学長紹介
愛媛大学の目標・計画
寄附をお考えの方へ
メッセージ
愛媛大学のさらなる改革に向けて

現在、わが国は、少子化による人口(特に、生産年齢人口)の減少、国際的産業競争力の低下という、国力にも直結する深刻な問題に直面しています。これらの問題に対応することも目的として、昨年2月には文部科学省中央教育審議会から「我が国の『知の総和』向上の未来像~高等教育システムの再構築~(答申)」が、また、昨年3月には国立大学協会から「わが国の将来を担う国立大学の新たな将来像」が、それぞれ発出されました。これらの2つの報告のキーワードは、「(わが国の)知の総和の向上」です。前述の諸問題への対応にはわが国の生産性向上が不可欠ですが、国としての生産性が国民の「知の総和」すなわち「人口×知的能力」によるとすれば、人口が減少しているわが国では、国民一人ひとりが有する知的能力を向上させるしかありません。
これらの報告の中では、(1)全学生の3割まで留学生を受け入れ、(2)博士課程に社会人を受け入れて社会課題の解決に取り組める高度知的人材として育成するとともに、博士号取得者を3倍に増加させ、(3)地方及び女子の大学進学率を一層向上させ、意思と能力あるすべての者が高等教育を享受できる体制を構築することが提案されています。これらの方策は、大学入学者について、これまでの「日本人18歳中心主義」から脱却して、より広範な層から学生を集め、さまざまな背景を持つ学生の多様な可能性を育てる教育に移行することで、グローバル化と多様性の社会における「知の総和」を向上させることに繋がります。また、これまで愛媛大学の基本方針として提示してきた「全世代対応型の『地域における知の拠点』としての多機能化を進め、Sustainableな社会、Resilientな地域社会の構築に貢献する」とも同じ方向性のものです。
さて、愛媛大学は、この5年間、いろいろな改革を行ってきました。具体的には、全学機構の再編(4機構から6機構・2院に)、愛媛大学ビジョンの改正、教員人事の全学一元管理化(人事権を部局から全学に移行)、産学連携推進のためのエコシステムの確立、全教職員への有料版生成AIライセンスの導入、本学のミッション・機能強化の方向性の明確化とそれを実現するための経営戦略本部の設置、UA(University Administrator)体制の確立、地域産業特化型センターの強化(南予水産研究センター、紙産業イノベーションセンターに加えて、海事産業対応のための今治サテライトの新設)、3つのコモンズ(E.U. Regional Commons、E.U. Innovation Commons、E.U. Digital Commons)の新設、社会人の受け入れも想定した研究科等連係課程(学環)の新設、アントレプレナーシップ教育の強化を行ってきました。現在は、国の日本成長戦略(17分野)とそれに連動する「地域未来戦略」との連携・協働、事務系職員の業務の見直しと効率化、「えひめ地域構想推進プラットフォーム」の構築(愛媛県の高校・高専・専門学校・大学・大学院が連携した、愛媛県で活躍できる人材の育成システムの共有)、大学に期待される機能の変容を考慮した「愛媛大学憲章の見直し」に取り組んでいます。
これまで、世界は、3次にわたる産業革命を経験してきました。第1次(蒸気機関による機械化)、第2次(電力・石油による大量生産)、第3次(コンピュータによる自動化)です。そして、現在、「第4次産業革命(AIによる高度な知的活動、ロボット化)」が進んでいます。この「第4次産業革命」が、大学など高等教育機関にとって第3次までの産業革命と決定的に異なる点は、「AI(人工知能)の進展」によるものであるが故に、「知の生成(研究)」「知の伝達(教育)」「知の展開(社会連携・国際連携)」という大学などが担ってきた機能について、抜本的見直しを迫ってくることです。私どもは、「大学に求められる機能(言い換えれば、求められなくなる機能)は何か?」を、真剣に考えなければなりません。
今後も、大学には、研究機能は求められると思いますが、教養教育を主とした共通教育やそれぞれの学術領域に基づいた専門教育は、それらの在り方が見直される可能性もあります。今後の大学は、「学生中心の大学」として表現してきたようなストレート学生を育てるためだけの機関ではありません。むしろ、エッセンシャルワーカーも含み、AIに置き換えられない人材の育成が主要な機能になるでしょう。日本成長戦略会議でも議論されている「2040年の就業構造推計」にも関係しますが、国立大学法人第5期中期目標・中期計画期間に文部科学省から求められる「学生定員の削減を含む学部再編」も喫緊の課題です。
本学は、大学の機能の表し方として、「地域における知の拠点」を謳ってきました。しかし、第4次産業革命の進展は、大学を「社会とともに、新たな知的価値を創出する拠点」へと転換させつつあります。愛媛大学は、AIが進展する時代において「知を扱う組織」として社会にどのように貢献できるかを熟慮し、アグレッシブにかつ柔軟に変容し続けたいと思います。これからも、愛媛大学、そして、愛媛大学のさまざまな取組みにご理解とご支援をいただきますよう、心からお願い申し上げます。
令和8年5月 愛媛大学長 仁科弘重
プロフィール
| 生年月日 | 1954年生まれ |
| 学 位 | 農学博士 |
| 略 歴 | 1998年4月 愛媛大学農学部教授 2011年4月 愛媛大学農学部長(2015年3月まで) 2012年4月 愛媛大学植物工場研究センター長(2020年3月まで) 2015年4月 愛媛大学理事・副学長(2021年3月まで) 2017年10月 日本学術会議会員(2023年9月まで) 2021年4月 愛媛大学長 |
| 専門分野 | 農業環境工学、植物工場 |
