お知らせ

愛媛大学無細胞生命科学工学研究センター開設記念式典及び国際シンポジウムを開催

平成15年5月15日(木)午前10時30分から、松山全日空ホテルにおいて、愛媛大学無細胞生命科学工学研究センター開設記念式典が挙行されました。

 この新しい研究センターは、無細胞生命科学技術を基盤とする生命科学工学に関する研究を行い、科学研究の総合的推進を図るとともに、併せて国内外の関連研究機関との交流及び情報発信の拠点としての役割を果たすことを目的に、設置されたものです。

式典:学長挨拶

式典:学長挨拶

  式典では、小松学長の挨拶のあとに、来賓の文部科学省研究振興局の小山学術機関課課長補佐、経済産業省の沖田四国経済産業局長、加戸愛媛県知事、中村松山市長、愛媛大学発ベンチャー(株)セルフリーサイエンスの名取代表取締役社長から、それぞれ同センターの成果を期待し、発展を祈念する旨の祝辞が述べられました。その後、遠藤弥重太センター長を始めとして、このシンポジウムに招へいされた国内外のバイオテクノロジー分野における第一人者の研究者による記者会見が行われました。
 続いて、同日午後から16日(金)にかけて、同ホテル内において国際シンポジウムが開催されました。シンポジウムには、多くの研究者や

国際シンポジウム:講演の様子

国際シンポジウム:講演の様子

学生に混じって、製薬会社や化学会社、またベンチャー企業の関係者の参加もあり、今後、遠藤センター長が開発したタンパク質を自由に合成できる技術の医療分野等への応用についての関心の高さを示しました。

 

 

  

愛媛大学無細胞生命科学工学研究センター開設記念式典挨拶

 皆様、本日はご列席いただき、大変ありがとうございます。

 本日このように盛大に、愛媛大学無細胞生命科学工学研究センター開設記念式典を多数の関係各位のご参列のもとに挙行できますことは、私どもにとって大きな喜びであります。

 この式典に、ご多用にもかかわりませずご臨席を賜りました、文部科学省研究振興局学術機関課小山様、経済産業省四国経済産業局長沖田様、加戸愛媛県知事、中村松山市長はじめ、各方面からのご来賓の皆様に、心からお礼を申し上げます。

 本研究センターは、センター長であります遠藤教授が開発した無細胞タンパク質合成技術をベースとし、無細胞生命科学、プロテオーム・医薬、進化工学、グリーン環境エネルギーの4つの部門からなるものであります。

 本センターの設置については昨年、平成14年1月から、15年度概算要求として本格的に取り組みを始めたものでありますが、法人化を前にして15年度においては新規の施設は認められない、という状況のなかで、異例中の異例として認可を頂いたものであります。これは本センターの重要な役割、設置の意義や緊急性を文部科学省にご理解いただいたこと、さらに、加戸知事はじめ各方面からの強力なご支援の賜であります。この場をお借りして改めて、心から感謝を申し上げます。

 本センターはポストゲノム時代の主役でありますタンパク質を、DNAの情報に基づいて自由自在に合成するという画期的な技術をベースに、生命現象の本質、生物に利用されていないタンパク質の意味と可能性、ゲノム創薬、オーダーメイド医療、さらには新しい材料やエネルギー資源の可能性を追求することを目的にしております。

 遺伝子情報に基づいて医療を行う、あるいは予防医療を行うこと、それも個々人の遺伝子情報に基づいて、その人に合った医療が行えるということは、人類の夢であるといっても良いでしょう。そのためには、その遺伝子情報からつくられるタンパク質や、そのタンパク質に対応して薬となるタンパク質が必要だということでありますが、本センターで開発された技術は、それを可能とするものであります。

 現在のところ、遠藤教授の開発した小麦胚芽を用いた無細胞タンパク質合成技術が、タンパク質を自由自在に作り出す世界で唯一の方法だということであります。ヒトゲノムが解読された今、世界は遺伝子情報に基づくタンパク質の合成にしのぎを削る状況にありますが、本センターはその根本を握っているということであります。したがって、その責任は極めて重いものがあります。

 これからの時代は、タンパク質利用の世界であり、タンパク質による創薬や医療、新素材やエネルギー資源の開発などが広大な大河となって世界を潤し、地球環境の再生や人類の安寧のために役立つことを期待したいと思うのでありますが、本センターはその大河のいわば水源の役割を果たすものと考えております。

 幸い、この合成技術に関連する特許を管理し、関連する事業を展開するベンチャー企業であります(株)セルフリーサイエンス社が昨年7月に立ち上がり、本センターと緊密な連携の下に、世界的な視野をもって、本格的な活動を開始しております。 私たちはこの(株)セルフリーサイエンス社の発展にも大きな期待をもっております。今後、このような企業化と言う面で、地域に貢献できるようになれば、ご支援をいただいております県や市に対して、いささかでもお返しができるものと思っているところであります。

 さて、本研究センターは言うまでもなく、大学の機関として後継者の育成と新しい学問分野の開拓もまた、重要な仕事であります。とくに、現在進行しております医学部との連携・共同研究は、新しい学問領域を開拓するという大きな可能性と希望をもって、取り組まれております。このセンターがこのように、学部・分野を超えた新しい学問領域の開拓と、人材養成のための中核の役割を果たしてくれることを願っております。

 また、遺伝子情報に基づくタンパク質の研究はこれからが本番であり、これから世界的な研究が展開されるものと思われます。そのなかで、本センターは先ほど申し上げたように、タンパク質合成技術という水源を握っているわけですから、その果たす役割は極めて重要でありますが、タンパク質の今後の重要性から考えて、これからは世界的なあるいは国際的な共同、協力がますます重要になると思われます。その点で、本日から2日間にわたって、センター開設を記念して開催される国際シンポジウムは大きな意味があります。このシンポジウムには世界の名だたるタンパク質研究者が参加して下さっております。この場をお借りして、これらの方々に感謝申し上げると共に、この国際シンポジウムの成功を祈念するものであります。

 本センターは開設されたとはいえ、工学部の一部及びベンチャービジネスラボラトリーに分散間借りの状態で、その不足を補うために、この度、文部科学省大臣官房文教施設部のご理解と加戸知事の強力なご支援によって、新しい建物が出来ることになりました。この場をお借りして、ご関係の皆様に厚くお礼を申し上げます。この建物を足場に、いずれは独立した余裕のある施設の実現を期したいと考えております。

 この度の無細胞生命科学工学研究センターの開設記念式典にあたり、ご尽力いただいたご関係の皆様に、改めて感謝申し上げますとともに、本日ご参列の皆様に厚くお礼を申し上げます。本センターに対し、引き続きご支援、ご指導を賜りますようお願い申し上げ、ご挨拶と致します。
 平成15年5月15日
愛媛大学長 小 松 正 幸