プレスリリース

高圧含水鉱物の変形によって起こる地球マントル深部の地震波異方性
高温高圧下のD相の変形誘起結晶選択配向

愛媛大学大学院理工学研究科先端科学特別コース博士後期課程3年の呉文天(ウ ウェンティエン)さん、地球深部ダイナミクス研究センターの西原遊教授らの研究グループは、地球マントル深部に見つかっている地震波の異方性の成因が、高圧含水鉱物の一つであるD相の変形によって説明できることを明らかにしました。
研究グループは、地球のマントル遷移層から下部マントル上部に存在すると考えられている高圧含水鉱物D相を、高温高圧条件(圧力20GPa、温度500~1000℃)で変形しました。圧縮変形や剪断変形などの異なるスタイルの変形実験の結果を総合すると、D相の変形では結晶構造中の底面((0001)面)に沿ったすべり変形が卓越しており、これによって、結晶が特定の方位に配列する結晶選択配向が起こることがわかりました。このことから、沈み込み帯付近のマントル深部で観測されている地震波速度の異方性の一部はこのD相の存在によってうまく説明できることが明らかになりました。

論文情報

掲載誌:Journal of Geophysical Research: Solid Earth
題名:Crystallographic Preferred Orientation of Phase D at High Pressure and Temperature: Implications for Seismic Anisotropy in the Mid‐Mantle
(和訳)高温高圧でのD相の結晶選択配向:中部マントルの地震学的異方性への影響
著者:Wentian Wu, Yu Nishihara, and Noriyoshi Tsujino
URL:https://doi.org/10.1029/2024JB029734

本件に関する問い合わせ先

愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター
呉 文天、 西原 遊