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農学部の渡辺誠也准教授の研究が米国科学誌PLoS Oneに掲載されました【3月18日(水)】

 農学部の渡辺誠也准教授が、アミノ酸の立体異性を変換する新しい酵素を発見し、米国科学誌PLoS Oneに掲載されました。
 生体触媒であるタンパク質酵素には、特定の化合物にのみ作用する基質特異性が存在しています(絶対特異性)。一方で、構造的によく似た種々の化合物を基質にするものもあります(相対群特異性)。
 プロリンラセマーゼ(ProR)とヒドロキシプロリン異性化酵素(HypE)は、プロリンと4-ヒドロキシプロリンをそれぞれ基質として、L体とD体の立体異性変換を触媒します。この基質特異性は極めて厳格であると信じられており、またそれぞれの酵素が似た構造を持つ2つの化合物をどのように区別しているのか分かっていませんでした。  渡辺准教授は、まず、こうした異性化反応を触媒する酵素がないと考えられていた古細菌の一種のゲノム上から候補遺伝子を選抜しました。驚くべきことにこの酵素は、プロリンと4-ヒドロキシプロリンだけでなく、3-ヒドロキシプロリンやピペコリン酸、アゼチジン-2-カルボン酸といったプロリンと構造的によく似た他の化合物にも活性を示しました。これは、プロリンラセミ化反応とヒドロキシプロリン異性化反応を同時に触媒できる初めての例であるだけでなく、3-ヒドロキシプロリン異性化という自然界にないと考えられていた反応も合わせ持つ意味で極めて興味深い結果です。この古細菌の酵素の基質結合部位の一部は、既知のProRとHypEのいずれとも異なっており、これが広範囲な基質を認識できる理由であることも分かりました。

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高解像度の図はこちら(PDFファイル 387KB)

 この酵素を持つ古細菌は、100℃近くの超高熱環境に生息しています。太古の地球で生命が誕生した場所はこのような環境であり、彼らが持っていた酵素は広範囲な化合物を基質することができたという仮説が提唱されています。今回発見された酵素はこのような「祖先」の性質を受け継いでいる可能性があり、進化の面からも興味深いといえます。
 本研究成果は、米国科学誌PLoS Oneに掲載され、オンライン版で公開されています(平成27年3月18日(金)(米国東部時間))。

掲載誌

PLoS One 10(3): e0120349. doi:10.1371/journal.pone.0120349

論文題目

Seiya Watanabe, Yoshiaki Tanimoto, Hisashi Nishiwaki, Yasuo Watanabe
Identification and Characterization of Bifunctional Proline Racemase/Hydroxyproline Epimerase from Archaea: Discrimination of Substrates and Molecular Evolution.
(和訳)プロリンとヒドロキシプロリンの両者に作用し立体異性変換を触媒する古細菌由来の酵素を発見:基質認識と分子進化