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大学院教育学研究科2年段王里菜さんの研究成果が愛媛新聞で取り上げられました【1月4日(火)】

 近年の教材を巡る問題として、学校で用いる教材が単元領域毎に異なることが挙げられます。各単元に専用の教材があることで、単元の内容が理解しやすくなる一方で、単元間の繋がりや分野間の繋がりが希薄になるという問題があります。これによって、子どもたちは身近な生活と理科で習う知識との関わりを理解しにくいのではないかと考えられています。
 そこで、段王さんは、生命(生物)領域と粒子(化学)領域が分野横断的に連携した新たな教材の開発を試みました。具体的には、新たな酸・アルカリの呈色指示薬として注目されているアントシアニンを含む植物を栽培し、その植物から抽出したアントシアニンを用いて酸・アルカリの呈色実験を行うことを計画しました。
 段王さんが、生命領域で重視したのは栽培速度の速さです。生命領域では小・中学校を通して、植物の栽培と継続観察を行います。観察を短期で集中的に行うことで、子どもたちを飽きさせることなく植物の発芽と成長を観察できることを期待しました。
 そこで、短期で栽培できるアントシアニンを含む植物として、紫カイワレ大根に注目しました。紫カイワレ大根は、カイワレ大根の一種で、葉や茎が赤紫色をしており、この部分にアントシアニンを含みます。1〜2日で発芽し、1週間で9 cm程度まで成長します。成長した紫カイワレ大根からアントシアニンを抽出することで、子どもたちが「自分が育てた植物から調整した薬品で何がおこるのだろう」という期待感をもって実験を行うことができることを明らかにしました。
そして、生活の身近にあるレモンやこんにゃくの汁などを調べることで、酸やアルカリとは何かということを、実感を伴いながら理解することができます。
 また、段王さんは、この紫カイワレ大根を用いた教材開発において、紫カイワレ大根の栽培法に注目しました。通常、紫カイワレ大根は水耕栽培を使います。しかしながら、水替えを頻繁にしなればならないこと、栽培容器を転倒させて漏水させる心配があることから、子どもたち自身に栽培させることが難しい状況でした。
 そこで、段王さんは、吸水ポリマーを使った教材を販売する株式会社ベネッセコーポレーション(岡山市)と共同して新たな紫カイワレ大根の栽培法を開発することに成功しました。同社が開発した「めばえジェル」は植物栽培用ポリマーで、植物の成長に必要な栄養素も含まれている高分子ジェルです。段王さんは、同社からこのめばえジェルの提供を受けて教材の開発を行い、紫カイワレ大根を安定して成長させることができるようになりました。めばえジェルは、透明ポリマーで根の成長が観察しやすく、また水は噴霧するだけで替える必要がありません。転倒しても周りに広がることもなく、準備も簡単に済みます。以上の結果から、めばえジェルを用いた紫カイワレ大根の成長キットの開発に成功し、本教材が学習教材として有望であることが明らかとなりました。
 現在、開発した教材を株式会社ベネッセコーポレーションおよび東京書籍株式会社(東京)に教材として提案し、掲載を検討していただいています。これらの成果を評価されて、愛媛新聞1月4日付け朝刊に記事が紹介されました。
 4月より、小学校教員になる段王さんが、教科書に掲載された自分の開発した教材を教える日も遠くないかもしれません。<教育学部>

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「紫カイワレ代役鮮やか」2014年1月4日付愛媛新聞(掲載許可番号:G20140201-01430)