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 微化石というのは、ミリサイズからミクロンサイズの小さな化石の総称。海底や湖底、地層などに大量に存在しています。私がこれに興味を持ったのは、神戸大学3年生の時で、恩師との出会いがきっかけ。当時、日本では微化石がブームになっていました。というのもそれまで、大型化石(肉眼でそれとわかる化石)により、発見された地層の年代を決めるのが通例でした。ところが精密な電子顕微鏡などで微化石を検証すると、これまで認識されていたのと時代のズレがあることが分かってきました。微化石により正確な地層の年代が判明することから、私は微化石の中でも放散虫(原生生物)の研究に主眼を置き、対象とした地層の年代や当時の環境の推定をしています。 結婚そのものは、研究にそれほど影響はなかったのですが、やはり大変だったのは子どもが幼い頃。保育園や民間託児所のお世話になりながら、なんとか気力で乗り切ったという感じです(笑)。今思い出しても辛かったのは、ニュージーランドに1ヶ月の出張を予定していた直前、子どもがインフルエンザに罹ったこと。夫も同業者ですから休むことができず、やむ終えず関係先に連絡をし、子どもが回復するまで出発を延期しました。女性が仕事を持つことの難しさを痛感しました。 私はかねてより旧姓で仕事をしていますが、それが公式に認められるまでには紆余曲折がありました。当初は「ペンネームを使うのはOKだけど、書類に旧姓はダメ」と言われたんです。でも、同じ思いを持つ人と少しずつ声を上げて、文部科学省に直訴したりもして。17年前にようやくOKになりました。副学長という大きな役目をいただいた今、私自身が困ったこと、感じたことを解決し、多様な人が活躍できる愛媛大学へとつなげていきたいと考えています。 子どもが成長し、気持ちに余裕ができた今、私は古民家暮らしを楽しんでいます。畑仕事も良い息抜きとなっており、リフレッシュしながら研究や教育、大学運営に取り組みたいですね。│シリーズ│|そうした経験を踏まえて、今回副学長 としてダイバーシティに取り組んで いかれるわけですね。2021年春、愛媛大学初の女性副学長となった堀利栄先生。仕事で着実に成果を上げながら、家庭では子育てにも全力で取り組んだ堀先生は、働く女性のロールモデルとも言える存在です。素顔はとてもフレンドリーで学生からも慕われている堀先生。その歩みとこれからについてうかがいました。|先生の専門である「微化石」に興味を 持たれたのはいつですか。|その後、ポスドク時代に結婚された そうですが、仕事と家庭の両立に 苦労されたのではないですか。教授 堀 利栄愛媛大学 副学長国内外で行うフィールドワーク。「調査活動は体力勝負。フィールドが好きな私ですが、最近は体力の限界を感じることも(笑)」と話す堀先生。でもそのスタイルは様になっています! ◎プロフィール ─1985年神戸大学理学部地球科学科卒業後、大阪市立大学大学院博士課程終了。日本学術振興会の特別研究員として東京大学や岡山大学でポスドクとして研究を続ける。結婚後、愛媛大学研究生、非常勤講師などを経て愛媛大学教員となる。理学部地球科学科 学科長、女性未来育成センターセンター長、学長特別補佐を経て、2021年愛媛大学副学長(ダイバーシティ)に就任。16愛媛大学 『知のひろば』誰もが活躍できる、そんな大学の未来を創造

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