愛媛大学大学院農学研究科(先端研究院沿岸環境科学研究センター教授 兼任)の渡辺 誠也教授、農学部4年生の青野 柚希さん、先端研究院プロテオサイエンスセンターの寺脇 慎一特定講師、大学院農学研究科1年生の里 陽美花さん、横井 大洋助教の研究グループは、単一の活性中心で酸化反応と共役した異性化反応を連続的に行う非常にめずらしい酵素である「D-アピオン酸オキシドイソメラーゼ(ApnO)」の立体構造を決定し、触媒メカニズムの解明に成功しました。
生命現象における化学反応を担う約7,000種類の酵素において、単一の活性中心で異なる化学反応を連続的に行うものはわずか4種類しか知られておらず、ApnO以外の酵素は古くから研究が行われています。一方で、ApnOは基質であるD-アピオン酸が入手困難なこともあり、2018年に米国の研究グループによって反応そのものと酵素の正体が報告されて以降、詳細な解析が行われていませんでした。
研究グループではまず、ApnOがD-アピオン酸以外の入手しやすい化合物を基質にできることを見出し、これにより詳細な生化学的解析が可能となりました。次に、大型放射光施設SPring-8で収集した高分解能X線回折データをもとに全体構造を決定するとともに、2個の金属イオンと阻害剤が結合した構造から触媒機構を推定しました。興味深いことに、こうした特徴は上記4種類の酵素の中の一つであるケトール酸レダクトイソメラーゼと類似していた一方で、ApnOには非常にめずらしい四面体配位をしたマンガンイオンが結合しており、その周囲の活性残基がまったく異なっていたことから、両者は独立にその反応機構を獲得したことが示唆されました。こうした知見は、「一つの酵素の反応は一つの反応様式に分類できる」という一般的な枠組みに当てはまらない稀有な酵素における分子進化の解明に貢献することが期待されます。
本研究成果は、2026年10月8日に生化学分野の専門誌「Journal of Biological Chemistry」のオンライン版に先行掲載されました。
論文情報
- 掲載誌:Journal of Biological Chemistry
- 題名:Structural basis for oxidation-coupled isomerization by ApnO
(和訳)ApnOによる酸化と共役した異性化反応の構造基盤 - 著者:Seiya Watanabe*#, Yuzuki Aono#, Shin-ichi Terawaki, Himika Sato, Taiyo Yokoi
* 責任著者/#共筆頭著者 - DOI:10.1016/j.jbc.2026.113628

