平成22年3月17日(水)12時から、愛媛大学農学部会館2階において、平成21年度連合農学研究科学位記授与式が愛媛大学、香川大学及び高知大学の関係者の出席の下挙行され、課程博士17人(留学生5人を含む)、論文博士5人の計22人に博士の学位が授与されました。
学位授与に続いて、一井香川大学長から、次のような式辞がありました。
「本日、ここに柳澤愛媛大学長をはじめとする多数のご来賓、指導教員、ご家族のご臨席のもとに、平成21年度愛媛大学大学院連合農学研究科学位記授与式が行われることは私にとっても大きな喜びであります。博士の学位を授与された22名の皆さん、本当におめでとうございます。心からお祝い申し上げます。君たちの勉学と研究に対する大変な努力と熱意が「博士」という成果となって実を結んだことを君たちと共に喜びたいと思います。また、学生諸君に対する指導に暖かい情熱を持ってあたってこられた先生方に心から敬意を表したいと思います。
博士課程修了生17名のうち、日本人学生は12名で、海外からの留学生が5名です。海外からの留学生のうち、中国からは2名で、その他ネパール、タイ、イランから各1名です。また、論文博士が5名おられます。
君たちは、実験や文献調査に昼夜を忘れて取り組んだことや、実験結果に対する指導教員とのディスカッションのこと、さらには期待するような研究成果がなかなか得られず、苦しい毎日を送ったことを思い出しているかも知れません。しかし、今日ここにいる君たちは、それらの苦難を自分自身の力で乗り越えました。研究成果を学会で発表し、学会誌などに投稿し、それらを君たち自身の手で集大成し、学位論文としてまとめあげたのです。その成果として博士という学位を手にすることができましたが、君たちの将来にとってもっとも大きな成果は「人生に対する自信」を得たことではないでしょうか。この成果は、第1番目の成果であり、君たちがどのような分野に進んだとしても、例えば行政や企業経営の分野に進んだとしても活かされるものであります。
第2番目の成果は、学位論文をまとめるに至るまでの過程のなかで体得した課題発見力、課題解析力、課題解決力であり、さらにはコミュニケーション力をはじめとする表現力であり、チャレンジ精神であると思います。特に、課題発見力、課題解析力、課題解決力の3つは課題探求力として一つにまとめられますが、この課題探求力も社会のどのような分野においても求められる資質であり、研究者だけでなく、行政や企業経営の分野に進んだとしても活かされるものであります。
第3番目の成果は、学術研究における世界の最先端を実感し、経験していることです。歴史的に見れば当たり前のことですが、学術研究に限らずあらゆる分野の最先端は常に動いています。そのスピードや動き方は様々ですが、留まっていることはありません。立ち止まってじっとしていると先端はどんどん進んで行きます。とりわけ、学術研究の分野では今日は最先端であっても、明日には最先端ではないことがしばしばあります。これらのことは、継続的な学習と努力が将来にわたって必要であることを我々に教えています。
私は、君たちが大学院の課程において、人生に対する自信と課題探求力という2つのものを得たと言いましたが、それらは変わらないものでは決してありません。自信は継続的な努力に裏打ちされないと、残念ながらその力を発揮できません。また、課題探求力もほって置けば、その能力は次第に低下し、日常的なスキルアップが必要です。君たちは、今までとほぼ同じ分野や少し違う分野、さらには今までの専門とはかなり違う分野で活躍することが期待されています。私は、君たちが明日から置かれるであろう新しい環境のなかで最善の努力を継続され、人生に対する自信と課題探求力を社会で大いに活用されることをることを何よりも期待しております。
昨年の秋にスウェーデンのコペンハーゲンで、気候変動枠組み条約の第15回締約国会議COP15が開かれたことを記憶しておられる方も多いと思います。今年の10月には名古屋で、生物多様性条約第10回締約国会議COP10が開催されます。これらのCOP15とCOP10という会議は、1992年にアルゼンチンで開かれた「地球サミット」、正しくは「環境と開発に関する国際連合会議」と言いますが、その地球サミットにおいて「気候変動枠組み条約」と「生物多様性条約」が採択されたことに伴って開かれている会議であります。
例えば、電子機器部品に使われている鉱物資源の採掘が、アフリカのマウンテンゴリラが生息している熱帯雨林を破壊していることや東南アジアのボルネオゾウが棲む森を伐採して植物油を生産していることなどに始まり、生物多様性の重要性、言い換えれば人類の未来にとって生物多様性を維持することがいかに重要であるかが、議論されます。企業の活動そのものが生物多様性を十分に配慮しなければ、大きなリスクを伴うことなどが話題になるはずです。
私は、生物における多様性だけではなく、文化や人それぞれの考え方、発想、感性の多様性が人類の将来における発展への源泉であると考えています。農学は人間の社会的生活の向上と自然との調和を常に考えながら発展してきた学問であります。諸君が将来にわたって多様性の重要性を常に認識しながら、研究活動はもちろん社会的活動をされるように願っております。
世界には科学技術でもって解決しなければならない課題がたくさんあります。21世紀がかかえる様々な課題に新しい視点で挑戦し、解決の方法を提示できるのは君たちのような若い研究者の特権であり、喜びであると思います。私は、君たちの挑戦に大きな期待を持っています。
本日学位を取得された諸君が、新しい環境のなかで努力を継続し、大きな花を咲かされることを期待し、式辞といたします。誠におめでとうございました。」
記念撮影終了後、本研究科の留学生であるヤン・リンさんの司会により、祝賀パーティーを開催しました。パーティーの半ばで、学位を授与された修了生全員から、指導教員や家族への謝辞、研究生活の思い出、そして今後の抱負などについてスピーチがありました。
<連合農学研究科>