サムネイルこの授業は、地域の再生と活性化、地域イノベーションを創出する人材の育成に必要となる基本的な地域意識を涵養することを目的としています。 

 

 

 

授業内容

社会からの提言「シクロツーリズム」〜地域課題解決につながるイノベーション〜

 写真1今回の「えひめ学」では、NPO法人シクロツーリズムしまなみ代表理事の山本優子さんを講師にお招きし、しまなみ海道が舞台の自転車旅行を通した持続的な地域づくりについて学びました。
 全学必修のこの講義は、学生が様々な角度からテーマを捉えられるような工夫がされていました。NPO法人の取組みをはじめ、自転車の歴史と変遷、自転車旅行産業の市場性、産業を先行するヨーロッパとの比較、行政任せでない住民参画型の仕組みづくりなどが扱われ、一口に地域課題といっても多様なアプローチ方法があることが示されました。

 写真2NPO法人の取組み事例として、JR四国に提案して車両への自転車の持ち込みが実現した「サイクルトレイン」についてや、日本の公道でタンデム自転車が走行できるよう愛媛県警と広島県警に要望した結果、道路交通法が改正され走行可能になった経緯などが紹介されました。地域密着型の活動を続ける講師の生の声は、学生に響いていたようでした。
 現在しまなみ海道沿線に95箇所存在する「サイクルオアシス」の紹介もありました。サイクルオアシスとは、2005年に始まった「自転車モデルコースづくり事業」の一環として整備した、住民によるサイクリストへの軒先提供の場所のことです。これは単なる「おもてなし」ではなく、住民主体でNPO、行政と協働で作り上げた「仕組み」だとの説明があり、ここまでの普及に繋がったのは、その仕組みが地域に根差して機能しているからこそだと強調しました。
 講師は、地域課題の解決を使命として捉え、県全体で産業を盛り上げるベースができていることの面白さを随所で伝えていました。「数年で画期的に変わりつつある愛媛に立ち会える今はチャンスです!」との言葉は、未来の愛媛を担う学生へのエールとなりました。

教員からのコメント

 山本さんこの授業は、「えひめ学」の地域づくり実践者によるゲスト講義の一コマです。
 活動のフィールドは、愛媛県東予地区の「しまなみ海道」です。かつて離島だった瀬戸内の島々は、1999年に橋で結ばれました。架橋効果が薄れ、過疎に悩んできた島々が、今「自転車の聖地」として脚光を浴びています。授業では“海峡をまたぐ自転車道“という独自性に注目し、ふるさとのシンボルにしてきた住民の地道な活動を紹介します。活動をしくみ化し、連鎖・発展させてきたノウハウ、多様なセクターが関わることで成せる地域変革を学びます。
 私は、住民が地域づくりに関わる意義、官民の役割分担などについて、ざっくばらんな雰囲気の中で意見交換する時間を大切にしています。「えひめ学」は、多様な地域づくりの現場から生の声が届く「オムニバス形式の講義」となっており、愛媛県の有形・無形の資源、抱える課題がダイレクトに伝えられます。それらをひも解き、地域を元気にする人材としての基礎をつくって欲しいと思います。

学生からのコメント

 学生さん私は、広島県出身で愛媛県のことはほとんど知りませんでした。しかし、「えひめ学」の授業を受講するにつれ、少しずつ県の特徴を知り、親しみを感じるようになりました。
 第6回目となる今回は「シクロツーリズム」についての講義でした。現在、多くのサイクリストがしまなみ海道を訪れていることは知っていましたが、その人の多さと施設の充実さを知り、さらに驚きました。そして、その施設が地域住民に支えられているということで、人の温もりを感じました。「これなら安心してサイクリングを楽しむことができる」と確信したので、私も行きたくなりました。
 「えひめ学」では、地元の人も知っているようで知らないことを学ぶことができるので、毎回の授業が楽しみです。