概要
愛媛大学大学院農学研究科食料生産学専攻の八丈野孝准教授、名古屋大学大学院生命農学研究科応用生命科学科の木村真准教授、金沢大学学際科学実験センターの西内巧准教授らの研究グループは、麦類赤かび病菌の感染プロセスをリアルタイムに解析する手法を世界で初めて開発し、プラントアクティベーター(抵抗性誘導剤)であるニコチンアミドモノヌクレオチド(nicotinamide mononucleotide, NMN)が感染初期の細胞侵入に対する抵抗性を強化することを明らかにしました。
赤かび病菌が麦類に感染すると、収量の低下にとどまらず嘔吐や下痢などを引き起こすカビ毒を産生するため、世界的に深刻な問題となっています。そのため、減農薬を補うと期待されるプラントアクティベーターとして、NMNに赤かび病抵抗性を誘導する効果があることに着目して研究が行われました。赤かび病菌の感染様式が複雑でその作用機構を解析するのが困難だったためバイオイメージング技術を駆使し、世界で初めてとなる赤かび病菌感染のリアルタイム解析システムを確立しました。このシステムを用いて、NMNが感染初期段階を抑制するような作用を持つことを明らかにしました。この成果により、NMNあるいはその代謝物がどのような作用機構を持つのかを解明するための、標的タンパク質の同定等の条件最適化が可能となりました。
この研究成果は、令和3年3月7日に国際学術誌「International Journal of Molecular Sciences」にオンライン掲載されました。また、本研究は農研機構生研支援センター「イノベーション創出強化研究推進事業」、JSPS科学研究費助成事業基盤研究(B)及び基盤研究(C)の支援を受けて行われました。