令和6年5月11日(土)、12日(日)に岡山大学で開催された「中国四国植物学会第80回大会」において、農学部4年生の三木葵葉さん、藤川弦音さんがそれぞれ「優秀発表賞(ポスター発表部門)」を、大学院農学研究科修士課程2年生の大野奈津美さんが「優秀発表賞(口頭発表部門)」を受賞しました。
本賞は、若手研究者(概ね40歳以下の研究員や助教)の中から選出され、表彰されるものです。研究内容に加えてプレゼンテーション等総合的に評価された後、学会会員の投票により選出されました。
三木さんは、形質転換植物の選抜用抗生物質としてストレプトマイシンの利用の可能性について検証しました。従来法では、ハイグロマイシンやカナマイシンの利用が主流ですが、ストレプトマイシンはこれらよりも安価であるという利点があります。まずは、モデル植物のシロイヌナズナ・タバコ・イネにおけるストレプトマイシン感受性を評価し、それぞれの発芽時においてストレプトマイシン感受性を確認しました。特に高い感受性を示したシロイヌナズナにストレプトマイシン耐性遺伝子を形質導入し、選抜マーカーとしての利用を検証しました。研究の結果、ストレプトマイシンとストレプトマイシン耐性遺伝子を用いて形質転換植物を単離出来ることを明らかにしました。この成果は、植物の遺伝子組換え技術やゲノム編集技術などの基礎研究に貢献します。
藤川さんは、うどんこ病菌が宿主細胞に感染するメカニズムの解明に取り組んでおり、細胞の外からカルシウムイオンを流入させるMLOという輸送体タンパク質の機能を研究しています。ゲノム編集技術を使ってMLO遺伝子を破壊したオオムギにカルシウムイオンセンサータンパク質遺伝子GCaMP6を導入した形質転換体を作成し、1細胞レベルでカルシウムイオンの流動を可視化する技術を確立しました。解析の結果、GCaMP6を導入した野生株では、うどんこ病菌の侵入菌糸の周辺のみでカルシウムイオンが流入し、振動を示したのに対して、mlo変異体ではその振動が消失することがわかりました。この成果は、うどんこ病に対する新たな抵抗性品種の開発につながります。
大野さんは、植物が花を咲かせるタイミングを調整するFT遺伝子について研究するため、最新のゲノム編集技術を使い、DNAの特定の部分(遺伝子発現制御領域にあるシスエレメント)に直接変異を導入しました。この方法は、従来法の問題点を解決し、本来の遺伝子の状態で解析することができます。研究の結果、CCAAT1とCOREという2つのシスエレメントに変異を導入すると、FT遺伝子の発現量が低下し、花成が遅れるということが分かりました。この成果は、様々な植物の開花調整に役立つ可能性があります。
受賞した発表タイトル
●三木葵葉さん(指導教員:大学院農学研究科・賀屋秀隆准教授)
「植物におけるストレプトマイシン感受性の再評価と選抜マーカーとしての利用」
●藤川弦音さん(指導教員:大学院農学研究科・八丈野孝教授)
「MLOはオオムギうどんこ病菌侵入時におけるカルシウムイオンの流動に関与するのか」
●大野奈津美さん(指導教員:大学院農学研究科・賀屋秀隆准教授)
「内在cis-elementへの直接変異導入によるシロイヌナズナFT遺伝子の発現制御メカニズムの解明」
<農学部・大学院農学研究科>