令和8年3月17日(火)、愛媛大学コラボハウスホールにおいて、未来価値創造機構シンポジウム「『地方創生』から『未来戦略』へ―地方大学の未来をめぐる、これまでとこれから―」を開催しました。
始めに、仁科弘重愛媛大学長から開会挨拶があり、人口減少や産業構造の変化が進む中で、大学には地域社会を先導する人材育成と地域産業の振興がこれまで以上に求められていることに触れました。その上で、愛媛大学は、大学の研究シーズを起点とするだけでなく、地域産業や地域が抱える課題やニーズに向き合い、教育・研究・地域連携を進めてきたことについて言及しました。また、学生教育に加え、社会人の学び直し(リカレント教育)も含め、大学が「全世代対応型の『地域における知の拠点』」として地域とともに未来を考え、実践していく重要性を強調しました。
続いて、内閣官房地域未来戦略本部事務局の児玉大輔参事官が、「地方創生、地域未来戦略の今後の取組について」と題して基調講演を行いました。若者人口の減少や東京一極集中といった現状をデータに基づいて整理したうえで、国の地方創生に関する政策が「人口減少への歯止め」から、「人口減少を前提とした社会・経済の設計」へと転換していることが示されました。「地域未来戦略」では、強い経済と豊かな生活環境の両立を柱に、産業の高付加価値化、人材育成、デジタル技術の活用、広域連携などを通じて、若者や女性にも選ばれる地域づくりを進めていく考えが示されました。
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その後、愛媛大学未来価値創造機構の山下政克機構長から、「地域の未来を切り拓く“知と創造の対話”」と題して、同機構の取組紹介がありました。未来価値創造機構は、10~15年後の中期的未来を見据え、新たな価値を社会に先行して議論・発信することを目的とし、シンポジウムの開催や対談企画「未来価値を語る」などを通じて、立場や分野を越えた対話の場づくりに取り組んでいることについて紹介しました。
トークセッションに先立ち、同機構の大久保武准教授(地域レジリエンス学環准教授)が、中長期的な人口動態や圏域予測の分析をもとにイントロダクションを行いました。日本の人口減少や少子高齢化は全国一律に進んでいるわけではなく、地域や自治体ごとに進み方が異なり、その差が今後さらに拡大していくことをデータから示しました。また、人口や産業、生活圏の変化を市町村単位で捉えるだけでなく、人々の移動や暮らしの実態に即した「圏域」という視点が示されました。その中で、短期的な人口増減に一喜一憂するのではなく、人口減少を前提としたうえで、どのように地域の機能や役割を再構築していくかが、これからの地域戦略における重要な論点であることが強調されました。さらに、こうした議論において大学が果たす役割として、特定の立場に偏らず、客観的なデータや多様な専門知をもとに将来像を提示し、地域との対話や合意形成の一助となる場所や機会を提供する存在である、ということが示されました。
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トークセッションでは、「人材が産業を支え、産業が圏域を形づくる―地域未来戦略における地方大学の役割と可能性―」をテーマに、愛媛大学今治サテライトの松下正史サテライト長(理工学研究科教授)、愛媛大学未来価値創造機構の井口梓副機構長(社会共創学部教授)、えひめ学生起業塾7期生の中田歩実さん(農学部3年生)、6期生の平井完樹さん(社会共創学部2年生)が登壇しました。「これから、どこで、どのような挑戦をしたいか」、「地域は、その挑戦を支えられるか」、「大学は、その未来にどう関わるのか」という問いを軸に、具体的な実践や経験を交えた議論が行われました。




学生からは、起業や地域活動に取り組む中で、挑戦できる環境や相談できる場の重要性に加え、地域に関わりたいという思いがあっても、それを将来の仕事や役割としてどうつなげていけばよいのか分かりにくい、といった率直な課題が語られました。一方で、地域に根ざした経験を通じて、自身の挑戦が地域の価値や将来につながっていく手応えについても言及がありました。
教員からは、今治サテライトを拠点とした産業連携の取組や、地域産業の変化に対応した人材育成、さらには地域文化や暮らしの質を重視したまちづくりの実践が紹介されました。産業の競争力強化だけでなく、人が安心して働き、暮らし続けられる環境をどう支えるかという視点の重要性が示されました。
議論を通じて、産業(経済)と暮らし(文化・生活)を切り離すのではなく、両者を一体として捉えることが、地域の持続性を高める鍵であることが共有されました。また、大学が専門分野の枠を越えて関わり、学生・教員・地域をつなぐ分野横断的なプラットフォームとして機能する意義について、認識が深められました。


トークセッションのまとめとして、仁科学長は、学生や教員の発言を踏まえ、全世代に開かれた大学という考えが、制度や役割としてだけでなく、地域の中で若者からお年寄りまで世代や立場の異なる人々が関わり合う姿として具体的に見えてきたことに触れ、大学が地域の中で果たす役割の可能性について言及しました。また、児玉参事官からは、「まちへの愛」や地域への関わりが人材の定着につながることを踏まえ、大学が多様な視点を提供するシンクタンク的機能を担うことへの期待が述べられました。


最後に、山下機構長が閉会挨拶を行い、大学が地域とともに対話を重ね、産業とまちづくりを支えるハブとなることの重要性を改めて強調しました。本シンポジウムが、地域と大学が未来について考え続けるための新たな出発点となることを確認し、シンポジウムを締めくくりました。
<学長室>
