農学部・農学研究科教員紹介パンフレット2020
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未来可能性を広げる1細胞を対象とした分析法の開発細胞レベルでの植物の未解明現象の解明教育・研究内容紹介1教育・研究内容紹介2環境植物生理学和田 博史 教授食料生産学専攻 植物工場システム学コース植物の未解明現象を細胞・分子レベルで明らかにするキーワード環境ストレス、水分生理、質量分析顕微鏡下で植物を観察すると、そこには多くの細胞があり、それらは一見すると均一であるかのように思えます。しかし、最近では、同じ組織でも個々に細胞は違った働きを担っていて、不均一であることが分かり始めています。温暖化に伴った白未熟粒のような現象の解明(教育・研究内容紹介2参照)には、特定の細胞に的を絞った精緻な分析が求められます。そのようなニーズに応えるべく、当研究室では、成長中の植物のターゲットとする1細胞に針を刺し(図参照)、細胞内の圧力(膨圧)を測ることで水分の状態を把握した上で、吸い取った細胞液の成分(代謝産物)を瞬時に分析する手法を開発しました。現在、この方法を含めた幾つかの微量分析法について研究しています。温暖化の影響により、お米の一部が白く濁る白未熟粒が多発し、米品質が全国的に低下しています。中でも、登熟初期の高温によりお米の背中側が白濁する背白粒(左写真)が多発生しますが、十分な穂肥を与えておくと、白濁が抑えられ、品質低下を回避できることが知られています。しかし、お米の1細胞を対象にした分析手法は確立されてなく、白濁に至る要因は不明でした。当研究室では、上述の手法を駆使して、お米の白濁メカニズムの一端を明らかにしています。現在、この方法を応用した1花粉分析(右写真)による高温不稔(高温でお米が実らなくなる現象)の解析など、実際の生産現場の課題解決に向けた研究にも取り組んでいます。トマト1細胞での水分状態・代謝産物分析の様子高温に伴った背白粒(左)とイネ1花粉粒分析(右)23

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