農学部・農学研究科教員紹介パンフレット2020
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食料生産学科・専攻生命機能学科・専攻生物環境学科・専攻なぜ熱帯林の生物多様性は高いのか異種間交雑 ―― 種の壁を越えた交配教育・研究内容紹介1教育・研究内容紹介2生物環境学専攻 森林資源学コースキーワード生物進化、熱帯林、東南アジア66上谷 浩一 准教授森林遺伝学熱帯林には、地球上の約半数の生物が生息すると言われています。東南アジアの熱帯雨林で樹木の種数を調べると、1ヘクタール当たり100~200種もの樹種が見つかります。この数は温帯林の10倍以上に相当します。こんなにも多種多様な樹種が、熱帯林でどのように進化したのでしょうか?DNAの塩基配列を比較することによって、生物進化の道筋をたどることができます。私たちは、東南アジア各地の熱帯林に分け入り、そこに生息する樹木を調査しています。そして、採取した樹木からDNAを抽出し、その塩基配列を調べています。これによって、多種多様な樹種がいかにして進化してきたのかを理解し、熱帯林の多様性の起源を明らかにしようとしています。かたちの異なる別種との交配が起こることはないのでしょうか?生物学者のエルンスト・マイヤーは、種を以下のように定義しました:「種は、実際にまたは潜在的に交配可能な個体の集まり(集団)であり、他の同様の集団から生殖的に隔離されている」。ところが実際、自然界において異種間交雑は以前考えられていたものよりもずっと頻繁に起こっていることがわかり、生物進化への役割が注目されています。一方、外来種の持ち込みによって起こる在来近縁種との交雑は、遺伝子汚染と呼ばれる環境問題です。私たちは生態学的調査とDNA分析を駆使し、自然界で起こる樹木の異種間交雑の実態を明らかにすることで、生物多様性保全に貢献する研究を行っています。熱帯雨林調査のために設置された林冠観測タワー(ブルネイ)DNAを調べて生物を知る

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