非線形偏微分方程式の数理解析:限られた手がかりから本質を掴む

block_5258_01_m生命現象などの自然界の現象を記述する法則は、ほとんどが非線形であり、それらに基づいて様々な非線形偏微分方程式が提案されています。興味深い非線形現象として、自己組織的なパターンの形成や自律的なリズムの発生、爆発・凝集といった特異性の発現などが知られています。そのような非線形現象がどのような仕組みで起こるのかということを非線形偏微分方程式を通して数理解析の視点から研究しています。

 

研究の特色

非線形拡散系の解の挙動や特異性の発現、定常問題の解構造について研究を行っています。数理解析というと細かい計算ばかりしているように想像されがちですが、私の研究では、ある量を「見積もる」という計算を主体に行い、どの量がどの量に依存してコントロールされているか、そしてそれらの背後にどのような構造が隠されているのか、ということを研究しています。

方程式系のパラメータを変化させることにより様々なパターンが出現する。上段は非線形項に含まれるパラメータ、下段は異方拡散に関するパラメータをそれぞれ変化させたもの。

 

研究の魅力

非線形偏微分方程式の解を解析的に求めることは、ほとんどの場合不可能であることが知られています。そのため、無理に計算を推し進めるのではなく、方程式のもついくつかの性質・特性を手がかりにして、解の性質の重要な部分を浮き彫りにすることを試みます。そこでは、限られた手がかりから本質的なものを掴み取ることが要求されます。松山では俳句がさかんですが、限られた文字数で季節感を表現するところと相通ずるところなどあれば興味深いと思います。

研究の展望

非線形偏微分方程式の研究は、計算機の発達と相まって進展してきています。少し不思議な感じがするかもしれませんが、計算機が発達すればするほど数理解析が必要になるといわれています。コンピュータで有効な近似計算をするためには、方程式のある量を動かしたときに解がどのように変化するのかといった方程式の解析的な構造を理解する必要があるからです。パソコンの性能の向上・普及にともない、数理解析からの研究もさらに重要で身近になるものと思います。
また、非線形偏微分方程式の研究には、難しい問題をはじめ多くの問題が山積しています。例えば 2000 年、アメリカのクレイ数学研究所では、 ミレニアムにおける数学の7つの難題の一つとして流体の運動を記述する非線形偏微分方程式に関する問題が提出されています。

この研究を志望する方へ

非線形偏微分方程式の研究は、数理解析的アプローチのほか、コンピュータを用いた数値解析的手法や物理的考察も重要です。そのためには、数理解析学の基礎的な知識を修得するとともに、自然科学に対する幅広い知識・関心を持つことが大切と思います。