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2016.08.03
数値シミュレーションによる海洋現象の再現と将来予測
沿岸環境科学研究センター / 教授 郭 新宇 / 専門:海洋物理学

※記載内容は掲載当時のものです。

瀬戸内海から北西太平洋へ

image001 私たちの住んでいる四国は周辺が海で囲まれており、特に愛媛県宇和島市では漁業が盛んに行われています。宇和島市を中心に、魚のみならず真珠の養殖も盛んに行われています。また、この地域で養殖が盛んに行われる理由としては、リアス式海岸として知られる入り組んだ沿岸地形と四国沖を流れる黒潮から生じる急潮という海水交換を促進する現象により、漁場の水質が魚や真珠にとって良好な状態を維持されていることがあげられます。
 しかし、近年このような沿岸域において、地球温暖化に伴う水温上昇やそれによる藻場の衰退、漁場の赤潮などの環境問題が深刻化しています。このような環境問題の理解には、化学や生物学のみならず海や大気の運動といった物理的な現象の解明も必要となってきます。
 そこで、私たちの研究室では、主に沿岸域を対象とし、現場観測や数値モデルによる数値シミュレーションから、地球温暖化を始めとする地球規模の環境変動が沿岸域の流動場や生態系・物質循環に及ぼす影響の解明に取り組んでいます。

研究の特色

 私たちの研究室では、主に数値モデルを用いた数値シミュレーションを行っていますが、そもそもの数値モデルを構築するためには、解明したい現象についてある程度理解することが必要不可欠となっています。そこで、重要となるのが現場観測です。現場観測により得られたデータから現象の特徴を抽出することは、数値シミュレーションの第1歩です。複数回にわたる現場観測から得られた結果をもとに数値モデルを構築し、現場観測だけで解明しにくい海洋現象の3次元的構造とその時間変動を数値シミュレーションより表現し、さらに数値実験や力学解析を行い、現象のメカニズムの解明に努めています。そのために、屋内・屋外問わず様々なフィールドで活動することや現場観測やプログラミングなどの幅広い知識が身に付きます。

研究の魅力

 海洋現象は、流体力学の方程式だけでは説明できない複雑なものであり、海の中だけではなく、海上の風や気象とも強い関係を持っています。そのため、同じ海洋現象というくくりでも変動に要する時間や規模が大きく変わってきます。そのような海洋現象をターゲットとしているため、数値モデルの構築も一筋縄ではいきません。構築された数値モデルを用いて数値シミュレーションを行い、得られた結果をもとに試行錯誤し、必要に応じて数値モデルを修正する、といった作業を繰り返しながらより現実的に再現できる数値モデルを構築していきます。このような作業を繰り返していくため、自分の思ったように数値モデルが動いたときの達成感は非常にいいものです。

今後の展望

 日本の南側には、世界で最も大きい海流の1つの黒潮が流れており、沿岸海域の物理環境を強く影響していると同時に、多くの物質を外洋域から沿岸海域へ、あるいは沿岸海域から外洋域へ運んでいます。今後は、黒潮流域と沿岸海域に関わる物理過程の理解だけでなく、黒潮流域と沿岸海域における物質(栄養塩、プランクトン、汚染物質)の輸送と循環、それによる周辺海域の生態系への影響について研究を進めていこうと考えています。このような展開に関しては、海洋物理学的視点からだけではなく、海洋化学や海洋生物学の分野とも連携して研究を進めていく予定です。

この研究を志望する方へのメッセージ

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宇和海のミズクラゲパッチ

 数値モデルや数値シミュレーションという言葉を聞いて、「なんだか難しそう」、「コンピュータは苦手だなぁ」と思われるかもしれませんが、そういった人でも大丈夫です。プログラミングやコンピュータの知識は、自分で作業をしていくうちに自然と身に付くことも多いです。それよりも必要なことは、「海が好きでもっと知りたい」と思う好奇心や、自分で考えることが好きかどうかです。また、現場観測のために大小さまざまな船に乗る機会が多くあり、船舶生活など非常に貴重な体験ができます。