体育授業を創る楽しさと体育授業を実践する楽しさ

研究の概要

 私の専門は、よい体育授業を目指した研究(授業研究)や、よい体育授業を実践できる教員をどのように養成したらよいのかといった研究(教師教育研究)になります。ここでは「よい体育授業(目標達成へ向けての効果的な授業)」という言葉を使いましたが、「よい体育授業=楽しい体育授業」と言い換えることができます。これまでの研究から、子供が楽しかったと満足している体育授業がよい体育授業だということが明らかにされてきました。それは単に主観的に授業の善し悪しを判断するのではなく、実践した授業を客観的な分析に基づき評価し、その結果から授業の有効性を判断し、よりよい授業へ向けて修正を加えること、さらには実践した授業の教師行動も同様に客観的な分析に基づき評価し、教師の指導技術を改善していくといったプロセスの結果です。これら一連のプロセスを繰り返すことにより、誰もが楽しめる体育授業を目指しています。

 そして、楽しい体育授業を実践できるように大学での授業(カリキュラム)はどうあるべきなのか、ここでも客観的な分析に基づき、教員免許はどこでも取得できるけれど、より高い力量を身に付けることができるのは愛媛大学であると評価されることを目指しています。

研究の特色

 研究を進めるにあたっては学校現場とのつながりが必要不可欠となりますが、学校現場での授業実践や授業参観の協力を得ることができており、とても恵まれた環境にあるといえます。また一方で、教育委員会や学校現場から、指導助言者や実技指導講師として依頼を受けることもあります。

 

 学校現場の授業を参観したり、先生方と一緒に授業づくりをしたりすることを通して、子供たちの実態をふまえた今日的課題や先生方の悩みについて理解を深めたり、体育授業についての課題を洗い出したりすることができます。そして、そこから得られた知見を次の授業研究へと活かしたり、教員養成(学生教育)に還元したりすることができます。

研究の魅力

 できなかったことができるようになったとき、子供に限らず大学生であってもとてもイイ顔をします。それが子供であればなおさらです。ある子供はできたときに跳んで喜んだり、できるようになった友達のことを自分のことのように一緒になって喜んだり、一方で、勝敗のつくような場合には、負けたことを泣いて悔しがる子供もいます。そういった子供のリアルな感情に触れることができるのが体育授業です。そういった体育授業をよりよく改善していく作業はとても魅力的です。何より自分の考えた授業を受け、楽しそうに笑顔で取り組む子供たちの姿を目の当たりにできることは研究の醍醐味といえます。

 また近年では、卒業生へ授業実践をお願いすることもできるようになりました。卒業生が先生として教壇に立ち、授業実践をお願いできるほど成長した姿を参観できることは、この上なく嬉しい瞬間です。

今後の展望

 子供を取り巻く環境の変化により、運動経験の乏しさについては言わずもがなではありますが、新型コロナの影響でさらに加速したといえます。だからこそ体育授業の担う役割は今後より一層大きくなりますし、幼児期の運動遊びについての注目度も高まっています。

 私事になりますが、自分の子供がゴールデンエイジ(多様な動きを習得しやすい時期)にあたるため、どのように動きを習得していくのか、どのような動きにつまずき、どのような手立てで、どのように習得していくのか、その経験を研究に活かし、学校体育のみならず、幼児期の運動遊びの実践につなげていきたいと思っています。(贔屓目に見ても、我が子は運動ができる方ではなく、外遊びよりもゲームに夢中なので、研究対象としてとても魅力的な存在です…)

 また、教科書のない体育授業では、先生の力量が子供の成果に大きく関係します。教科書がないということは、授業の自由度が広がることで魅力的であると同時に、創造性が求められるため授業が難しく一定の成果を上げることが困難ということと背中合わせです。今後は誰もが楽しめるような授業を創り、先生の得意不得意にかかわらず、子供が一定の成果を上げることができるようなデジタル教科書を作成していきたいと思っています。

この研究を志望する方へのメッセージ

授業づくりについて学生と話し合う様子

 小学校の先生を目指す学生の中には、体育が苦手でという学生も少なからずいます。私は、そんな学生たちへ「自分の苦手意識を大きなアドバンテージだと思って体育の授業づくりをしてみましょう」といった話をします。体育が苦手な子供の理由は様々です。その苦手を払拭できる体育授業を創ることができれば、間違いなくイイ授業が実現できると思います。

 当然、体育が得意な学生にとっても、「名選手、必ずしも名監督ならず」という有名な言葉があるように、自分がすることと教えることでは全く違います。よい体育授業の条件や指導法について理解を深めることができれば、もっともっと楽しめる授業を実現できると思います。

 E顔(えがお、いいかお)あふれる体育授業の実現を目指し、EHIME大学で一緒に探求してみませんか?