令和7年6月19日(木)、国際連合大学の白波瀬佐和子上級副学長を講師に迎え、南加記念ホールにて特別講義「ジェンダー平等に関する国際動向と日本の課題」を開催しました。今回の講義は、法文学部専門科目「社会保障法」の特別講義と位置づけるとともに、広く一般にも公開し、学外ステークホルダー、学生合わせて160人が参加しました。
開会挨拶では、仁科弘重学長(ダイバーシティ推進本部長)が、ジェンダー平等が理念の段階から具体的に取組を進める段階に転換しつつある現状に言及し、愛媛大学ではダイバーシティ推進を極めて重要な課題と位置づけていると述べました。学長が本部長を務める体制のもと、大学運営の意思決定過程に女性が参画できるよう、制度と意識の両面から取組を進めていることが紹介されました。
続く講義では、白波瀬氏から、国際社会におけるジェンダー平等の議論と日本が直面する課題について、統計データを交えながらわかりやすくご講演いただきました。
講義の冒頭では、国際連合大学(UNU)の設立経緯や役割、SDGsとの関わりについて紹介され、特に「誰一人取り残さない」という理念が強調されました。「現状がわからなければ改善も前進もできない」としてデータの必要性に触れ、国際的に比較可能なデータの整備が不可欠であることや、データそのものにバイアスがある可能性を指摘しながら数値の意味を正しく理解する重要性についても述べられました。
また、理系分野や政治・経済の意思決定層に女性が少ない現状の背景には、性別役割分業を前提とした制度や労働市場の構造があることに加え、育つ過程での褒め方や支援、期待といった日常の積み重ねによるアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み、偏見)が関係しており、すべての世代がその修正に取り組む必要があると述べられました。
講演の締めくくりには、「届きにくい声にこそ耳を傾ける努力が必要であり、『声を上げること』が社会を変える第一歩である」と力強いメッセージが送られました。
閉会にあたっては、鈴木靜副学長(ダイバーシティ推進本部副本部長)が謝意を述べるとともに、今後もダイバーシティに関する取組や発信の機会を継続していく意向を示しました。 今回の特別講義は、日常に根づく価値観や制度の前提を問い直し、自らの意識を見つめ直す深い学びの機会となりました。




<ダイバーシティ推進本部ジェンダー協働推進センター>