農学部・農学研究科教員紹介パンフレット2023
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未来可能性を広げる1細胞生体計測法の開発1細胞生体計測法を用いた植物の環境応答の解明食料生産学専攻 植物工場システム学コース植物の環境応答の仕組みを細胞・分子レベルで明らかにするキーワード環境ストレス、水分生理、質量分析20教育・研究内容紹介1教育・研究内容紹介2植物細胞システム計測学和田 博史 教授顕微鏡下で植物組織を観察すると、そこには多くの細胞が並んでいて、それらは均一であるかのように思えます。しかし、植物を取り巻く環境に変化が起きた時など、同じ組織の中であっても個々の細胞で応答が異なるケースもみられます。例えば、温暖化により多発するイネ白未熟粒(教育・研究内容紹介2参照)では、高温等の不良環境に起因して胚乳の一部が白く濁るため、要因解明には細胞に的を絞った解析が必要です。このようなニーズに応えるため、私達は成長中の植物の標的1細胞に針を刺し、水分状態を示す細胞内の力(膨圧)を測り、さらにそこから採取した細胞液中の成分(代謝産物)を瞬時に同定する1細胞生体計測法を開発しました。温暖化に伴う白未熟粒・充実不足の発生により、全国的に米品質が不安定化しています。中でも、高温でお米の背中が白濁した背白粒(左写真)が多発しますが、十分な穂肥を与えておくと、高温でも白濁が抑えられ、品質低下を回避できることが知られています。しかし、これらの細胞レベルの要因は明らかにはなっていませんでした。私達は上述の方法を用いて、そのメカニズムの一端を明らかにしています。現在、この手法を応用したイネ1花粉粒分析(右写真)による高温不稔やリンゴ蜜症の課題にも取り組んでいます。今後、1細胞生体計測法を改良し、植物の環境応答の研究を深化させるとともに、植物工場を始めとする生産現場での農作物の安定生産に貢献していきます。トマト1細胞での水分状態・代謝産物計測の様子高温に伴った背白粒(左)とイネ1花粉粒分析(右)

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