No.8
         2003. 7. 21 発行
ニュース

 No.2          2003. 7. 21 発行
CMESニュース 目次

・県知事表彰
・沿岸海況情報システム−宇和海において観測点を増設、北海道恵山でも稼働開始
・新聞紹介記事「海砂採取後の海底の一部に環境修復の動きあり」
・ニュース報道紹介「大洲砂堆でナメクジウオ多数発見」
・「途上国ゴミ集積場のダイオキシン汚染」に関する論文SCIENCE NEWSで紹介
新聞紹介記事「栄養価低い植物プランクトン?アコヤ貝成長期に増殖、体力奪い感染症を誘発」
・新聞紹介記事「琵琶湖のカワウ、人間の数百倍のダイオキシン濃度」
・新任教官自己紹介
・CMES研究員自己紹介(1)
・CMES研究員自己紹介(2)
・第10回環境科学特別セミナー開催報告
・オレゴン州立大との協定締結に向けて
・大型プロジェクト採択「人・自然・地球共生プロジェクト」水循環変動予測ミッション
・CMES年次研究成果報告会・21世紀COE若手研究成果報告会開催報告
・CMESニュース編集後記

21世紀COEニュース 目次

・田辺教授、再び世界トップランクの論文被引用数
・岩田助教授の論文がMost Downloaded Articlesに
・国際シンポPRIMO(米国)参加報告
・XIIth International Conference on "Heavy Metals in the Environment" 参加報告
・「21世紀COEプログラム」および「生物環境試料バンク」のロゴ決定
・外国人客員教授自己紹介
・第4回21世紀COE特別セミナー開催報告
・第5回21世紀COE特別セミナー開催報告
・若手の会を発足しました
・COE研究員自己紹介(1)
・COE研究員自己紹介(2)
・COE研究員自己紹介(3)
・COE研究員自己紹介(4)
・21世紀COEプログラム国際ワークショップ開催
・若手研究採択状況

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県知事表彰

 CMESセンター長の武岡教授が、平成15年2月に県政発足記念日知事表彰を受賞しました。この賞は愛媛県の発展に功績のあった人をたたえるもので、教育文化、生活環境など9つの分野で42人が表彰されました。武岡教授の受賞は、環境関係の県の委員会委員等の様々な活動が評価されたものです。CMESでは、沿岸環境科学の推進ばかりでなく地域社会の発展に貢献することも大きな目的としており、今回の受賞はCMESにとって重要な意義があるものといえます。

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沿岸海況情報システム―宇和海において観測点を増設、北海道恵山でも稼働開始−

 豊後水道東部の宇和海沿岸では、太平洋から黒潮系の海水が流れ込む「急潮」がたびたび発生して水温が大きく変動し、海洋環境に様々な影響を与えています。CMESではこれまでの急潮に関する研究を踏まえ、約2年前に愛媛県水産試験場、愛媛県中予水産試験場と協力して「宇和海水温情報システム」の運用を開始しました。先頃、更に細かい情報を提供するため、宇和海において水温計測ブイを増設し、津軽海峡に面する北海道の渡島半島恵山沖において新たに水温計測ブイを設置しました。開設時よりも充実したシステムについて紹介いたします。
 この沿岸海況情報システムは、宇和海沿岸および北海道恵山沖に設置した水温計測ブイからORBCOM衛星経由で送られてくるデータをリアルタイムでCMESのホームページ上で公開するものです。宇和海では当初、水温計測ブイを3測点に設置しましたが、現在では南は豊後水道南部の沖ノ島から北は法華津湾まで計7地点に設置されています。水温計測ブイが増設されたことにより、全ての測点におけるデータを時系列にして並べると外洋側から豊後水道へ進入した黒潮系暖水が宇和海を北に伝播する様子がうかがえるようになりました。また、北海道渡島半島の恵山沖の水温計測ブイは、渡島海洋環境ネットワーク推進協議会・えさん漁協の協力のもと運営されています。設置ポイントは津軽海峡の太平洋側出口にあたり日本海を北上してきた対馬暖流水と亜寒帯系の冷たい水塊の境界付近に位置しています。起源の異なる海水の勢力変化に伴い時々刻々と変化する海の状況をリアルタイムで報告します。宇和海、津軽海峡はともに水産業が盛んな海域ですが、迅速で細かい水温情報は効率的な水産業の実現に寄与できる可能性があり、大きな期待が寄せられています。
 なお、この水温情報システムは、大学評価・学位授与機構による全学テーマ別評価「研究活動面における社会との連携及び協力」において、特に優れていると評価されました。(環境動態解析分野:兼田淳史)
図の解説:宇和海の水温計測ブイの配置図とホームページで公開されている1ヶ月の水温変化のグラフを一例として示しています。外洋側から進入した黒潮系暖水が北に伝播するとき、南の観測地点から昇温する様子がうかがえます。携帯電話版のホームページもあります。
(http://ccserv.adm.ehime-u.ac.jp/~cmes/database.htm)
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新聞紹介記事「海砂採取後の海底の一部に環境修復の動きあり」

 以下の研究内容が朝日新聞3月16日の愛媛版に紹介された。
 広島県竹原市沖の大久野島―高根島間の三原瀬戸海域ではかつて海砂が採取されていた。この採取後の海域で海底地形の変化を測定した結果、海域の一部で砂が移動しているとみられる地形の変化が観測された。
 調査を行った三原瀬戸海域は、かつて盛んに海砂採取が行われた海域で、それ以前には水深10m以浅の海域が峰状に連なっていたものが、海砂採取によって水深50m以深にまで掘り下げられた地形変化を被った海域である。この海域では底質も大きく変えられ、採取以前には砂が広く分布していたものが、採取実施後には礫が広く分布する海域へと変えられた。
 今回の調査結果から、同海域において急速な海底地形の回復(砂堆が元通り形成されるような回復)は望めないものの、礫化した底質が砂に被われることによって一部の海域で環境の修復がおこっていること、また覆砂工法など人工的な回復工事についても見込みがあることが示された。(環境影響評価予測分野:井内美郎)
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ニュース報道紹介「大洲砂堆でナメクジウオ多数発見」

 CMESの調査によって、愛媛県北条沖の瀬戸内海で絶滅危惧種ナメクジウオが多数生息していることが確認ナメクジウオの若い個体(体長11.4mm)され、朝日新聞(2003年3月16日)と愛媛新聞(同3月20日)がそれぞれ地方版トップ記事として報じた。この調査は、環境影響評価予測分野井内研究室と生態系解析分野上田研究室が同海域にある大洲砂堆で一昨年から行っているもので、記事では、昨年11月、海底1平方メートルあたり最大で約3000個体のナメクジウオが採集されことが「過去に例のない多さ」(朝日新聞)としてとくに注目された。ナメクジウオは、脊椎動物にもっとも近い無脊椎動物であり、脊椎動物の進化を探る上で貴重な研究材料となっている。かつては砂浜海岸から砂礫浅海底に多く生息していたが、海砂採取や環境の悪化によって激減し、日本の潮間帯ではほぼ絶滅したと言われている。記事の中で、大洲砂堆での高密度個体群の発見をうけて、上田はナメクジウオの主要生息域である砂堆の保護と環境保全を訴えた。ナメクジウオ多数発見のニュースは、地元テレビ各局(NHK、あいTV、愛媛朝日TV)でも報道され、とくにNHKではCMESの協力で大洲砂堆での潜水撮影を行い、2回の地方ニュースのほかに地方ワイド番組の中でも5分間放映された。(生態系解析分野:上田拓史)     写真説明:ナメクジウオの若い個体(体長11.4mm)
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「途上国ゴミ集積場のダイオキシン汚染」に関する論文SCIENCE NEWSで紹介

 米国化学会の学術誌Environmental Science & Technology に受理された当センター生態環境計測分野の研究論文、 Open dumping site in Asian developing countries: a potential source of polychlorinated dibenzo-p-dioxins and polychlorinated dibenzofurans (アジア途上国のゴミ集積場-ダイオキシン汚染の潜在的発生源)が、出版に先立ち米国のSCIENCE NEWS 2003年3月29日号(Vol.163, No.13, 197)に紹介された。SCIENCE NEWSは、1986年にノーベル化学賞を受賞したDudley R. Herschbach博士が編集長を務めるNPOの学術広報誌で、先端研究をわかりやすく社会に紹介する役目を担っている。内容は、同分野の田辺信介教授が国際電話で記者のインタービューに答えたもので、先進国だけでなく途上国にもダイオキシンの大きな発生源が存在することを世界で初めてつきとめ、警鐘を鳴らしたことが評価され、記事として取り上げられた。(生態環境計測分野)
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新聞紹介記事「栄養価低い植物プランクトン?アコヤ貝成長期に増殖、体力奪い感染症を誘発」
(愛媛新聞、2003年3月15日(土曜日)の記事より)


 愛媛県の宇和海では、1990年代から真珠養殖で用いるアコヤ貝の大量斃死が起こり、真珠の生産量が激減し社会問題となっています。この養殖は無給餌で行なわれ、本貝は養殖漁場海域の植物プランクトンを摂食しますが、養殖漁場には本貝の餌として不適な植物プランクトンも存在します。Nitzschia属珪藻は、本貝の餌として不適なものの一つですが、ここ10年間ほどで優占してきており、問題視されています。我々は、本珪藻のアコヤ貝にとっての餌料価値を室内実験において検討しました。
 実験は、内海村海産資源開発センター所有のタンクを用いて行ない、ふ化後6か月のアコヤ貝耐性貝に餌としてNitzschia CCMP1118、珪藻Chaetoceros gracilis、ハプト藻Isocrysis galbana、をそれぞれ与えた系、およびコントロール(無給餌)の系におけるアコヤ貝の2か月間の生長量およびこの間の成長速度と餌の消化の程度を調べました。その結果、Nitzschiaはアコヤ貝にとって消化し易い餌ではありましたが、Nitzschiaを餌として与えられたアコヤ貝は生長量、成長速度ともに他の藻類を餌として与えられた場合よりも低いことが分かりました。アコヤ貝斃死の直接の原因は感染症かもしれませんが、養殖海域にNitzschiaが多く存在することでアコヤ貝は体力を奪われ、病気にかかり易くなるのかもしれません。
 本実験では、宇和海から単離されたNitzschiaを用いていない等、さらに検討すべき点がありますが、この珪藻がアコヤ貝にとって好ましくないことが科学的に証明されつつあります。宇和海におけるNitzschia属珪藻の生態の解明が望まれます。(生態系解析分野:橋本朋樹(大学院生)、中野伸一(助教授) 現在の所属は、農学部物質循環生物学研究室)
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琵琶湖のカワウ、人間の数百倍のダイオキシン類濃度

 琵琶湖のカワウやロシア・バイカル湖のバイカルアザラシなどから、一般の人間よりはるかに高い濃度のダイオキシン類を検出したという沿岸環境科学研究センターの研究成果が、2003年4月27日に時事通信社から配信され、ヤフーなどのネットニュースや赤旗などに掲載された。
 研究班は一昨年に捕獲したカワウ26羽と、1992年に捕獲して凍結保存していたバイカルアザラシ36頭などの組織を化学分析した。カワウの場合、肝臓に含まれるダイオキシン類は、TEQ換算値で脂肪1グラム当たり5万ピコグラムを検出した。このカワウの濃度は、人間の数百倍に達することが明らかとなった。
 また、カワウやアザラシのダイオキシン類の毒性発現に関与するアリールハイドロカーボン受容体の塩基配列を調べたところ、ヒトの同じ受容体よりも高感受性タイプであることが判明した。さらにこれらの動物種では、チトクロームP450の発現量が異常に増えている個体が見つかった。
 これらの結果より、内分泌かく乱化学物質の一種であるダイオキシン類の汚染は、ヒトよりも野生動物の方が深刻である可能性があり、動物の種ごとに影響の受けやすさを明らかにする必要があることが紹介された。(生態環境計測分野:岩田久人)
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新任教官自己紹介   梶原夏子

 平成15年7月1日、沿岸環境科学研究センター・生態環境計測分野の助手に着任いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。学部は東京水産大学(東京都・港区)、修士課程は東京大学海洋研究所大槌臨海研究センター(岩手県・大槌町、現・国際沿岸海洋研究センター)、博士課程は愛媛大学と各地を転々としてきました。海洋生物への興味を抱いて大学に進学し、そこで海洋汚染に関する研究を志しました。現在は、主に水棲哺乳類に蓄積する人工汚染物質の挙動やその影響について研究しています。
 1968年以降、世界各地で水棲哺乳類の繁殖異常、免疫障害、伝染病や腫瘍などの疾病が観察され、個体数の減少や大量斃死の事例も多数報告されています。こうした異常や大量死は、主として人間活動や産業活動の活発な場所で発生しており、死亡個体からは高濃度の汚染物質が検出されています。最近では、1997年および2000/01年にカスピ海でカスピカイアザラシの、2002年にヨーロッパ北部でゼニガタアザラシの大規模な大量死が発生しています。どちらもジステンパーウィルスの感染が直接の死因とされていますが、有機塩素化合物など人工汚染物質の高蓄積により免疫力が低下したことが引き金になったとも考えられています。莫大な数の化学物質のうち、とくに有機塩素化合物(PCBやDDT、HCH、ダイオキシン類など)や有機スズ化合物など内分泌攪乱化学物質の関与が疑われています。なぜなら、これら残留性有機汚染物質による環境汚染は地球規模で拡がりをみせ、高い生物蓄積性に加え内分泌撹乱作用や免疫抑制などの毒性を示すことから、野生生物に対する影響が懸念されているからです。こうした背景を鑑み、大量死した水棲哺乳類を対象に、ダイオキシン類に代表される有機塩素化合物や船底防汚塗料として使用された有機スズ化合物などの残留性有機汚染物質による汚染の実態および蓄積特性の解明を試みています。現在、これら汚染物質の高蓄積による毒性影響発現の可能性を示唆する結果が集積されつつあります。そして、因果関係を裏付けるための疫学的・病理学的研究の進展が今後の課題となりました。
 これまでの研究をとおして得た多くの科学的知見が、化学物質のリスクから野生生物を守る方途の一助になればと切に思います。一方、新たな研究課題も多数派生しました。その一つに、新規化学物質による汚染の現状把握ならびにその毒性影響の解明が挙げられます。とくに、近年社会的関心を集めている有機臭素化合物に関しては、その地球規模での移動拡散の態様、生物濃縮の難易を決める物質側および生物側の要因、内分泌系・薬物代謝酵素系、免疫系の機能撹乱などの情報は乏しいのが現状です。さらに、有機臭素化合物に関して学術的・社会的に注目されていることは、その環境中濃度が近年まで上昇していた事実です。その理由は、PCBsなどの有機塩素化合物の使用が厳しく規制されている一方で、有機臭素化合物は依然として難燃剤等の用途で広く使用されているためです。有機臭素系内分泌撹乱物質の汚染実態と蓄積特性を理解し、その毒性影響を解明することは環境化学や生態毒性学の重要かつ緊急課題と考えられます。以上のことを背景に今後は以下のような研究課題にも取り組みたいと考えています。

1)地球規模での有機臭素化合物汚染の実態解明
(ア)アジア途上国のゴミ集積場およびその周辺環境における臭素系難燃剤汚染の現状把握
(イ)水棲高等動物を用いた有機臭素化合物汚染の広域モニタリング
2)食物連鎖による有機臭素化合物の生物濃縮の態様解明
3)有機臭素化合物の体内分布・年齢蓄積・性差の解明
4)有機臭素化合物汚染の経年変動と将来予測
5)有機臭素化合物の毒性影響評価

 これらの課題に挑戦することによって、臭素系難燃剤の発生源や移動拡散性に関する包括的な知見を集積したいと考えています。また、有機臭素化合物はプラスチックの難燃剤として大量に使用されているため、プラスチック製品の利用が増大している途上国の汚染は今後深刻化する怖れがあります。当研究センターに冷凍保存されている生物環境試料を活用して、有機臭素化合物の時空間的な汚染や生物影響を解明し、その成果を社会に還元していきたいと考えています。
 野生生物の汚染実態を調べることは、ヒトを含む生態系に化学物質がどのような影響を与えているかを理解するためにきわめて重要です。人類が作り出した無数の化学物質により野生生物がおどろくほど汚染されている事実に衝撃を受けた気持ちを忘れずに、そして、野生生物やヒトの胎児は自分の意思でリスクを背負うわけではなく、自分の意思でリスクを削減することもできない存在であることを再認識し、あらたな気持ちでCMESの一員としての研究生活をスタートさせたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
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研究機関研究員自己紹介(1)   久保田領志(生態環境計測分野)

 2003年3月に愛媛大学連合農学研究科生物環境保全学専攻の博士課程を修了し、4月から研究機関研究員の職に就いております久保田領志です。
 博士課程では「海棲高等動物におけるヒ素の蓄積特性および解毒機構に関する比較生物学的研究」というテーマで研究を行ってきました。ヒ素はさまざまな化学形態で環境中に遍在しており、その毒性や動態は化学形態によって大きく異なります。そのためヒ素の代謝や毒性影響を理解するには、化学形態を明らかにすることが不可欠です。魚介類などの海棲低次動物は、一般にアルセノベタインという有機ヒ素化合物の形態で蓄積していることが報告されています。しかしながら、海棲高等動物のヒ素の化学形態に関する情報は極めて少なく、その実態はほとんど明らかにされていません。そこで、鯨類、鰭脚類、鳥類、海亀類などの海棲高等動物を対象に、総ヒ素、ヒ素化合物濃度をHG-AAS、HPLC/ICP-MS用いて測定し、その蓄積特性と解毒機構の解明に取り組みました。海棲高等動物の肝臓中総ヒ素濃度は数ppmレベルと低値であったのに対し、海鳥類、海亀類のヒ素濃度は数十ppmと海棲哺乳類に比べて極めて高く、とくに海鳥類、海亀類の濃度は低次生物に匹敵する値でありました。本研究によって海棲高等動物の中にはヒ素を高濃度で蓄積するものも存在することが初めて明らかとなりました。また、ほとんどの種でアルセノベタインが主要なヒ素化合物でありましたが、その他のヒ素化合物の組成は生物種によって大きく異なりました。これら海棲高等動物の肝臓中ヒ素化合物組成の差は、餌中ヒ素化合物のみでは説明できず、ヒ素の代謝機構は海棲高等動物の種によって異なるものと推察されました。
 近年バングラデシュやインド・西ベンガル地方など世界各地で井戸水のヒ素汚染が報告され、ヒトの慢性ヒ素中毒が懸念されています。これら汚染地域の地下水、ヒトの毛髪、尿中の総ヒ素濃度とその化合物組成に関する研究は活発に行なわれていますが、分子生物学、毒性学的手法を用いてヒ素の生体影響や代謝機構について調査した例は極めて少なく、基礎データを集積し、リスクを評価する研究が求められています。これらのことにも注目し、現在ヒトにおけるヒ素の蓄積特性と解毒機構の解明、海棲高等動物におけるヒ素の蓄積特性と解毒機構の両方の解明を目指し研究を展開しています。
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研究機関研究員自己紹介(2)      馬込伸哉(環境動態解析分野)

 平成15年4月から研究機関研究員として赴任しました馬込(まごめ)です。平成15年3月、九州大学大学院総合理工学府大気海洋環境システム学専攻の博士課程を修了しました。
 博士課程では、(瀬戸内海の西端に位置する)周防灘における河川プリュームの挙動と貧酸素水塊の形成過程に関する研究を行ってきました。貧酸素水塊とは、海水中の溶存酸素濃度が生物活動を阻害するほど著しく低下した水塊で、周防灘では夏季、主に浅海域の底層で局所的・間欠的に発生しています。河川水の流入(およびその後の夏期の強い日射)は、物理的に浮力の注入(密度成層の発達)として影響を及ぼし、大気中から海底への酸素の輸送量を低下させます。またその一方で、河川水の流入は河口域に豊富な栄養塩等を供給し、植物プランクトンの増殖、枯死、沈降、バクテリアによる分解などといった生物学的過程を活発化させ、底層における生物学的な酸素消費速度を増大させます。このように河川水の流入は、物理的にも生物学的にも底層における貧酸素化を促進することが推測されます。在学時の研究では、主に物理的な側面から、貧酸素水塊と河川流量の短周期変動に着目し、過去に蓄積されてきた観測データや、単純化した生態系boxモデルによる解析を行ってきました。その結果、周防灘における貧酸素水塊は河川流量が増大してから約2週間後に発生していることが見いだされました。また、貧酸素水塊の形成時期と貧酸素化の程度が、河川プリューム周辺の循環流の強さ(ひいては、栄養塩や植物プランクトン等の滞留時間)に強く依存することが示されました。そこで、3次元の数値予報モデルにより、河川プリュームの循環構造と挙動を調べました。その結果、循環構造を持った河川プリュームが周防灘南部で発達し、岸を左手に見て西部へ伝播することが示され、これが海底斜面直上の岸向きの流れに起因することが明らかとなってきました。北半球で河川プリュームが岸を左手に見て進むこの現象は、近年海外でも注目されていますが、その詳細は未だ明らかとなっておりません。
 今後は、CMESの豊富な観測機器によって現場観測を行い、定量的な検討やメカニズムの解明に取り組みたいと考えています。また、最近は河川プリュームのほかに、クラゲの大量発生にも関心があり、画像解析や数値モデルなどの手法を駆使して研究してみたいと思います。一歩一歩堅実に進めていくタイプですが、これから出来るだけ多くの研究成果を上げられるよう、武岡先生の指導のもと、気を引き締めてがんばりたいと思います。よろしくお願いいたします。
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第10回環境科学特別セミナー開催報告
 
 平成15年6月9日(月)に、第10回環境科学特別セミナーを愛媛大学総合研究棟で開催した。本セミナーには環境省環境保健部環境安全課の鷲見 学氏を招聘し、“環境ホルモン問題への国内外の取組みについて”という演題で内分泌撹乱物質問題の経緯やわが国の取組み等を、具体的かつわかりやすく講演していただいた。一般市民・学生・教官を含め約70名の参加者があり、有害化学物質問題に対する社会的・学術的関心の高さがあらためてうかがえた。
 1996年にシーア・コルボーンらの著書「Our Stolen Future」で環境ホルモンの生態影響が指摘されたのを契機に、わが国では環境省を中心とした関係省庁で環境ホルモン問題に対する様々な行政施策が開始された。鷲見氏は、講演の中で環境ホルモン問題に対して環境省が取り組んだ事業内容とその成果について詳しく言及した。とくに、野生生物等環境の汚染実態を把握する暴露評価系と、実験動物を対象とした試験研究による有害性評価系を統合させ、環境リスク評価や環境リスク管理を一層充実させる必要性を強調した。また、環境ホルモン問題は一国の範囲内で対応できるものではなく、国際的な連携が極めて重要であることも指摘した。講演後には活発な質疑応答が交わされ、複合汚染や次世代リスクの評価に関する環境省の取組みや、得られた成果を国民に還元する方法および行政発動の基本的考え方や時期等に関して、多くの質問や意見が提示された。21世紀の環境問題は、産・官・学さらには国際的な連携によって初めて解決の糸口が開けることをあらためて認識させられた。(愛媛大学大学院連合農学研究科博士課程1年:久保田 彰)
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オレゴン州立大との協定締結へ向けて

 2000年から愛媛大農学部とオレゴン州立大(OSU,コバリス市)農業科学部が部局間国際交流協定を結びましたが、その際、愛媛大とOSU両方に海洋科学の研究センターがあることから、CMESとOSUハットフィールド海洋科学センター(HMSC、 ニューポート市)の間でも協定を結んだらどうか、という話がありました。それを受けて2001年に鈴木がHMSCを訪問し、共同研究や学生交流の可能性を探っていました。昨年度CMESが21世紀COEに採択されたことも後押しになって、CMESとHMSC間の協定締結の話しが加速してきました。今回、田辺教授と鈴木がHMSCおよびコバリスキャンパスを訪れ多くのスタッフと話し、施設等も視察し、結果的に今年度内に双方で協定を締結することで意見が一致しました。3月に松山で行なわれる21世紀COE国際ワークショップの際にHMSCからセンター長を招いて協定締結式を行なう予定です。OSUの環境・分子毒性学教授ラリー・カーチス(右)、HMSC所長ジョージ・ボエラート(中)と田辺信介教授(左)。OSUコバリスキャンパスにて。
 HMSCはOSU所属のセンターですが、合衆国大気海洋局(NOAA)と合衆国環境保護局(EPA)の研究所が同居しており、研究者の多くはOSU教授を弊任しています。研究分野は物理系、環境系、生物系および水産学系など幅広く、規模はCMESの数倍あり、私は協定を結んで共同研究を進めてゆく相手として不足はない、という感想を持っています。個人的には、院生のころからコバリスの微生物学科およびサケ疾病センターとは繋がりがあり、状況をよく知っていましたが、今回行ってみてスタッフメンバーも変わっており、今後はOSUの新鮮で優秀な研究者たちと共同で研究教育を進めていけることを喜ばしく思っています。当面は、CMESとHMSCの各スタッフ間で共同研究を展開し、さらに学生やポスドクの交換や大学院の単位互換についても前進させる予定です。
 オレゴン滞在は足掛け4日間と短いものでしたが、田辺教授と私はサーモンをはじめ地元の新鮮な海の幸を堪能し、多くの人と両センターの協定について共通の認識を得たことは大きな収穫でした。(生態系解析分野:鈴木 聡) 写真:OSUの環境・分子毒性学教授ラリー・カーチス(右)、HMSC所長ジョージ・ボエラート(中)と田辺信介教授(左)。OSUコバリスキャンパスにて。
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大型プロジェクト採択 「人・自然・地球共生プロジェクト」 水循環変動予測ミッション

 標記のプロジェクトは文部科学省の直轄型の大型プロジェクトで、昨年度スタートしました。今年度からあらたに本プロジェクトに水循環変動予測ミッションの追加公募があり、当センターが中心となって応募したところ、応募20大学の中から東北大と愛媛大の2大学が採択されました。ミッションには当センター、農学部、工学部、医学部、総合情報メディアセンターおよび東京農工大学農学部が参加し、今年度から4年間実施されます。愛媛大ミッションは「インドシナ半島における水環境の化学汚染実態の解明と汚染除去技術の開発」(代表者・鈴木 聡、研究費年額4000万円)というもので、昨年山梨大を中心に開始された当該地域の水循環量的変動モデル研究を水の質的な面から補完する研究と位置付けられます。とくに、愛媛大ミッションは愛媛大の伝統である化学汚染に焦点をあて、研究範囲としては、低次生物からヒトまでの生態毒性影響の解明と当該地域へ適応可能な汚染除去技術の開発までを含みます。
 研究は次の7つのサブグループに別れて担当します。
1,水資源の汚染実態と高次生物ならびにヒトに対する毒性影響:岩田(CMES),能勢(医),ミン(農)
2,化学汚染に対する微生物反応の解析:鈴木(CMES),中野(農)
3,内分泌撹乱影響と生物濃縮過程の解析:三浦・竹内・高木(農),大森(CMES)
4,水循環の解析:渡辺・西村(工)
5,汚染物質除去技術の開発:本田・川嶋(農)
6,都市活動由来の汚染実態の解析:高田・渡辺・多羅尾(農工大),井内(CMES)
7,データベースの構築:野田(工),中川・村田(情報セ)

 アジアの水系は天然のヒ素や農薬などに汚染されており、またゴミ廃棄場からはダイオキシンが発生して汚染が空気中だけでなく、河川・地下水へ広がっています。このような汚染は沿岸の生態系、養殖生物へも影響し、この地域に住む人たちはもとより、養殖生物を輸入する日本をはじめとする諸外国へも汚染影響が広がっていると考えられます。本ミッションは、そのような実態を化学分析、生態学、分子生物学、水文学、および化学工学など多角的なアプローチで研究します。レベルの高い研究成果が期待されると同時に、21世紀COEをはじめ、このような大きいプロジェクトチームを作っていくことは、愛媛大の研究ポテンシャルをさらに高め、活かしていくためには必須だと思います。(生態系解析分野:鈴木 聡)

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CMES年次報告会開催報告会および21世紀COE若手研究成果報告会開催報告
 
 平成14年度のCMES年次報告会が、3月19日(水)に工学部18番教室で開催されました。この報告会は年度末に開催することになっており、CMES各分野の教官および学生が研究成果の報告を行いました。今回は、21世紀COE沿岸環境科学研究拠点若手研究成果報告会も同時に開催され、若手研究者による発表も数多く行われました。研究発表は多岐の分野にわたっていましたが、会場は活気に満ち、分野の壁を越え活発な議論が交わされました。今回の報告会はとくに若手研究者にとって、環境科学を総合的にとらえる良い機会になりました。参加者は約150名で、学内の学生、教官はもとより、学外からも研究機関、漁業関係者、一般の方など、多数の方のご参加をいただきました。報告会の模様や、研究成果の内容は、テレビのニュースや新聞にも取り上げられ、CMESの研究に対する期待と関心の高さを感じました。なお、本会の講演要旨はホームページでご覧いただけます。(環境影響評価予測分野:大森浩二)
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CMESニュース編集後記
 
 ニュース記事でもお伝えしたとおり、沿岸環境科学研究センターの複数の教官が参加する研究課題「インドシナ半島における水環境の化学汚染の解明と汚染除去技術の開発」(代表:鈴木 聡・同センター教授)が、文部科学省「人・自然・地球共生プロジェクト」に採択されました。「21世紀COEプログラム」に加え、CMESの役割が今後さらに増していくことを感じています。このプロジェクトで得られた成果も次号以降、報告していく予定です。(岩田久人)

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田辺教授、再び世界トップランクの論文被引用数

 2002年11月に世界最大の学術データベース制作会社Thomson ISIは、過去10年間(1992年から2002年)に出版された学術論文の被引用度に関する研究者ランキング(トップ20)をWeb サイト上に公表した。この中で環境学は生態学と併せて分類されており、ミネソタ大学のDr. G. V. Tilmanの生物多様性と個体群ダイナミクスに関する研究が3132件の被引用度で第1位の栄誉に輝いた。環境化学関連の研究では、有機汚染物質の環境動態に関する研究で著名な英国ランカスター大学のDr. K.C. Jonesが、2364件の被引用度で4位にランクされた。環境学/生態学分野に関する日本の研究者のトップは、前回に続き愛媛大学沿岸環境科学研究センターの田辺信介教授で、世界の14位に輝いた(被引用数1732件)。(生態環境計測分野)
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岩田助教授の論文が岩田助教授の論文がMost downloaded articlesに

 学術雑誌・書籍の出版社であるElsevier 社は、このたびComparative Biochemistry and Physiology Part C: Pharmacology, Toxicology and Endocrinology に2002年4月から12月に掲載された論文のうち、Science Directからよくダウンロードされた論文(Most Downloaded Articles)トップ25を発表しました。
 このトップ25論文に、本センター岩田助教授の論文「Species-specific responses of constitutively active receptor (CAR)-CYP2B coupling: Lack of CYP2B inducer-responsive nuclear translocation of CAR in marine teleost, scup (Stenotomus chrysops)」がリストされました(第19位)。この雑誌は電子ジャーナル化されており、世界各国の比較生化学・生理学関連分野の研究者がインターネットを利用して気に入った論文をダウンロードすることができます。このことから、「沿岸環境科学研究拠点」の研究が国際的に注目されていると推測できます。
 なお、トップ25論文のリストは以下のウェッブサイトから見ることが可能です。
http://www.elsevier.com/pub/14/12/show/top25.htt?issn=15320456 (生態環境計測分野)
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国際シンポPRIMO(米国)参加報告

 2003 年 5 月 9 日から 13 日までの 5 日間、アメリカ・フロリダ州タンパで開催された第 12 回国際シンポジウム Pollutant Responses In Marine Organisms (PRIMO) に参加した。この国際シンポジウムは、ヨーロッパ・アメリカで2年毎開催されており、環境汚染物質による水棲生物への影響を研究している各国の専門家が集まり (今回は252人)、研究成果発表を行う場である。また、このシンポジウムは本研究室 (生態環境計測分野) で、今注目されている学会のひとつであり、今回は 3 名が参加し、4 題の発表を行った。
 本シンポジウムでは、世界中のあらゆる媒体から検出されている環境汚染物質が、水棲生物に対してどのように作用するのかということを、遺伝子やタンパク質の発現レベル、すなわち分子生物学的な手法を用いて解析した研究発表が大半を占めていた。とくに多く行われていた研究は、ダイオキシン類のような平面構造を有する環境汚染物質によって生じる毒性影響に関する研究で、そのメカニズムの解明や系統学的解析、進化の過程でどのような生物種からダイオキシン類に感受性を示すようになったのかといった研究が注目を集めていた。また、環境汚染物質によって変調する遺伝子の新規解析法として、一度に数千個もの遺伝子を解析することができる DNA チップを用いた発表も比較的多く行われていた。生物は環境汚染物質のような生体異物を様々な代謝経路・メカニズムを介して体外に排泄するため、変調する多様な遺伝子を一度に解析することができる手法が今後さらに重要視されるだろう。
 全体を通して感じたことは、魚類を対象にした研究が比較的多かったことであった。魚類は成長が早く、高次生物に比べライフサイクルも短いため扱いやすいという利点がある。一方で生態系の高次に位置する水棲哺乳類や鳥類を用いた研究は、試料の採取が困難という点からもあまり進展していないのが現状であった。今後、我々の es-bank で保管されている貴重な試料がさらに活かされ、研究の発展につながることを期待したい。
 なお、本シンポジウムの発表題目は、http://www.cop.ufl.edu/primo12/ で閲覧できる。次回は 2005 年イタリアで開催される予定である。
(生態環境計測分野COE研究補助員:酒井大樹)
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XIIth International Conference on "Heavy Metals in the Environment" 参加報告
 
 2003年5月26日から30日の間、フランス、ロールアヌプ地方の都市、グルノーブルで標記国際会議が開催された。今年で12回目を迎えたこの国際会議は世界各地で3年に1回開催され、その名の示すとおり「環境中の重金属」に関する幅広い分野の研究成果が発表される。我々の研究室(CMES生態環境計測分野)からは今回が初めての参加であり、口頭発表1題、ポスター発表3題の計4題を発表した。会議の参加者はほとんどが欧米の研究者であったため、必然的に発表される内容もそれに偏っていた印象をうける。その中で、本研究室から発表された「Preliminary studies on trace element contamination in dumping sites of municipal wastes in India and Vietnam(博士課程2年, 阿草発表)」は多くの関心をひいた。とあるアフリカの研究者は「アフリカの途上国では重金属による汚染が顕在化しているが、それを詳細に調査する技術や資金がない。先進国との共同研究を望む。」とコメントしていた。我々の研究室は、東南アジアの途上国における化学物質による汚染の現状把握とリスク評価について積極的な研究活動を展開しているが、こうした取り組みが世界的に必要とされていることを強く感じた。
 本研究室からの他の3題の発表はいずれも海棲高等動物を対象としたものであった。多くの研究者が環境試料や低次生物、あるいはヒトを対象として研究をしており、我々の発表により、そこに欠けていた「海棲高等動物」に関する情報が提供された。熱心に質問をしてくる人もおり、我々の研究を世界各地の研究者に紹介する、という目的は、ある程度は達せられたであろう。今後、本学会において海棲高等動物に関する発表が充実することを期待する。
 近年、世界中で残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants: POPs)に耳目が集まる中、重金属または微量元素はいささかマイナーに転じた感がある。(現に日本国内において環境汚染物質を扱った学会に参加すると、その勢いの差を実感する。)今回のKeynote Lectureの1つに、こうした現状を憂えてか、重金属についても"POPs"に対抗して"PIPs (Persistent Inorganic Pollutants)"として関心を払おう、といったスピーチがあった。これは演者のジョーク(?)であったが、先にも述べたように、途上国を中心として世界中に未だ重金属汚染が存在しているのを忘れてはならない。
 *本学会の発表紀要はJournal de Physiqui IV France, 107 (2003)に掲載されている。(生態環境計測分野 博士課程3年:阿南弥寿美)
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「21世紀COEプログラム」および「生物環境試料バンク」のロゴ決定

 「21世紀COEプログラム」の「沿岸環境科学研究拠点」のロゴを作成しました(下、左図)。このロゴの制作者によりますと、「海・沿岸を常に広範囲で、時には誰も気づかないような細かなトコロを見守るカモメ」がモチーフとなっています。
 また、「沿岸環境科学研究拠点」の研究活動の一環としておこなう「生物環境試料バンク」のロゴも作成しました(下、右図)。「生物環境試料バンク」の正式名称を「Environmental Specimen Bank for Global Monitoring 」、通称をes-BANKとすることに決定しました。es-BANKは「エスバンク」と呼んでください。(生態環境計測分野:岩田久人)
                
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外国人客員教授自己紹介

ATTAINED MY ASPIRATION
   Dr. Subramanian, Professor, Marine Environmental Chemistry, CMES, Ehime University

 My long time dream has become true on 1st may 2003. I have been appointed at the Center for Marine Environmental Studies (CMES), Ehime University, on that day as the Professor in Marine Environmental Chemistry under their 21st Century COE program.
 I am from Kottaiyur, a picturesque village 500kms south of Chennai (Madras) in Tamil Nadu, the southern most state of India. After primary and high school education at the Alagappa educational institutions near to my native place, I did my graduation in Chemistry at Alagappa Arts College affiliated to Madurai Kamaraj University (presently Alagappa University). For my Masters Course at Annamalai University, a prestigious private University, 250kms south of Chennai in Tamil Nadu State, India I selected Marine Biology and Oceanography as my major subjects. After obtaining the Masters Degree, I was appointed as an Assistant Professor at the Centre of Advanced Study in Marine Biology, the same institute where I did my Masters. I was awarded a Doctorate Degree in Marine Biology and Oceanography by Annamalai University, for the research work I did on the Cycling of Heavy Metals in a Mangrove Ecosystem.
 I got a golden opportunity of doing research at the Department of Environment Conservation (presently the CMES, Ehime University), under the able guidance of Prof. Ryo Tatsukawa and Dr. Shinsuke Tanabe with a prestigious Monbusho Fellowship. This period in which was exposed to the advanced knowledge in the field of persistent xenobiotics was the turning point of my life. I am still specializing in this field. I was awarded the Degree of Doctor of Agriculture by Ehime University in the year 1988 for my work on the "Use of Organochlorines as Tracers in Evaluating Certain Life History Parameters of Dall's Porpoises and Adelie Penguins".
 I returned to India to continue my job at Annamalai University, this time as an Associate Professor in the same institute. I continued my work in India using the research abilities I obtained in Japan through research projects funded by several national and international agencies, together with teaching Pollution and Toxicology to the students of the Centre. For all these efforts I was promoted as a Professor in Marine Chemistry in the year 1997 by Annamalai University, where I had been working until I get an offer from CMES.
 During all the years, I have been visiting Japan, which I consider as a home away from my home, in various capacities - as a Collaborative Researcher, Invitee for Special Lectures, as a Consultant for the Joint Research Programs of the CMES with India and also a JSPS Research Fellow, not only to Ehime University but also to various Universities and Research institutes in Japan, all this has been enabled by the knowledge imparted on me in pollution research and also may be because of my limited ability to converse in Japanese. I have been associating with scientists from several countries and visited their laboratories in USA, Canada, Philippines, Malaysia, and Singapore on research missions.
 During my stay in 2002 at CMES as a JSPS Research Fellow, I was offered this Golden opportunity of a Professor post at the 21st Century COE Program of CMES by Dr. Takeoka the Director of CMES and by Dr. Tanabe. I readily agreed.
 Now I am coordinating International Programs like collaborative research projects, organizing international seminars and workshops for the Center and also carrying out research work on POPs and heavy metals apart from teaching and guiding students in their research work. I have been (am) trying to obtain research funds from various agencies in Japan and abroad which I am hoping to get soon.
 During my speeches in Japan I often used to say that 'If rebirth is possible, I would like to be born in Japan and work for this wonderful country and people as a gratitude for the kindness they have shown to me and my family". I am happy and grateful to all those who made this possible so soon - India, my motherland which has grown me, my teachers at the schools, Alagappa educational institutions, Annamalai University and other institutions in India, for giving me necessary basic knowledge in this field, Ehime University and other institutions in Japan for imparting me the knowledge in advanced technologies in this field and also the people of Japan for providing me all the needed facilities and support.
 My future plans are to fully involve myself in all the programs of CMES under their COE program, especially on monitoring and eradication of the POPs pollution in developing Asian countries including India. By my contributions in this program I will be fulfilling my duties to both countries, India and Japan, the two nations to which I am deeply indebted. Together as a team, we the members of CMES will carry on the message on POPs pollution, impart the knowledge we are gaining to the younger generations and will try to find a way for a pollution free world.
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第4回21世紀COE特別セミナー・第8回環境科学特別セミナー  
  "韓国沿岸海域の赤潮発生段階における植物プランクトンのシストの役割" 韓 明洙(Myung-Soo Han)(韓国・漢陽大学・自然科学研究所所長・教授)

 本セミナーは、平成15年2月19日、工学部1階11番教室において、21名の参加者を受けて行われました。韓国の沿岸海域では、主に有害渦鞭毛藻類であるCochlodiniumによる赤潮が毎年頻発しており、その対策が求められています。韓教授は、赤潮植物プランクトンの生態を解明することが赤潮防除の対策につながると考え、赤潮植物プランクトンおよびそのシストの現存量やシストの発芽の季節動態を諸環境要因の季節動態と合わせて研究されておられ、その成果を本セミナーで紹介して下さいました。
 従来、渦鞭毛藻類が赤潮を引き起こすメカニズムとしてはシストの発芽との関連が考えられていましたが、韓教授はシストが発芽する時期と赤潮植物プランクトンのブルームの時期とが異なることをつきとめ、栄養細胞の増殖が赤潮の直接の原因であることを示唆しました。また、このことは、淡水のアオコを引き起こすシアノバクテリアのAnabaenaについても当てはまることを明らかにしました。
 韓国の沿岸海域と淡水貯水池が抱える深刻な富栄養化問題を、シンプルな表現の図表と分かりやすい語り口でご紹介くださり、発表後の討論がおおいに盛り上がりました。韓教授の研究室は、韓国の水環境生態復元・指定研究室であり、韓国版21世紀COEプログラムを受けています。今後の日韓の水環境科学における協力の意味でも、意義深いセミナーとなりました。(農学部:中野伸一)
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第5回21世紀COE特別セミナー・第9回環境科学特別セミナー  "有機スズ分解海洋細菌に関する研究"  Santosh Dubey(ゴア大学、インド)
 
 有機スズ化合物には環境ホルモンや免疫抑制作用があり、地球規模での生態系汚染が問題になっています。CMESはいくつかの海外の大学と共同で沿岸の微生物群集による有機スズ耐性・分解の研究を行なっていますが、今回は共同研究で招聘していましたインド、ゴア大学のSantosh Dubey助教授にセミナーをしていただきました(2003年3月4日開催)。また、現在CMESを中心として科研費基盤Aで行なっている遺伝子ホッピングの研究に関して、CMESの客員研究員でもある国際基督教大学の千浦博・准教授にもご講演をお願いしました。CMESの鈴木および学術振興会PDの野中(現アルバータ大)も講演しました。有機スズ反応性遺伝子の利用や海洋中での遺伝子伝達機構に関してホットな話題が紹介されました。全て英語での講演でしたが、工学部などからも参加があり、約30名の教員・学生らは熱心に討論に参加していました。演題はつぎの通りです。
1,有機スズ分解海洋細菌に関する研究
    (S. Dubey,Goa University)
2,海洋細菌の有機スズ耐性はSec Aで起こる
    (鈴木 聡,CMES)
3,海洋中に存在する非特異的遺伝子伝達粒子
    (千浦 博,国際基督教大学)
4,テトラサイクリン耐性機構とその遺伝子伝播    (野中里佐,CMES)
(生態系解析分野:鈴木 聡)
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若手の会を発足しました

 当センターは21世紀COEプログラムへの採択に伴い、非常勤職員をはじめとする若手スタッフの一層の拡充が図られました。新校舎への移転も完了し、ようやく皆が同じ屋根の下で研究を行える協同体制が整いました。しかしながら、実際のところ、分野が異なるとお互いに顔も名前も認知できないというのが本音のようです。そのような現状を憂慮して、先日、各分野から選出された教官以外のスタッフを代表とする幹事会が結成され、学生および研究員からなる「若手の会」が発足される運びとなりました。そこで、本会を代表して、幹事長の私が「若手の会」の発足趣旨と活動内容について、この場をお借りして紹介させていただきます。
 本会は若手スタッフ間のコミュニケーションを促進するという目的に加えて、異分野間の情報交換・情報発信の場として機能することを最大の狙いとしております。学生・研究員のみなさんにあっては、センターの研究プロジェクトに何らかの形で携わり、その一翼を担っていることと存じます。しかしながら、既成の枠にとらわれない自由で独創的な発想によって現在の研究をより発展させていくことも若手研究者に求められる資質の一つといえるでしょう。本会は、そのような若手研究者が自身の研究内容や新しいアイデアをセンター内外に向けて発信し、分野の垣根を越えて自由闊達な議論を行える場として活用されることを目指しております。これは、発信者自身にとっては自己アピールの場となり、受け手側にとっても異分野の知識を吸収して視野を広げるよい機会となります。これによって、研究活動が活性化され、分野横断的な研究連携が促進されれば、それはCMESという組織全体にとっても利するところは大きいでしょう。
 今後は、月例談話会、各分野で行われる公開実習、ワークショップなどの企画・案内を行う予 定です。センター外部の方も奮ってご参加下さいますようよろしくお願いします。
 以下に、現在までの活動内容を報告します。

<月例談話会>
日時:毎月第1金曜日 17:00〜19:00
場所:総合研究棟1・6階会議室

第1回談話会 29名参加
センター長挨拶「CMESにおける若手の会の役割」
幹事長挨拶「若手の会の趣旨説明」
分野紹介

第2回談話会 30名参加
宮坂仁「安定同位体比の測定からわかること」
大林由美子「植物プランクトン群集構造と海洋物質循環」
(環境影響評価予測分野:奥田昇)
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COE研究員自己紹介(1)  吉野 健児(環境影響評価予測分野)

 今年の4月から環境影響評価予測分野でCOE研究員として赴任してきた吉野です。私はこれまでは北大水産学部でベントスの生態学を研究する講座に所属していました。水産学部のある函館近郊には干潮時になると200メートル四方くらい岩肌が干出す る場所があり、そこにはさまざまなベントスが多数生息していて、研究室の多くの人が調査地にしていました。
 さて、私の博士研究におけるテーマは雌雄での資源分割で、それに関する至近要因と究極要因について明らかにすることでした。雄と雌がどんな資源を利用するかによって雌雄での死亡率、ひいては個体群の増殖力にも影響すると考えられますから、そういう雌雄での資源分割の要因を調べることは、生息場所の改変などによって個体群がどう影響を受けるかを予測するといった保全生物学的な観点からも重要だろう、ということで上述の調査地にたくさんいたヤドカリと彼らの資源である貝殻との関係をモデルシステムとし、ホンヤドカリでの貝殻利用の雌雄での違いの要因について探ることにしました。私が調べたところ、ホンヤドカリが雌雄で貝殻の利用率を違えるのは至近的には雌雄で貝殻に対する好みが違っていることに起因していました。そして雌雄で利用を違える究極要因である、どうして雌雄で貝殻の好みが異なるのかについては貝殻のタイプによって成長や死亡率などの適応度に関わる特性に違いがあり、雄と雌では適応度を最大化するにあたってこれらの特性の優先のさせかたが異なるために貝殻の好みに違いが出ているのだということがわかりました。
 愛媛大学では、これまでやってきたこととは全く独立に、新しく沿岸生態系の解析にとりくんでいます。沿岸域は河川からの人為的な有機物流入による負荷にさらされており、その生態系の保全にあたり、系が持続的に維持されるかどうかについて、そこに生息するベントス、プランクトンや魚類などの表層生物の活動による物質循環への役割を考えることが不可欠です。そのなかでも瀬戸内海ではよくみられる砂堆域は他の海域とは異なった群集、食物網を形成しており、沿岸生態系の物質循環に重要な役割を果たしていることが考えられます。北条沖にある大洲砂堆で生態系解析を行うことにより、沿岸域生態系のさらなる理解に貢献していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。 
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COE研究員自己紹介(2)  伊藤 明(環境影響評価予測分野)

 この度、COE研究員として環境影響評価予測分野でお世話になることになりました。伊藤 明(さやか)と申します。学位を取るまで、ヨシノボリの繁殖生態に関する研究をしてきました。そのヨシノボリとは、ハゼ科の淡水魚で、四国では、河川の雑魚としてゴリやドンコとよばれとても親しまれています。このヨシノボリでだしをとった、ゴリうどんは徳島県の郷土料理として有名です。
 ヨシノボリの仲間には一生を河川で生活する種と海と川を行き来する通し回遊する種と2タイプいます。四国に生息するヨシノボリのほとんどは両側回遊とよばれる通し回遊魚です。その両側回遊性のヨシノボリでは、婚姻色を示す性が種によって異なっています。この点に着目し同じような生態を持ち、川底の石を利用して繁殖するヨシノボリでも種間で配偶システムが異なっているのではないかと予想し、その決定要因を明らかにすることを目的に研究をはじめました。調査はヨシノボリ2種の生活史、配偶者選択性、同性間競争および産卵様式について、西条市を流れる加茂川で7年間行い、2種の配偶システムの違いは、巣として利用できる石の分布、石利用の違い、そして同種内の卵食によって生じているのではないかという結論に達しました。
 調査をはじめた当初、ヨシノボリの繁殖に関する知見がきわめて乏しく、どこで産卵しているのか全然わからない状態からのスタートでした。とにかく毎日、瀬-淵の川底の石を全部めくりつづけ、2年目にやっとどこで産卵しているのかわかるようになってきました。そのまま、なにげなく産卵場所と河川の物理的環境に関するデータを9年とり続けています。その9年の間、人為的な活動によって河川地形は大きく変化しました。全体的に底質が砂質化し、平均流速が遅くなると、在来のヨシノボリが少なくなり、湖産アユと一緒に河川に放流されてしまった琵琶湖産の純淡水性のヨシノボリが蔓延するようになりました。このようなデータを眺めているうちに、人為的活動による河川地形の変化が河川生態系全体にどのような変化をもたらしているのか興味を持つようになりました。当センターでは、河川生態系に与える河川地形の影響評価に関する研究を実験河川と野外で行う予定です。日本の淡水魚の約50%は通し回遊魚であるように、沿岸域の環境は淡水魚にとっても重要です。河川環境の変化に対する沿岸域への影響についても視野に入れながら研究を進めていきたいと思います。なにかと質問することが多く、ご迷惑おかけすることもあると思いますが、よろしくお願いいたします。
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COE研究員自己紹介(3)  五十嵐ありさ(生態系解析分野)

 2003年4月からCOE研究員としてお世話になっています。それまでは鹿児島大学大学院に所属し、魚の免疫について研究をしていました。所属していた研究室では、飯田貴次教授の元、主に魚の免疫細胞を研究対象として扱っていましたが、私は、養殖業でたびたび問題となる細菌性感染症(エドワジエラ症)のワクチンを作るべく、日々魚に注射を打っていました。畳の上では死ねないな、と言われつつ。研究の結果、エドワジエラ症を引き起こす病原細菌Edwardsiella tardaの病原性にはシデロフォアと呼ばれる物質の産生が必須であることを明らかにし、それを元にワクチンとなる変異株を作りました。作成したワクチンは生ワクチン(生きたままの菌を使う)という形で効果を得ることが出来ました。実用化には至っていませんが、効果が得られたワクチンから魚の免疫成立機所について明らかに出来ればと考えていました。しかし、学位取得後は新たな場所でと言う思いと、先生方の移動もあったため、新天地を求めることになりました。そんな養殖とか産業っぽい分野から、生態系解析とか言うダイナミックな基礎研究の分野に何故・・・と思われる方も多いかと思います。実は私も良くわかっていません。きっかけと言えば、以前、とある養殖業者にお会いした際、「海水の殺菌も徹底しているのに病気が発生する」と言われたことでしょうか。全ての細菌が病原細菌ではありません。殺菌されているのは病原細菌ではなく別の細菌たちのようです(これは私の想像ですが)。ライバルの居なくなった病原細菌たちは、魚の中ですっかり快適にライフサイクルを回しているのかもしれません。これまではワクチンを通じて魚の防御機構と細菌との関係を見てきましたが、今度は環境中での魚と細菌たちとの関係も見てみたいと思いました。今までと違う分野から新たな視点で見ることで、新たな発見が出来るのではないかと思います。ここでは幸い腸内細菌叢の変化についての研究をさせてもらっています。環境中での細菌叢の変化を見ながら、改めて魚と細菌との関係が見えてくればと期待しています。細菌叢から細菌同士の会話が聞こえてくれば是非翻訳してご紹介したいと思っています。どうぞよろしくお願いします。
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COE研究員自己紹介(4)  北村真一(生態系解析分野)

 4月からCOE研究員として本センターに赴任している北村です。出身大学は福井県立大学生物資源学部です。修士課程は、高知大学大学院農学研究科を修了、その後、製薬会社で2年間魚類のワクチン開発に従事しました。2001年4月から本センターの研究支援推進員として2年間勤務しました。昨年、北海道大学大学院水産科学研究科で論文博士として博士号を承認され、4月からCOE研究員になりました。したがって、愛媛生活は既に3年目に突入しております。
 私の主な研究テーマは、"魚介類における日和見感染ウイルスの生態学"です。これまで、ヒトの医学分野を含めた感染症学は病原性の高い病原体(例えばSARS、エボラウイルスやインフルエンザウイルス)の研究が中心でした。では、なぜあえて病原性が低い日和見ウイルスに注目しているのかと言いますと、21世紀は環境汚染問題などによる生物の免疫低下が考えられるからです。免疫能が低下すると普段おとなしくしている病原体が体内で増殖をはじめ疾病を引き起こす可能性があります(有名な例としてはヒトのヘルペスウイルスが挙げられます)。困ったことに、日本では魚介類のウイルスに対する特効薬は一つもないため、一度ウイルス性疾病が発生してしまうと手のうちようがありません。それゆえ、ウイルス性疾病は未然に防除することが最も重要になります。そのためには、宿主内や環境中でのウイルスの動態を明らかにする必要があります。これらが明らかになるとウイルスが宿主内や環境中で増加する時に養殖魚介類の個体数を減らすことでストレスを除いてやることやウイルスの少ない環境に養殖魚介類を避難させてやることが可能になり、発症を食い止められることが期待できます。
 これまでに私は、魚介類の日和見ウイルスであるマリンビルナウイルスの生態を明らかにする一環として、宇和海のアコヤガイを中心題材として本ウイルスの生態を調べてきました。その結果、MABVの感染環は、魚類・アコヤガイ・動物プランクトン・海水を介して形成されており、特に冬季に感染環中でウイルス量が多くなることが分かってきました。今後は、本ウイルスの起源の検索、および本ウイルスの発症メカニズム、特に環境汚染物質が養殖魚介類にストレスを与え、本ウイルスによる疾病が起こるのかどうかなどを明らかにしていきたいと思っています。私の最終的な目標は、安くて美味しい、そして安全な魚介類を一般家庭のテーブルに並べることです。
 最後になりますが、CMESでは他分野の研究者の方々と交流を深め、広い視野を持ってスケールの大きな研究できるように切磋琢磨したいと考えております。短い間ですが宜しくお願いいたします。
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21世紀COEプログラム沿岸環境科学拠点 国際ワークショップ開催

 21世紀COEプログラム沿岸環境科学拠点では、2004年3月下旬に、国際ワークショップの開催を予定しております。このワークショップでは、沿岸海洋域における化学物質による汚染の現状や、環境変動による生態系の動態解析などについて、国内外の第一線で活躍している研究者による口頭発表や、若手研究者・大学院生による最新の研究成果のポスター発表が行なわれます。分野にとらわれない、多くの方々のご参加を心よりお待ち申し上げます。詳細は、本年の9月中旬以降に、何らかの手段により皆様にご連絡さし上げます。

国際ワークショップ開催日時・場所
日時:2004年3月18日より20日まで
場所:愛媛県県民文化会館
(農学部:中野伸一)
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若手研究採択状況

 沿岸環境科学研究拠点では、若手研究者育成プログラムの一環として、博士課程およびポスドクの研究員から研究計画を募集し、優れた内容の研究に対しては研究費を支給しています。本年度は、28件の応募の中から書類審査および面接審査により下記の12件を採択しました。うち4件は昨年度からの継続課題となっています。
(継続課題)
・地球温暖化による宇和海沿岸生態系への長期的影響評価:高次消費者ホタルジャコの資源量分析および安定同位体分析に基づく沿岸域生態系の動態解析(研究機関研究員、奥田昇)
・宇和海内海湾におけるSynechococcus群集動態とそれに対する光環境の影響(研究機関研究員、片野俊也)
・ダイオキシン類によるアジア途上国のヒト母乳汚染に関する環境化学的研究(博士後期課程3年、国末達也)
・ヒトおよび海凄高等動物におけるヒ素の化学形態と解毒機構に関する比較生物学的研究(COE研究員、久保田領志)
(新規課題)
・トリブチルスズ(TBT)は魚類に日和見感染症を誘発するか?(COE研究員、北村真一)
・海洋における高分子溶存有機物と微生物の相互作用に関する研究−細菌の細胞外加水分解酵素の作用を中心として−(COE研究員、大林由美子)
・北条沿岸海域における砂堆と一時生産の関係(COE研究員、吉野健児)
・「結氷が生みだす新しい餌資源アイスアルジー」:極寒地沿岸食物網における物質供給源のシフト(COE研究員、宮坂仁)
・アジア途上国の鉛汚染に関する環境科学的研究(博士後期課程2年、阿草哲朗)
・沿岸親潮の形成と維持に関する力学機構(博士後期課程1年、黒田寛)
・水棲ほ乳類におけるAhRを用いたダイオキシン類リスク評価系の開発(博士後期課程1年、新見聡子)
・Characterization of avian metallothioneins (MTs): biological roles and interactions with metals(博士後期課程1年、Nam Dong-Ha)

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CMESニュース No.8
2003年7月21日発行

愛媛大学 沿岸環境科学研究センター

〒790 -8577 愛媛県松山市文京町2番5
     電話:089 - 927 - 8164(研究拠点)
 ファックス:089 - 927 - 8167
 ホームページ:http://www.ehime-u.ac.jp/~cmes/