タンパク質分解医薬の開発を加速
PROTACsは、標的タンパク質を分解する新しい創薬手法として注目されていますが、分子構造が大きく複雑であるため、有望な分子を効率よく見いだすことが難しいという課題があります。
愛媛大学先端研究院プロテオサイエンスセンターの山中聡士特定助教は、東北大学大学院薬学研究科の山越博幸助教、岩渕好治教授らの研究グループに参画し、アトピー性皮膚炎の治療薬開発を目指し、標的タンパク質BRD4を分解するPROTAC「TKP-5」を見出しました。さらに、リンカーに「1,3-ブタジイン」構造を導入した新たな合成手法を開発し、類似分子を効率的に合成することに成功しました。また、類似分子の効果を調べ、コンピュータ解析も活用することで、TKP-5が高い分解効果を示すために重要な構造の特徴を明らかにしました。今後は、本研究で得られた知見を基に分子構造の最適化を進め、より有望な治療薬候補の創出を目指します。また、本手法は他のPROTACsに加え、多成分型機能性分子の設計・最適化にも応用可能であり、創薬研究全体の加速への貢献が期待されます 。
本研究の成果は、2026年3月19日にアメリカ化学会の学術誌 Journal of Medicinal Chemistryに掲載されました。
ポイント
- アトピー性皮膚炎の治療薬開発を目指し、標的タンパク質BRD4を分解する独自のPROTAC「TKP-5」を開発しました。
- 「1,3-ブタジイン」という構造をリンカーに活用することで、完成したPROTACsを土台に、多様なTKP-5類似分子を効率よく合成できる新たな手法を確立しました。
- 本手法は、ノーベル化学賞の受賞でも知られるクリックケミストリーで合成される医薬分子や材料分子の効率的な改良にも応用可能です。これにより、新しい薬の候補や材料分子の開発を、より効率よく進められると期待されます。
論文情報
タイトル:Alkyne Two-Phase Strategy: Rapid Generation of TK-285-Derived PROTACs as BRD4 Degraders
著者:Hiroyuki Yamakoshi,* Ryo Watanabe, Ryosuke Segawa, Ryosuke Ishihara, Ryo Tachibana, Genki Kudo, Shota Nagasawa, Satoshi Yamanaka, Ayano Ito, Hiroyuki Takeda, Tatsuya Sawasaki, Ryunosuke Yoshino, Takatsugu Hirokawa, Takayuki Doi, Noriyasu Hirasawa, and Yoshiharu Iwabuchi*
*責任著者:東北大学大学院薬学研究科助教 山越博幸、 東北大学大学院薬学研究科教授 岩渕好治
掲載誌:Journal of Medicinal Chemistry
DOI:https://doi.org/10.1021/acs.jmedchem.5c03771
URL:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jmedchem.5c03771

