オンラインショップを使う消費者心理と販売戦略

研究の概要

 スマートフォンの急速な普及もあり、オンラインショッピングなどの電子商取引は私たちにとってごく一般的な購買の手段になり、その市場規模は大きく成長しています。日本国内のオンラインショップやモールで商品を購入することはもちろんですが、海外から購入することも増えています。さらに商品やサービスの売買は、企業と個人との間だけに止まりません。「フリマアプリ」の普及や物流の発展のもと、インターネットを経由した個人間の商品売買も増えています。私たち消費者にとって購入先が世界に広がることは購買の機会が増えますし、事業者にとっても販路の拡大につながることになります。これらの背景もあり、地方経済活性化の起爆剤としてオンラインショッピングに期待する自治体も多く見られます。

 しかしオンラインショッピングやフリマアプリを利用する際の消費者の認識や重視する要因、行動はまだ十分にはわかっていません。スマートフォンやSNSが及ぼす影響についても明らかにする余地がたくさんあります。翻って、事業者がオンラインショップを運営する際の経営戦略についても、経験則に基づくものが多いのが現状です。国境を越えた取引なら尚更です。したがいまして、オンラインショッピングの消費者行動を明らかにすること、それに基づいた経営戦略を考えることは、今後の電子商取引の活性化には不可欠といえます。このようなオンラインショッピングを理解するための研究を行なっています。

日本のBtoC-EC市場規模の推移(単位:億円)
出所:経済産業省「電子商取引に関する市場調査」2020年

研究の特色

 オンラインショッピングを利用する際の消費者の認識や行動については、アンケート調査結果を分析することで明らかにしようと試みています。いろいろな統計手法を用いて、クチコミや知名度などオンラインショッピングの様々な要素がどれくらい強く購買行動に影響を及ぼすか、あるいは要素間の影響の及ぼし方を分析しています。オンラインショッピングだけでなくフリマアプリに対する消費者行動、あるいは国境を越えたオンラインショッピングに対して、信頼度や個人情報保護対策などの要因がどのように影響を及ぼすのかを検討しています。

 さらには松山商工会議所のご協力を得て、事業者の方々の勉強会に参加させていただいています。そこでは地域でオンラインショップ運営に取り組んでいる事業所の方々の工夫や戦略を聞かせていただき、現場の声を研究に取り入れるようにしています。愛媛のような地方でオンラインショップの事業に取り組むには、情報の共有や事業者間の連携が重要だと考えています。事業者の方々のノウハウを整理し、消費者側の分析と合わせることで、経営戦略への示唆を導きたいと考えています。

研究の魅力

 消費者が重視するオンラインショッピングの要素が明らかになると、経営資源投入の優先順位や力を入れるべき経営戦略の方向性を導くことに繋がります。フリマアプリ経由の売買のような新しい購買行動の仕組みがわかると、その利用方法を考える参考になります。国境を越えたオンラインショッピングの消費者行動が明らかになると市場拡大の機会が得られ、地方経済の活性化に役立つかもしれません。事業者の方々の取り組みを聞いて研究に還元すれば、より良い戦略を提案できるかもしれません。このように考えると、非常にやりがいのある研究だと思います。

 さらには研究の一環として、社会共創学部の授業の中で、地域でオンラインショップを運営されておられる事業所の取り組みや戦略を学生と一緒に学ばせていただき、販売拡大の提案をさせていただく取り組みもしています。研究と実践との往還ができるのも魅力のひとつだと思います。

 

今後の展望

 今後は、オンラインショッピング、フリマアプリ経由の購買、日本国内と国境を越えたオンラインショッピングの消費者行動をより詳細に分析し、事業者の経営戦略への提案に結び付けていきたいです。さらにはSNSの影響や実店舗との連携についても検討していきたいです。研究の成果を地域の活性化に結び付けられるようにがんばります。

この研究を志望する方へのメッセージ

 オンラインショッピング、フリマアプリ、国境を越えたオンラインショッピングは非常に身近な存在になりました。消費者としてこれらのサービスを利用するのも有意義ですが、消費者の行動を解き明かし、どのようにすれば市場を拡大できるか、消費者の満足を高められるかということを考えることは非常に楽しいです。地域の活性化にはいろいろなやり方がありますが、インターネットを利用した経済的な側面からの活性化を考えるのもやりがいがありますよ!