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2016.07.05
マントル対流の数値シミュレーション
地球深部ダイナミクス研究センター / 教授 亀山 真典 / 専門:固体地球惑星物理学

※記載内容は掲載当時のものです。

地球内部の動くようすを調べる「コンピュータの中での実験」

kameyama 「マントル対流」と呼ばれるマントル内部のダイナミックな運動は、地表面で我々が経験するさまざまな地学現象(地震、火山、地殻変動、大陸移動、プレート運動など)を引き起こす原動力になっています。またマントル対流によって起こる熱や物質の移動は、地球の内部のようすを変化させるだけでなく、地球が生まれてから徐々に年齢を重ねていく過程そのものでもあります。即ち、マントル対流を理解することは、地球内部の活動やその長い歴史を理解することへとつながっていきます。
 私の研究室では、数値流体力学を主な手段として、マントルダイナミクスの研究を行っています。具体的には、マントル対流を記述する方程式をコンピュータの中で数値的に解くことにより、マントル内部で起こっている流れを調べています。これを通して、現在の地球のマントルの中のようすはどうなっているのか、またマントルは過去にどのような歴史を経てきたのか、さらに未来はどうなっていくのかを考えることが大きな目標の1つです。
 実際のマントル対流では、マントル物質の性質(流動特性、相状態など)の複雑な変化によって、単純な流体のものとは様相が大きく異なると予想されます。そこで、シミュレーションに用いるモデルを少しずつ「現実的」にすることで、マントル対流のよりリアルな描像を得ることを目指しています。これと同時に、より高度なシミュレーション研究を可能にする手法の開発にも取り組んでいます。

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図1:全地球規模でのマントル対流シミュレーション結果の一例。 外側の直径約13000km、内側の直径約7000kmの3次元球殻の中で、マントル対流の高温の上昇域(黄色)や低温の下降域(水色)の分布を表示している。

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図2:地域的規模でのマントル対流シミュレーション結果の一例。 プレート沈み込み帯の周辺でのマントルの流れに注目し、地表面から沈み込んでいく低温の下降流 (プレート) のふるまいを追跡している。

研究の特色

 いくら「対流」しているとはいっても、「固体」の状態にあるマントルは1年間でたった数cm程度しか動きません。これほどゆっくりとした流れを直接的に観測したり実験したりするのはとても困難なことです。そのため、コンピュータの中で (たとえ仮想的ではあっても) マントルが「流れている」状況を再現してやることが、マントルの流れの実態を研究する上で不可欠 (かつ唯一) の方法だといえるでしょう。

研究の魅力

 ちょっと単純すぎるような気もしますが、地球内部の動きという「そう簡単に見えないもの」を見ることができ、かつ「動いている仕掛け」を知ることができるという点に面白みを感じています。それに加えて (恥ずかしながら) 手先が恐しく不器用な私にでも実験 (シミュレーション) の道具が開発できますし、しかもその道具がうまく動いて実験が成功したときは、喜びが倍増します。

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図3:シミュレーションに使用しているプログラムのソースコード (原始プログラム) の一部。複雑なシミュレーション研究を行う場合には、ソースコードはだいたい数千行以上になっている。

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図4:シミュレーションの結果を解析する作業の一例。 プログラムが出力する「単なる数字の羅列」をうまく「可視化」することによって、内部で起こっている現象を理解しやすくすることも大事。

今後の展望

 最近は地球以外の岩石天体のマントル対流がどうなっているのかという研究も進めています。太陽系の中でいえば、月、水星、金星、火星のマントル対流がターゲットとして挙げられますが、その中でも特に月のような「ごく小さい核」 (言い換えれば「ぶ厚いマントル」) をもつ天体のマントル対流では「容器の3次元的な形状の効果」が非常に重要になりそうなことが分かってきました。さらには太陽系の外側にも目を向けて、地球よりも大きな地球型惑星「スーパー地球」のマントル対流に関する研究にも力を入れています。ただし、この研究が進めば進むほど、「スーパー地球人はいそうにない」ように思えてくるのが残念ですが。

この研究を志望する方へのメッセージ

 この研究室では、コンピュータを「道具」として使います。こう書いてしまうと「コンピュータが得意なヒト限定なのかぁ」と思わるかも知れませんが、そんなことは決してありません。大学生時代はコンピュータ関係の講義・演習が不得意だった私 (本当) がこの研究を続けられているのは、「地球の中を理解したい」という動機に加えて、数学や物理の勉強が (まぁ一応は、ですが) 苦手ではなかったことが大きな理由だろうと思っています。ですので、地学の勉強だけでなく、ぜひそれ以外の理科や数学 (さらには英語や国語も) の勉強にも意欲的に取り組んでください。数学や物理の基礎学力は、理系のどの分野に進むのであれ、大学に入ってからの勉強・研究を必ずスムーズにしてくれるはずです。

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図5:熱対流の模式図。上面で冷やされて重くなった流体は下降し、底面で温められて軽くなった流体は上昇する。マントルの中の流れも基本的には同じ物理法則に則って起こっていると考えてよい。