農学部・農学研究科教員紹介パンフレット2023
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食料生産学科・専攻生命機能学科・専攻生物環境学科・専攻地下水中の汚染物質の動き生物環境学専攻 地域環境工学コース地下水を科学し、災害と環境問題に立ち向かうキーワード斜面災害、地下水汚染、樹園地74教育・研究内容紹介1樹園地の斜面災害と地下水の動き教育・研究内容紹介2倉澤 智樹 助教地域防災学みかんを含む柑橘類は、愛媛県を代表する農作物として知られていますが、その多くは斜面で栽培されています。このような斜面にある柑橘類の樹園地は、2018年の記録的な豪雨で引き起こされた斜面崩落によって甚大な被害を受けました。大量の雨は、斜面の表面を流れる水を増やすだけでなく、地面に存在する地下水量も増加させます。さらに、地下水の動きも活発になるため、斜面崩落リスクが上昇します。しかしながら、地下で起こっている現象のため調査が難しく、地下水と斜面崩落との関係性は未解明な部分が多く残されています。そこで、私たちは地下水による斜面崩落メカニズムを明らかにするため視覚的なアプローチを取り入れつつ研究を進めています。河川や湖沼に存在する水に比べると、地下水は地理的・季節的に利用可能な水量が変動しにくく、また水質も安定しているため、農業用水はもちろんのこと、工業用水や生活用水などの様々な用途に利用されています。特に、大きな河川が近くに存在しない地域や島しょ地域では、地下水の重要度が高い場合が多いです。水資源としての有効性の反面、地下水は動きが遅く、ひとたび汚染されると浄化に時間と手間が必要となるため、汚染には弱いといえます。人への健康リスクや汚染浄化対策を検討する上で、地下水中に入ってしまった汚染物質がどのように動くのかを理解しておくことは重要なことです。一方、地下水が存在する自然地盤は場所によって地質的な特徴が変化するため、この影響を受けて、汚染物質は複雑に動きます。この動きのルールを理解することは簡単ではありませんが、模型実験やフィールド実験、数値シミュレーション、理論的な考察などのあらゆるアプローチを駆使して、研究を進めています。汚染物質の動きの可視化実験(上)と数値シミュレーションの結果(下)

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