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重要なお知らせ

プレスリリース

絶対嫌気性病原菌における糖代謝の新経路を発見~遺伝子クラスターの利用と化合物ライブラリーのスクリーニングの有用性を証明~

ポイント

  • 齲蝕(うしょく;虫歯)・歯周病、下痢症・食中毒といった公衆衛生的に広く知られている病気の原因菌が持つ新しい糖(L-フコース)の分解経路を世界で初めて発見
  • こうした菌は空気があると生育できない嫌気性であり培養も難しいことから、代謝経路の発見は困難
  • この経路は人間だけでなく善玉菌にもないことから、治療薬の開発につながる

概要

愛媛大学大学院農学研究科 渡辺誠也教授は、ベイロネラ属やカンピロバクター属といった人体に感染する病原性細菌に特異的に存在するL-フコース(デオキシ糖の一種)の新しい代謝様式を発見しました。

人体に棲む微生物集団(叢)のことを「マイクロバイオーム」と呼び、例えば腸内細菌叢は健康と深くかかわっていることはよく知られています。彼らは体内で糖(L-フコースなど)や有機酸を栄養源に増殖していますが、生育に酸素を嫌う絶対嫌気性のものが多く培地も特殊で病原性もあるため直接培養による詳しい代謝系の解明は困難です。渡辺教授は、ゲノム上の L-フコース代謝に関連すると考えられる遺伝子の集まり(クラスター)に含まれる機能未知遺伝子を生化学的に解析することで、ピルビン酸とL-ラクトアルデヒドまで分解される新たな経路を発見しました。培養可能な微生物は自然界全体の1%以下ともいわれており、本アプローチの有用性が如何なく発揮されました。この代謝様式は人間や善玉菌のものとは異なるため、この遺伝子の機能を阻害する化合物を作ることができれば創薬のシーズになる可能性があります。

本研究成果は、2019年12月30日に生化学分野の専門誌「Journal of Biological Chemistry」のオンライン版に先行掲載されました。

プレスリリース資料はこちら(PDF 1,434KB)

お問い合わせ先

愛媛大学大学院農学研究科(沿岸環境科学研究センター兼任) 教授 渡辺誠也

Tel 089-946-9848
Mail  irab@agr.ehime-u.ac.jp