反社会的なパーソナリティの研究
※掲載内容は執筆当時のものです。
研究の概要
「サイコパス」という言葉を聞いたことがある人も増えていると思います。サイコパスとは、サイコパシーという病理的で反社会的な性格特性が高い人のことを指します。サイコパシーの概念は犯罪者などを対象とした臨床的な背景を有しており、実際に非行や犯罪とも関連することが報告されています。しかし、サイコパシーが高い人は必ずしも犯罪者というわけではありません。サイコパシーの傾向は一般人口まで連続して分布することが示されており、現在では、収監者以外にも幅広い人口を対象に研究が行われています。
サイコパシーはさまざまな情動的・対人的・行動的特徴から構成されていますが、私は他者への共感性の低さや攻撃性の高さに注目して研究を行っています。特に、恐怖や共感性の低さといった情動面での特徴は中心的な要素と考えられており、他者の苦痛を感じとることができないため、他者を害する行動につながるとされています。このような、サイコパシーにおける攻撃性のメカニズムや、実際にどのような攻撃性の特徴と関連するか、といったことを検討しています。
研究の特色
サイコパシーと類似した特徴を有するその他の反社会的なパーソナリティとして、搾取的な対人方略を特徴とするマキャベリアニズムや、誇大な自己像や承認・称賛欲求を特徴とする自己愛傾向が挙げられます。これらのパーソナリティは、いずれもその性質から攻撃性の高さと関連しますが、それぞれ異なる攻撃性の特徴を有しています。そのため、攻撃性に至るメカニズムも異なることが想定されます。そのため、各特性に対する理解を深めるだけでなく、更生や教育場面でも異なるアプローチが有用である可能性を提言できることにもつながります。
研究の魅力
当たり前のことかもしれませんが、パーソナリティで人の行動すべてを予測することはできません。ある行動にはさまざまな要因が複合的に影響を及ぼしており、何かひとつの原因だけにしぼることはほとんどできません。また、一方が原因で一方が結果の関係性であるとも限らず、多くの要因は相互作用しています。例えば、サイコパシーも年齢や性別といった直感的にイメージしやすいであろう生態学的要因などと関連します。しかし、これらの影響を(統計的に)取り除いても、サイコパシーというパーソナリティが反社会的な行動に影響を及ぼします。パーソナリティというと曖昧な概念に感じるかもしれませんが、近年では脳や遺伝子などの研究も進められていることや、行動にもある程度の影響力があることを面白いと感じています。また、サイコパシーが高くても非行や犯罪をせず、社会で適応的に振舞う人々も多くいます。その背景にはどのような要因があるのかまだ正確にはわかっていませんが、このような複雑さも性格研究の魅力だと思います。
今後の展望
反社会的なパーソナリティと攻撃性の関連に関する研究を展開し、各特性が高い人は、どのような人を攻撃性の被害者に選択しやすいのかについて研究したいと考えています。
また、近年注目されているインターネット上の問題行動にも関心があります。反社会的なパーソナリティが高い人以外の人でも、全く怒りを喚起しない人や、攻撃的に振舞わない人というのはほとんどいません。このような、典型的な反社会性をもたない人々が、インターネット上の問題行動とどのように関わっているのか調べたいと考えています。



