プレスリリース

アミロイドペプチドの凝集を阻害する生体反応を発見 -酸化ストレス疾患を治療する創薬研究に大きな手掛かり-(理化学研究所との共同リリース)

理化学研究所(理研)田中生体機能合成化学研究室の田中克典准主任研究員、筒井歩特別研究員と、愛媛大学大学院理工学研究科の座古保教授らの共同研究グループ※は、酸化ストレス条件下で、アクロレインとポリアミンから速やかに生成される8員環化合物が、アミロイドペプチドの凝集を阻害して細胞毒性を中和することを発見しました。
生体内で活性酸素が作られると、タンパク質や脂質、あるいは核酸(DNA やRNA)と反応し、生体にダメージを与えます。これを酸化ストレスと呼びます。
アルツハイマー病やがん、脳梗塞、慢性疾患など、酸化ストレスを原因とする疾患では、細胞に対して強い毒性を持つアクロレインが過剰に発生し、この分子が酸化ストレスをさらに進行させると考えられてきました。
今回、共同研究グループはアクロレインがアルツハイマー病発症時に高発現するポリアミンと速やかに反応して、8員環化合物が生成されることを発見しました。さらに、この8員環化合物が、アルツハイマー発症の要因の1つであると考えられているアミロイドペプチドの凝集を著しく抑え、アミロイドペプチドの細胞毒性を中和することを発見しました。これらの結果は、細胞が酸化ストレス条件下でアクロレインを発生し、ポリアミンなどさまざまな生体内アミンとの間で8員環化合物を形成することで、細胞機能を制御している可能性を強く示しています。
今後、酸化ストレス疾患の発症メカニズムの究明や治療法の開発に貢献すると期待できます。

本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ)の研究領域「分子技術と新機能創出」(研究総括:加藤隆史)研究課題名「生体内合成化学治療:動物内での生理活性分子合成」(研究者:田中克典)の一環として行われました。本成果は、ドイツの科学雑誌『Advanced Science』の
オンライン版(6月1日付け)に掲載されます。

※共同研究グループ

理化学研究所

田中生体機能合成化学研究室

准主任研究員 田中 克典(たなか かつのり)
特別研究員 筒井 歩(つつい あゆみ)

前田バイオ工学研究室

主任研究員 前田 瑞夫(まえだ みずお)
国際プログラム・アソシエイト(研究当時) トン・ブ(Tong Bu)

 

グローバル研究クラスタ 理研-マックスプランク連携研究センター
システム糖鎖生物学研究グループ 糖鎖構造生物学研究チーム

チームリーダー 山口 芳樹(やまぐち よしき)

 

愛媛大学大学院理工学研究科

教授 座古 保(ざこ たもつ)
(研究当時 理研前田バイオ工学研究室 専任研究員)

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