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2019.11.22
ダイヤモンドの窓を通して惑星内部を見る
地球深部ダイナミクス研究センター / 講師 境 毅(さかい たけし) / 専門:超高圧惑星科学

※記載内容は掲載当時のものです。

超高圧極限状態での物質のふるまいを探る

研究の概要

 皆さんは「地下の世界」というと、どのくらいの深さを思い浮かべるでしょうか?もしかしたら真っ暗な洞窟の様なものを想像するかもしれませんが、それはせいぜい地下数十~数百メートルの世界でしょう。私の研究は、地下何百~何千キロメートルという深さの「地球の内部」がどうなっているか、というものです。海底では“水圧”がかかるように、岩石で埋め尽くされた地下深くでも“岩圧“がかかるため、地球内部は高圧力の世界になっています。同様に、重力がある限り、地球に限らずすべての惑星の内部は高圧の世界になっているといえます。地球・惑星内部と同じ高圧力状態を実験室で再現して、惑星を構成する物質が超高圧下でどんな性質を持っているか、何が起こるのかを調べる、それが超高圧地球科学です。

研究の特色

写真①

 物質に圧力をかけると縮みます。その縮み具合からその物質の密度や硬さが分かります。また、ただ縮んでいくだけではなく、あるところでガラッと変わった新しい表情を見せてくれることがあります。黒鉛がダイヤモンドに変わる現象に代表される、結晶構造相転移と呼ばれる現象です。いったん構造が変化すると、その物質の密度も硬さもグッと変化します。そのような変化が、地球や惑星内部の大構造を作っているのです。そしてその現象は実験室で再現して確かめることができます。私が使っているダイヤモンドアンビル装置は、地球上で最も硬い物質であるダイヤモンドを使って試料を圧し潰し、非常に高い圧力をかけることができる装置ですが、ダイヤモンドが透明なので様々な現象を“目で見る”ことができるのも特徴の一つです。
 圧力は深さに対応しています。地下何百~何千キロメートルという深さの圧力は、数十万気圧から百万気圧にもなります。より深いところを研究するには、より高い圧力を発生させなければなりません。圧力は力÷面積ですから、より高い圧力を出そうとした場合、より大きな力で、という発想もあるかもしれませんが、そうなると装置が大掛かりになりすぎて(金銭的にも?)現実的ではありません。一方、面積は長さの2乗ですので、サイズを1/2にすれば4倍、1/10にすれば100倍の圧力が得られることになります。実際はそう簡単にいきませんが、より小さい面積に力を集中させることで非常に高い圧力を発生させることができるようになります。地球の中心圧力は364万気圧と言われていますが、この圧力の実験をするには10ミクロン程度(髪の毛の太さの1/10くらい)の試料を扱うことになります。さらに、木星や土星、天王星や海王星といった惑星、あるいは太陽系の外にあるスーパーアースと呼ばれる惑星のように地球よりも大きな惑星の内部を調べるためには、より高い圧力を発生させる必要があり、それに対応した道具を開発しなければなりません。写真①は、愛媛大学で開発されたダイヤモンドより硬いダイヤモンド(ナノ多結晶ダイヤモンド、通称ヒメダイヤ)をガリウムイオンビームを使って高圧実験用の小さな小さな部品として削り出したものです。このような小さな小さな装置を自作することで、地球中心を超える圧力の発生が可能となってきています。

研究の魅力

 すべての惑星の内部は高圧の世界になっていますので、高圧下での物質のふるまいを研究すると、そこで発見された現象は、あらゆる惑星に適用することができます。また、それは必ずしも現在に限りません。地球ができたばかりのころ、地球表層はマグマの海で覆われていたといわれていますが、そのマグマの海の「中」では何が起こっていたのか?そこからどうやって現在の姿になってきたのか?という惑星としての進化を研究するうえでも高圧研究は重要な役割を担っています。このように、空間的にも時間的にも広がりをもって研究をすることができるのが魅力です。
高温高圧を発生する装置は文字通り実験装置であり道具でしかないですが、我々人類が到達することができない地球の最深部の世界や遥か彼方の宇宙に浮かぶ惑星の中身をダイヤモンドの窓を通して見せてくれる探査機であり宇宙船である、ということもできるかもしれません。広大な世界に思いを馳せてワクワクを感じながら、非常に“小さい”作業に日々取り組んでいます。

今後の展望

写真②

 地球惑星内部の環境に対応する圧力によって物質の性質が“変わる”ことを研究していますが、圧力で物質の性質を“変える“という意味において、高圧力の科学と技術は物理学や工学などさまざまな分野で重要な意味を持っています。特に私が現在開発を進めている数百万気圧の発生技術と、そのような極限環境下での物質科学はすべての分野にとってのフロンティアです。写真②は、大型放射光施設SPring-8での実験中に撮影した研究チームの写真です。愛媛大学チームに加えて、東京大学、大阪大学、広島大学、物質・材料研究機構(NIMS)、高輝度光科学研究センター(JASRI)の複合チームになっていて、超伝導や電子物性の専門家が一緒になって研究しています。地球惑星科学を軸足に、分野の壁を超えた研究を展開していければと思っています。

この研究を志望する方へのメッセージ

 地球科学は、地球や惑星といった自然界に実在するモノあるいは現象を対象とした総合科学です。どういった切り口で研究するかは自由ですので懐の広い学問ということもできます。物理が好きなら物理を、化学が好きなら化学を、数学が好きなら数学を頑張って勉強してよいと思います。そのうえで自分なりの視点で地球を見たとき、面白い研究対象は必ず見つかります。あなたのワクワクを、地球科学から是非見つけてください。