すばる× JWST で銀河・巨大ブラックホールの黎明期に迫る
発表のポイント
- 最新鋭のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 (JWST) を用いて129億年前の宇宙に存在するクェーサーを観測し、明るく輝くブラックホールに隠れた親銀河の星の光を捉えた。 遠方クェーサーの親銀河の検出は世界初。
- 今回観測した2天体は、すばる望遠鏡によって大量発見された遠方クェーサーの一部。すばるの優れた探査能力とJWSTのシャープな画像の掛け合わせによって得られた成果である。
- 今後、現在観測中の別天体の結果と合わせて、銀河とブラックホールという宇宙の2つの重要な構成要素について、どちらが先に生まれて進化したのかという、宇宙スケールの「ニワトリが先か、タマゴが先か」問題の解決に迫ることができると期待される。
発表概要
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU) の Xuheng Ding(シューヘン ディン)特任研究員と John Silverman(ジョン シルバーマン)教授、北京大学カブリ天文天体物理研究所 (PKU-KIAA)の尾上匡房(おのうえ まさふさ)カブリ天体物理学フェローを中心とし、東京大学大学院理学系研究科、愛媛大学、国立天文台の研究者らが参加する国際共同研究チームは、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を用いて129億年前の宇宙に存在するクェーサー2天体を観測し、中心に活動的な巨大ブラックホールが潜む銀河の姿を初期宇宙で初めて捉えることに成功しました。本成果は近傍宇宙で知られる銀河と巨大ブラックホールとの密接な相関関係の起源を探る上で、非常に重要な進歩と言えます。
また、観測されたクェーサーは共にすばる望遠鏡によって発見された初期宇宙で代表的な明るさの天体で、世界有数の広視野探査能力を誇るすばる望遠鏡と世界最先端のJWSTの強力な組み合わせによって実現した成果です。現在も続く研究チームのJWST観測からは今後も更なる研究の進展が期待されます。
本研究成果は、英国の国際学術誌「Nature」のオンライン版に英国夏時間2023年6月28日付で掲載されました。
発表者
東京大学
■国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)
John Silverman(ジョン シルバーマン)(教授)
Xuheng Ding(シューヘン ディン)(特任研究員)
Connor Bottrell(コナー ボトレル)(研究当時:特任研究員)<現・西オーストラリア大学 フォレストフェロー>
■大学院理学系研究科
柏川 伸成(教授)
河野 孝太郎(教授)
嶋作 一大(准教授)
北京大学
■カブリ天文天体物理研究所(PKU-KIAA)
尾上 匡房(カブリ天体物理学フェロー)
愛媛大学
■宇宙進化研究センター
長尾 透(教授)
松岡 良樹(准教授)
国立天文台
泉 拓磨(助教)
今西 昌俊(助教)
鳥羽 儀樹(特任助教)
■ハワイ観測所
青木 賢太郎(シニアサポートアストロノマー)
論文情報
雑誌:Nature(2023年6月28日付)
題名:Detection of stellar light from quasar host galaxies at redshifts above 6
著者:Xuheng Ding*, Masafusa Onoue*, John D. Silverman, Yoshiki Matsuoka, Takuma Izumi, Michael A. Strauss, Knud Jahnke, Camryn L. Phillips, Junyao Li, Marta Volonteri, Zoltan Haiman, Irham Taufik Andika, Kentaro Aoki, Shunsuke Baba, Rebekka Bieri, Sarah E. I. Bosman, Connor Bottrell, Anna-Christina Eilers, Seiji Fujimoto, Melanie Habouzit, Masatoshi Imanishi, Kohei Inayoshi, Kazushi Iwasawa, Nobunari Kashikawa, Toshihiro Kawaguchi, Kotaro Kohno, Chien-Hsiu Lee, Alessandro Lupi, Jianwei Lyu, Tohru Nagao, Roderik Overzier, Jan-Torge Schindler, Malte Schramm, Kazuhiro Shimasaku, Yoshiki Toba, Benny Trakhtenbrot, Maxime Trebitsch, Tommaso Treu, Hideki Umehata, Bram P. Venemans, Marianne Vestergaard, Fabian Walter, Feige Wang, and Jinyi Yang
*共筆頭著者兼責任著者
DOI:10.1038/s41586-023-06345-5
URL:https://www.nature.com/articles/s41586-023-06345-5
研究に関する問合せ
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構
特任研究員 Xuheng Ding(シューヘン ディン) [英語での対応]
E-mail:xuheng.ding@ipmu.jp
北京大学カブリ天文天体物理研究所 (PKU-KIAA)
カブリ天体物理学フェロー 尾上 匡房 (おのうえ まさふさ)
E-mail:onoue@pku.edu.cn
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構
教授 John Silverman (ジョン シルバーマン) [英語での対応]
E-mail:john.silverman@ipmu.jp
報道に関する問合せ
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構
広報担当 小森 真里奈
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東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室
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すばる望遠鏡に関すること
国立天文台ハワイ観測所 広報担当 石井 未来
E-mail:ishii.miki@nao.ac.jp