリーの作成
GST-PG 精製-2 03.8.20.jpg膜タンパク質を含むタンパク質複合体の調製方法の確立
IMG_1943 のコピー.JPGタンパク質ネットワークの探索技術の確立
P4140315_1.JPGカスパーゼの基質探索
P7261749.JPGHCV、インフルエンザおよびHIV増殖に関与する宿主因子の探索
P4200437.JPGがん抑制タンパク質を分解するE3リガーゼの探索

IMG_1271 のコピー.JPG自己抗体プロファイリング技術の開発

これまでの成果

コムギ抽出液

胚芽.jpg安定なコムギ抽出液の単離に成功!

従来の無細胞タンパク質合成法は、翻訳酵素源としての抽出液中に含まれる自己翻訳不活性化・阻害因子の混在による翻訳反応の不安定性のために収量が非常に低く、タンパク質生産方法としては利用できませんでした。遠藤研では、従来法の不安定性の原因を解明することから、その解決方法の開発に取り組み、コムギ種子胚芽を材料に選び、胚乳からの翻訳阻害因子群を排除することによって、従来の300倍を越えるタンパク質合成量を誇る安定な翻訳酵素源を調製することに成功しました。

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新しい真核型mRNA

web用007.jpg新しい真核型mRNAのデザインに成功!

真核生物のmRNAにはキャップ構造やポリAテールが付加されており、これらは大量のタンパク質生産には不向きでした。そこで、遠藤研では、キャップ構造の代わりに新しくデザインした翻訳エンハンサー配列、ポリAテールの代わりには長い配列を付加することにより、従来より安定で高効率なmRNAをデザインすることに成功しました。

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発現ベクターの構築

pEU-E01.jpg コムギ無細胞系専用ベクターの開発

新しくデザインされたmRNAを元に、タンパク質生産に適したコムギ無細胞タンパク質合成専用ベクターの開発を行いました。
 現在では、コムギ無細胞系でのタンパク質合成には世界中でこのベクターが利用されています。

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新しいDNA鋳型構築法

web用.002.jpgPCR法を用いた新しいDNA鋳型構築法の開発に成功!

新しくデザインされたmRNAの鋳型を簡単に構築できるように、プロモーター部分を2つのプライマーで分断した“Split-PCR法”の開発に成功しました。この方法により、従来のDNA組み換え法を用いることなく、誰でも簡便に、タンパク質合成のための多種類の鋳型作りができるようになりました。
 ちょっとしたアイデアでしたが、現在では、数千種類の遺伝子がこの方法で簡単にタンパク質合成のための鋳型に構築されています。

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新しいタンパク質合成方法

BilayerPhoto.jpg機能解析に適した新しいタンパク質合成法の開発に成功!

ポストゲノム時代には、遺伝子の配列をもとに、タンパク質を合成し、その機能を知る技術が求められています。私達は、タンパク質の機能解析に適した新しいタンパク質合成法の開発に成功しました。この方法により、簡便にタンパク質の酵素反応を調べることができるようになりました。

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世界初!自動タンパク質合成装置

GeneDecoder2.jpg世界で初めて自動でタンパク質を合成する装置の開発に成功!

愛媛大学発のベンチャー会社、セルフリーサイエンス社が設立され、本格的に私達がこれまでに開発してきた技術を広めることになりました。そこで、セルフリーサイエンス社と共同で、これまでの技術を集積することにより、自動でタンパク質を合成する装置の開発に世界で初めて成功しました。
 この装置は一度に384種類のタンパク質を自動で合成できるため、この装置を1台あれば、約2ヶ月でヒトがもつ全ての遺伝子をタンパク質にすることができます。ちょっとした自慢です。

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世界初!試験管内ポリソーム像

ポリソーム_Figure1.jpg世界で初めて試験管内でのポリソームの電子顕微鏡像の撮影に成功!

真核生物の細胞内では、1つのmRNAに数個から数十個のリボソーム(タンパク質合成するための生物学的マシーン)がついて、タンパク質を合成している電子顕微鏡像が得られていました。私達は、自分たちで作ってきたタンパク質合成系で同じ様な像を観ることができないか調べてみたところ、簡単に電子顕微鏡像を得ることが出来ました。これは、従来より安定で高効率なタンパク質合成系だからできたのです。また、面白いことに私達が新しくデザインしたmRNAでも、真核型のmRNAと同じようにポリソームを形成することがわかり、電子顕微鏡レベルで私達が新しくデザインしたmRNAの機能が同等であることがわかりました。

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DBtagタンパク質チップ

CASP3切断_FIg4.jpgDNA結合タンパク質とアガロース/DNAマトリックスを利用したチップ上でタンパク質の精製と固定を同時に行える3次元タンパク質チップの開発

網羅的なタンパク質解析には、タンパク質チップが有用です。しかし、これまでのタンパク質チップは、乾燥状態になってしまい、ほとんどのタンパク質は変性タンパク質となって、チップ上に固定されていました。そのため、タンパク質の機能を解析するには、乾燥に強いタンパク質のみが対象になっていました。そこで、私達は、乾燥を防ぐために高分子でポアサイズが大きいアガロースを利用し、また、タンパク質の精製と固定を同時に行うために、DNAに結合する新規なタグ(DBtag)を見つけ出し、応用しました。その結果、新たにデザインされたタンパク質チップ上で、プロテインカイネースの活性、タンパク質ータンパク質相互作用、カスパーゼ3による基質タンパク質の切断を確認することができました。今後、これをさらに発展させて、次世代の機能解析が簡単にできるタンパク質チップの開発を目指します。

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新しい植物老化細胞死機構

植物細胞死_Figure3.jpg植物老化時の細胞死では、リボソームの不活性化が起こっている

植物は、リボソームを不活性化する2種類の酵素(RIP: ribosome-inactivating proteinとRALyase: RNA apurinic site specific lyase)を持っています。幸いなことに、2種類とも、私達の研究室で、世界で初めて同定できました。その生化学的な不活性化メカニズムは、リボソームRNAの特定のたった一箇所のアデニンを取り除き(RIP)、その箇所を切断します(RALyase)。その結果、リボソームがもつアミノ酸をつなげる能力が完全に失活します。実は、大腸菌O-157のベロ毒素や、赤痢菌のシガ毒素も、別のタイプのRIPで、同じ箇所のアデニンを除去して動物の細胞死を引き起こします。私達は、何故、植物がこのような酵素群をもっているか不思議に思っていました。そこで、コムギが老化する過程でこの酵素の働きを調べてみると、老化時のプログラムされた細胞死の過程で、この酵素の遺伝子発現が誘導され、自分自身のリボソームを不活性化していることを見出しました。この酵素達は、動物のゲノムでは見つかっていないので、ひょっとすると、細胞死メカニズムは植物と動物では、大きく違っているのかも知れません。

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Caシグナルとストレス応答

Caシグナル_STIP1.jpgカルシウムシグナルにより、ストレス誘導タンパク質は核へ移行する

細胞は、カルシウムを様々な形で細胞内外のシグナル分子として利用しています。コムギ無細胞タンパク質合成系を駆使し、カルシウムより活性化するプロテインカイネース(CaMK2d)の基質探索を動物細胞(Hela)から行ったところ、ストレスにより誘導されるタンパク質(STIP1)がCaMK2dによりリン酸化されることを見出しました。さらに、CaMK2dでリン酸化されたSTIP1は、核へ移行することがわかりました。STIP1は、ストレス応答に必要な熱ショック蛋白質と結合することが知られています。これらのことから、ストレス時に、カルシウムはCaMK2d→STIP1の作用により、熱ショックタンパク質を核へ運ぶシグナルとして働いていることがわかりました。

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核内受容体の生化学的分類

生化学的アノテーションNR_Fig4.jpg世界初の試みとして、生化学的解析による核内受容体のアノテーション

遺伝子の分類は、配列情報から行うことが一般的でした。確かに、転写因子や翻訳因子といった、遺伝子の大きな機能を推測するには、その手法はとても強力です。しかし、例えば転写因子と予測されても、どの様なDNA配列に結合するのかわからないため、どの遺伝子の転写制御に関与しているか予測することは不可能でした。そこで、コムギ無細胞タンパク質合成系を駆使し、脂質性ホルモンにより転写制御する核内受容体ファミリーを対象に、網羅的なDNA結合配列解析を行いました。その結果、これまでは別のグループと考えられて核内受容体が、実は、同じ遺伝子群を制御している可能性があることを見出しました。まだまだ今後の解析が必要ですが、このように従来のような配列からの分類とは異なり、生化学的解析に基づいた分類を提示することにより、より詳細な遺伝子の役割を予測していくことができるかも知れません。

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簡便・高感度ユビキチン・ポリユビキチン検出技術の開発

PolyUb.jpgコムギ無細胞蛋白質合成系とルミネッセンス検出機器と組み合わせたユビキチン・ポリユビキチン化の検出

細胞内シグナル伝達機構の1つとして、最近、ユビキチン化やポリユビキチン化が注目されています。これまで、ユビキチン化は細胞がもつ単なる蛋白質分解と考えられていましたが、どうもそうでなく、細胞内の蛋白質の局在や活性制御にも、深く関わっていることがわかってきました。しかし、ユビキチン化には、多数の蛋白質が関与していることが知られており、解析することがなかなか困難でした。そこで、我々は、これまでに開発してきたコムギ無細胞蛋白質合成系を基盤に、ルミネッセンス検出技術と組み合わすことで、これまでより数十倍も高感度で簡便な技術を開発できました。この技術を用いることで、数百種類の蛋白質であっても、1日あれば、簡単にユビキチン化やポリユビキチン化を検出することができます。これにより、まだまだ未知なユビキチン経路の解明が飛躍的に進むことになると思います。

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BISOP: 新しいタグフリータンパク質精製技術

BISOP_Fig3.jpgsortase酵素を利用した、精製タグが除去された高精製度なタンパク質を必要とする時に威力を発揮!! 自動化も可能

現在の生命科学研究において、組換えタンパク質はなくてはならないものです。我々は、コムギ無細胞系を構築し、非常に多くの組換えタンパク質を手に入れる技術を開発してきました。組換えタンパク質を精製する場合、ヒスチジンを6〜10個つなげたヒスチジンタグや、グルタチオンに結合するGlutathione-S-transferase (GST)などの“精製タグ”を組換えタンパク質に付加するのが、一般的です。しかし、これらの精製タグは時として、タンパク質の機能や構造に対して、ネガティブな影響を起こす場合がありました。そこで、我々は、簡便に精製タグを除去しながら精製できる、コムギ無細胞系に適した新しいタンパク質の精製技術(BISOP法と名付けました)の開発に成功しました。この手法は、グラム陽性菌の多くがもつsortaseというプロテアーゼ活性とペプチド転移活性を併せ持つ酵素を組換えタンパク質の精製に利用しています。sortaseは、カルシウムとトリグリシンを添加するだけで、非常に高効率に、LPETGというアミノ酸配列のTとGの間を切断します。そのため、目的タンパク質のN末側にLPETG配列を付加しておくと、タグが除去された(グリシン1つのみ)目的タンパク質を得ることが出来ます。従来でもこの技術はあったのですが、細胞内で切断されてしまうという欠点があり、一般には使用できませんでした。 我々は、無細胞系にBAPTAというカルシウムキレーターを添加し、さらにsortaseのN末のビオチン化によりストレプトアビジンビーズで精製するという工夫により、いくつかの問題を解決し、非常に簡便で、精製度が高い精製方法BISOPを構築することができました。しかも、自動タンパク質合成・精製装置のProtemist DTIIでも利用可能です。また、複合体タンパク質の精製も可能です。溶出条件がマイルドですので、高比活性のタンパク質精製にも適しています。

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ビオチン化タンパク質ライブラリー: 診断マーカー探索の切り札となるか

BPL_Fig1b.jpg血清中の構造認識自己抗体を全自動、高感度、高速に検出可能

高等動物がもつ免疫応答は、最も素早く、正確に分子を認識する生物機構です。一般的には、ウイルスなどの異物に対して抗体が作成され、攻撃して、生体を守ります。また、反対に、自分自身の蛋白質などに反応する抗体(特に自己抗体と呼ばれています)が作られてしまうと、自己免疫疾患などの疾病を誘発します。 しかし、最近の研究では、ガンなど様々な疾病においても、本来あるべき姿ではないと捉え、“異物”として応答し、自己抗体が作られることが知られています。また、自己抗体の多くは、構造を認識している可能性も指摘されています。そこで、我々は、N末端に1箇所だけビオチン化したタンパク質ライブラリーを作成し、AlphaScreenという既存の技術と組み合わせることにより、構造を保持したタンパク質を用いて、自己抗体を網羅的に検出できる技術の開発に成功しました。この技術により、ガンなどの疾患特異的に誘導される自己抗体を見つけることが期待されます。血液を一滴調べるだけで、ある程度正確な診断ができる日は、そう遠くないかも知れません。

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NCtaggedタンパク質ライブラリー: プロテアーゼ基質探索ための新しい方法論

CASP3_図1.jpgN末端にFlagタグ、C末端にビオチン化タグを付加したタンパク質(本研究ではプロテインカイネース)の合成と、プロテアーゼ(本研究ではカスパーゼ3)の基質探索技術の概要

プロテアーゼは、タンパク質を切断することにより、タンパク質の形を変えたり、タンパク質の細胞内局在などを変化させたり、時に増殖因子などのホルモンの放出に関与しています。ヒトゲノム上には500種類以上のプロテアーゼが見つかっています。これは、外的刺激や細胞増殖を高度に制御するプロテインカイネースの種類と匹敵します。つまり、プロテアーゼは、非常に重要な細胞内情報伝達の制御因子であるといえます。しかし、細胞内には非常に多種類のプロテアーゼが働いているため、どのタンパク質がどのプロテアーゼにより切断されるか、見極めることは困難でした。そこで、我々は、プロテアーゼの基質タンパク質を検出・同定できる探索技術の開発を目指しました。工夫した点として、基質タンパク質として、N末端とC末端に目印(タグ)を付加したタンパク質ライブラリー、切断検出には図に示したAlphaScreenを用いることにより、非常に網羅的・高感度にプロテアーゼにより切断されるタンパク質の同定に成功しました。これまで15年間の間に、カスパーゼ3で切断されるプロテインカイネースは31種類同定されていたのですが、我々の技術を用いると、たった一回のアッセイで30種類の新しい基質プロテインカイネースを同定することができました。現在、他のカスパーゼの基質探索のみならず、ウイルスのプロテアーゼで切断される宿主タンパク質の同定にも成功し、細胞内での切断の役割について研究を進めています。

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植物がもつ自己リン酸化活性型キナーゼの探索

AP_plantPK.jpgN末端をビオチン化した植物キナーゼの自己リン酸化を抗リン酸化Ser/Thr抗体で検出する技術の原理

生物は、細胞内に、外的要因や内的要因の変化を的確に伝える情報伝達系を持っている。環境変化やホルモンなどは、基本的に細胞膜上の受容体と感知もしくは結合し、細胞内の情報伝達系を介して、遺伝子の発現や酵素活性を変化させます。そのため、細胞内情報伝達は、細胞増殖や細胞死、細胞分裂など、ほぼ全ての生命現象を制御しています。 プロテインカイネース(通称キナーゼ)は、タンパク質をリン酸化し、構造変化やタンパク質の複合体形成などを誘導するため、細胞内情報伝達の主要経路の1つと考えられています。動物では、解析が進んでおり、抗がん剤ターゲットの多くは、キナーゼです。しかし、植物には、そのゲノム上に動物の2倍ほど(千種類以上)の種類のキナーゼが見つかっているにも関わらず、植物は非常に解析が遅れているのが現状です。遺伝子配列は似ているけれども、本当にこの遺伝子はキナーゼ活性をもっているのかわからない?という様な状況です。遺伝子がキナーゼ活性をもっているかどうか調べるには、遺伝子を鋳型にタンパク質を合成し、タンパク質の活性を調べる必要があります。しかし、これまでの技術では、何百種類もある沢山のキナーゼタンパク質を合成するのが大変でしたので、解析がなかなか進みませんでした。ここで、私達が開発してきたコムギ無細胞タンパク質合成技術の出番です。我々は理化学研究所植物科学センターの篠崎教授がもつ植物(シロイヌナズナ)完全長cDNAクローンの中から、数百種類のキナーゼタンパク質を合成することに成功しました。そこで、キナーゼ活性を有するかどうかの1つの指標として、多くのキナーゼがもつ自己リン酸化活性を調べました。その結果、759種類のシロイヌナズナキナーゼタンパク質の中から、179種類のキナーゼが自己リン酸化活性を有していること、つまりキナーゼ活性を有しているがわかりました。植物にいくつか自己リン酸化活性で自分自身を活性しているため、これは活性制御機構を考える上で指標となります。

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難問!! 膜タンパク質の合成・精製への挑戦

MP_Acudenz.jpgN末端に蛍光タンパク質(GFP)を融合した膜タンパク質の密度勾配遠心分離の様子

様々な環境変化やホルモンなどは、基本的に細胞膜上の受容体と感知もしくは結合し、細胞内の情報伝達系を介して、遺伝子の発現や酵素活性を変化させます。そのため、受容体がどの様に細胞内へ情報伝達を行っているのかを解明することは非常に重要な研究です。しかし、膜タンパク質の合成は非常に難しく、これまでの技術では、機能をもった膜タンパク質を、人工的に合成する技術はありませんでした。我々の無細胞センターの戸澤教授の研究成果により、コムギ無細胞タンパク質合成系に人工膜であるリポソームを添加することにより、植物の膜タンパク質の1種、リン酸トランスポーターが活性を保持したまま合成することに成功しました(もっと詳しくLinkIcon)。そこで、我々は、他の膜タンパク質の合成にもこの技術が応用できるか、特に、薬開発に必要な膜タンパク質の代表例であるGPCRタンパク質の合成に挑戦しました。また、膜タンパク質は合成だけでなく、水に溶けないため、膜タンパク質精製は、ほとんど不可能なくらい困難な作業です。我々は、リポソームに取り込まれた膜タンパク質を、リポソームごと精製することに成功し、これで、今まで困難であった膜タンパク質の合成・精製するための技術ができました。40種類以上の膜タンパク質がこの技術で合成できたため、非常に汎用性が高い可能性があります。

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カスパーゼ8はIL21シグナルを負に制御する

Akagi_Fig6.jpgカスパーゼ8によるインターロイキン21(IL21)シグナルの負の制御機構モデル

カスパーゼ8前駆体(procaspase-8)は、細胞膜内側近くに存在し、TNFαやFasといったアポトーシス誘導シグナルにより活性化し、カスパーゼ3などの活性化を誘導し、細胞死を引き起こします。しかし、近年、細胞死以外にも、マクロファージ分化など、血球系の分化などに関わっている可能性が指摘されています。そこで、我々は407種類のシングル膜貫通領域をもつ膜タンパク質(sTMP)からなるNCtaggedタンパク質ライブラリーを作成し、カスパーゼ8の基質探索を行いました。その結果、3つのsTMPがカスパーゼ8の基質であること、中でも、IL21受容体がカスパーゼ8のみならず、カスパーゼ3にも切断されることを見出しました。STAT3リン酸化を指標にIL21シグナルを調べたところ、カスパーゼ8/3切断IL21受容体は、STAT3のリン酸化を誘導できないことから、カスパーゼ8は、IL21受容体の切断を介して、IL21シグナルを負に制御することがわかりました。

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