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沿岸環境科学研究センター(CMES)化学汚染・毒性解析部門の山本愛依さんが第27回日本内分泌撹乱物質学会研究発表会において優秀若手研究者発表賞「森田賞」を受賞しました【12月12日(金)】

令和7年12月11日(木)および12日(金)に、つくば市・文部科学省研究交流センターにて開催された「第27回日本内分泌撹乱物質学会研究発表会」において、沿岸環境科学研究センター(CMES)化学汚染・毒性解析部門所属、大学院理工学研究科博士前期課程1年の山本愛依さんがポスター発表し、森田賞を受賞しました。受賞対象となった発表題目は「ゼブラフィッシュ胚を用いたPFOA代替物質(HFPO-DA、HFPO-TA、HFPO-TeA)の甲状腺ホルモンへの影響評価」であり、本研究は、沿岸環境科学研究センターの野見山 桂 准教授、田上 瑠美 准教授、国末 達也 教授の指導のもと実施されたものです。

本研究では、近年使用が拡大しているPer- and Polyfluoroalkyl Substances(PFAS)の一種であるHFPO-DA、HFPO-TA、HFPO-TeA、およびPFOAをゼブラフィッシュ胚に水系曝露し、LC-MS/MSを用いて胚内の甲状腺ホルモン6種(T4、T3、rT3、3,3′-T2、3,5-T2、3-T1)の濃度を定量しました。これにより、これら物質への曝露が魚類の甲状腺ホルモン恒常性に及ぼす影響を解析しました。

その結果、各標的物質はゼブラフィッシュ胚の甲状腺ホルモン濃度にそれぞれ異なる影響を及ぼしました。特にHFPO-TeAの曝露では、これまで毒性影響が指摘されているPFOAよりも極めて低濃度で甲状腺ホルモン恒常性に影響を及ぼすことが明らかとなり、脱ヨウ素酵素(DIO3)活性への影響が示唆されました。さらに、HFPO-TeA曝露胚において、甲状腺ホルモンの産生、輸送、脱ヨウ素化などに関与する遺伝子発現を解析した結果、甲状腺ホルモン受容体遺伝子や甲状腺刺激ホルモン関連遺伝子の発現低下、ならびに甲状腺ホルモン代謝に関与する複数の遺伝子に有意な発現変動が認められました。

HFPO-TeAが甲状腺ホルモン恒常性に及ぼす影響を解析した研究は本研究が初めてであり、ストックホルム条約に登録され、国際的および国内的に製造・使用が原則として禁止・制限されているPFOAよりも、強い甲状腺ホルモン恒常性攪乱作用を有する可能性が示されました。

本研究では、これまで知見の乏しかったHFPO-DA、HFPO-TA、HFPO-TeAの甲状腺ホルモン系への影響を体系的に明らかにした点が高く評価され、今回の受賞に至りました。

<沿岸環境科学研究センター>