この授業では、固体地球物理学の基礎、地球惑星内部物性・運動特性を支配する物理法則の初歩を理解し、地球深部物質学を理解するために必要となる基礎知識を身につけることを目的としています。
授業内容
地球の中心は約6,000℃。さて,どうやって測定したのでしょう。地球の深部は、温度・圧力ともに高くなっていますが、温度は圧力に比べて物理法則があまり適用されず、単純計算では簡単に導き出せないそうです。そこで、授業ではいくつかの要因を検証して導き出していきました。
坑道などでの直接観測により深さ数kmまでは公式で10〜50k/km(ケルビン:k,絶対温度の単位)と導き出せますが、この法則はマントル内部では成り立たず、間接的に求めていくしかありません。ここで教員は、「高校のとき“断熱膨張”を習ったでしょう。」と学生に問い掛け、「原理は同じですが、今回扱うのは空気ではなく岩石。用語も“断熱温度勾配”となります。」と、1つ目のキーワードを紹介しました。
断熱温度勾配は、マントルと外核で数値が異なり、この数値と地球内部で測定可能な2か所の温度を用い、地球の外側と内側の2方向からマントルと核の境界の温度を探ります。
1か所目は、深さ660kmの地震波不連続面で、そこから計算すると温度は2,572k。
2か所目は、深さ5,150kmの外核と内核の境目(ICB)で、そこから導くと温度は4,200k。
ほぼ同じ位置の外核最上部とマントル最下部に、約1,600kのズレがあることがわかりました。ここで、2つ目のキーワードの“熱境界層”が紹介されました。ズレのある約200kmの層を指し、この熱境界層で、約1,600k温度上昇があったことがわかります。物質の移動がないマントルと核の境界で、エネルギーが熱伝導のみで輸送されたことで、急激な温度上昇が起きていました。
続きは次回となりましたが、この分野で世界レベルの研究を展開している教員による授業は、地球の壮大なスケールを感じさせられました。学生たちも、授業の合間に紹介される教員の研究成果に目を輝かせていました。
教員からのコメント
火山噴火や地震、大陸移動など、長い目で見れば地球は活発に活動しています。それらテクトニックな現象の多くは、地球内部の運動に起因して生じています。約1億年の時間をかけてゆっくりと流動し変化するマントルには、一方で46億年前の地球誕生当時の痕跡が今でも残されています。また地球磁場は鉄を主成分とする液体外核の運動により維持されていますが、太陽系にはこれほど強い地磁気を持つ地球型の惑星は他にありません。
この講義では、地殻・マントル・核からなる固体地球の熱化学状態(温度や物質の様子)や変動過程(成り立ちや進化)について、地球深部の不均質性、物質循環やエネルギー輸送など地球深部ダイナミクス研究センターで得られた最先端の研究成果も紹介しながら、解説します。またそれらを理解するために必要となる基礎物理法則について学びます。
壮大な地球ダイナミクスの謎を解き明かす旅へようこそ。教室でお会いしましょう。
学生からのコメント
この授業では、固体地球物理学の基礎を学んでいます。私たちが住む、この青い地球。質量や密度、構成物は、ほぼ精密にわかっています。では、それはどのようにしてわかったのでしょうか?地球を持ち比べることも、重りを使って量るわけにもいきませんよね。実は、地震波など観測によるたくさんの数値データを使って、様々な角度から計算、モデルを作り出して導き出しているのです。
このようにして、基本的な物理法則や原理を用いて、先人たちがどのように地球惑星内部の基礎物性について解説していただいているのが、この授業の内容です。
担当教員である土屋先生は、愛媛大学の地球深部ダイナミクスセンター(GRC)で自らが研究されているため、地球深部の研究について、最先端の話を聞かせてもらえます。内容は難しいときもありますが、学ぶ意思さえあれば、先生も丁寧に教えてくれます。そのため、高校時代は文系であった私でもなんとか頑張れています。また、先生はこのような理論的な世界だけでなく、みとれてしまうほどの美しい鉱物もコレクションされているため、多岐に渡って地球科学についての話をしていただけます。
地球について深く知りたい方、計算で地球の謎を探究したい方、神秘と謎に包まれた地球に関する授業を楽しみに受験勉強がんばってください!
この教育活動は、教員の実績ハイライトにも掲載されています。
教員の実績ハイライトとは、教員の「教育活動」「研究活動」「社会的貢献」「管理・運営」ごとに、特色ある成果や業績を精選・抽出したもので、学内のみならず学外にも広く紹介することとしています。