プレスリリース

60年以上前に存在が知られていた酵素の正体を初めて同定

愛媛大学大学院農学研究科(沿岸環境科学研究センター教授 兼任)の渡辺 誠也教授、農学部4年生の里 陽美花さん、農学研究科の横井 大洋助教、プロテオサイエンスセンターの寺脇 慎一特定講師の研究グループは、糖酸と呼ばれる化合物の代謝に関わる新しい酵素「L-スレオン酸3-脱水素酵素」を発見しました。

炭素数4の糖酸であるL-スレオン酸の代謝様式が明らかとなったのは比較的最近であり、それによると L-スレオン酸は酸化・異性化の二段階反応で3位にケト基が生じます(PNAS 2016, E4161–E4169)。一方、今回発見したのはこれを一段階で行う「L-スレオン酸3-脱水素酵素(Ltn3D)」でした。この酵素活性自体は同じ学術誌上で1964年に報告されており、正式な酵素の証明であるECナンバー(EC 1.1.1.129)も与えられていましたが、その正体は60年以上分かっていませんでした。

Ltn3Dは炭素数4、5、6の糖酸を代謝する遺伝子の集まり(クラスター)に必ず含まれていましたが、それは本酵素がこうした糖酸も同時に酸化できるためでした。すなわち、Ltn3Dが「接着剤」のような役割を果たすことで遺伝子クラスター同士が融合し、代謝経路がさらに多様化するという新たな進化のシナリオを提唱しました。

本研究成果は、2026年2月11日に生化学分野の専門誌「Journal of Biological Chemistry」のオンライン版に先行掲載されました。

Ltn3Dの補酵素(NADP+)・阻害剤(タルトロン酸)複合体の結晶構造
お問い合わせは、お気軽に下記までお寄せください。

愛媛大学大学院農学研究科(沿岸環境科学研究センター兼任)
教授 渡辺 誠也