共同リリース機関
東京工業大学、科学技術振興機構(JST)、理化学研究所、愛 媛 大 学
要点
- 光照射により原子や分子が動く様子をコマ撮りで撮影し、「分子動画」を作成
- 光照射による物質状態の時間変化を研究する手法に道を拓く
- 光機能性材料の応答機構の解明や、生体分子などの動きを目で見て理解
概要
東京工業大学大学院理工学研究科の石川忠彦助教と腰原伸也教授、マックス・プランク物質構造ダイナミクス研究所(ドイツ)のドウェイン・ミラー教授らの共同研究グループは、光スイッチ(用語1)候補材料である分子性結晶(用語2)Me4P[Pt(dmit)2]2(図1参照)に光をあて、原子や分子が動く様子の直接観測に世界で初めて成功した。結晶中の原子や分子の動きを2兆分の1秒という時間分解能と100分の1ナノメートル(nm)以下という空間分解能を併せ持つ「分子動画」として映像化し、結晶内での特定の分子の動きの組み合わせが結晶の機能と連携していることを明らかにした。
ミラー教授らが開発した、超短パルス電子線源(時間幅0.4 ピコ秒程度、1ピコ秒は1兆分の1秒)を用いることで、分光測定に匹敵する時間分解能が得られる電子線回折像測定(用語3)装置により回折像をコマ撮りで撮影し、光照射によって構造が変化する様子を直接観測した。この手法により、生体分子をはじめとする様々な物質の光応答機構解明のための研究手法の革新が期待できる。
結晶中の原子や分子に光が当たるとどのように動き、形が変化するのかが、物質の光応答機構を解明する上での鍵を握っている。しかし、これまでは実際の物質の動き、特に光スイッチや光エネルギー変換(用語4)物質の動作で重要な、1兆分の1秒以下で起こる高速変化は光スペクトル(用語5)の変化から推定するしかなかった。
本研究グループには理化学研究所の加藤礼三主任研究員や愛媛大学の山本貴准教授らが参画した。
研究成果は、12月18日発行の米科学誌「サイエンス」に掲載される。
(注)この研究は科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業(CREST) 「先端光源を駆使した光科学・光技術の融合展開」研究領域(研究総括:伊藤正(大阪大学 名誉教授/大阪大学ナノサイエンスデザイン教育研究センター 特任教授))における研究課題「光技術が先導する臨界的非平衡物質開拓」の一環として行われた。
論文情報
掲載誌
Science
論文タイトル
Direct observation of collective modes coupled to molecular-orbital driven charge transfer
著者
Tadahiko Ishikawa, Stuart A. Hayes, Sercan Keskin, Gastón Corthey, Masaki Hada, Kostyantyn Pichugin, Alexander Marx, Julian Hirscht, Kenta Shionuma, Ken Onda, Yoichi Okimoto, Shin-ya Koshihara, Takashi Yamamoto, Hengbo Cui, Mitsushiro Nomura, Yugo Oshima, Majed Abdel-Jawad, Reizo Kato, R. J. Dwayne Miller
DOI
10.1126/science.aab3480
※詳しくは、プレスリリース資料をご参照ください。
(研究に関する事)愛媛大学 大学院理工学研究科 環境機能科学専攻 准教授 山本 貴(ヤマモト タカシ)
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