お知らせ

平成18年年頭にあたっての学長挨拶

 平成18年1月4日(水)仕事始めにあたり、学長が年頭の挨拶をおこないました。
 各部局の長及び事務系幹部職員ら約60人を前に小松学長は、「昨年は法人化2年目、大学として相応しい中身作りを1歩、2歩と確実に進めてきました。第1期中期目標期間の大きな課題として財政基盤の確立があるが、今までとは違う発想を持って大学改革に取り組まなければなりません。3月から学長として2期目に入るが、大変重要な時期であり、責任を感じている。今後も、地域のみなさまや大学構成員のみなさまの意見を取り入れて大学改革を進めて行きたいと考えています。みなさまのご支援を心からお願いします。」と挨拶を行いました。

 なお、小松学長は新年にあたり、次の5つの改革方針を発表しました。

  1.少子高齢化時代の国立大学法人
  2.世界レベルの研究を推進する
  3.地域から熱く期待され支持される国立大学法人に
  4.国際的貢献の重点的展開
  5.大学財政の健全化と自律的な運営

 

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 国立大学の法人化が行われて二年が経過しようとしています。来る3月には先日の学内での選考過程を経て、学長の任期も第二期目に入ることになります。
  この間の国立大学法人愛媛大学の大学運営をふり返りつつ、新年にあたり今後の愛媛大学の改革方針について抱負を述べたいと思います。
  申し上げたいことは次の5つの点に要約されます。
 
第一、学生中心の大学をどのように作り上げていくか
第二、世界レベルの研究をより一層活発に展開し、研究の質と規模を確保する
第三、地域にあって、地域の活性化に努め、地域住民に貢献する大学の方針を確立し、そのための諸課題を実践する
第四、先進諸国の研究拠点と連携すると共に、とりわけて援助の手を求めている東アジアを中心とする発展途上国への支援を展開し、これらの国々から尊敬される国際的な地位を確立する
第五、以上の諸課題を力強く実施する主体として、国立大学法人愛媛大学の自律的運営体制を確立し、さらに財政基盤を強化する

I 少子高齢化時代の国立大学法人

1-1 2007年には大学・短大の入学定員が、応募すると想定される

入学希望者を上回り、いわゆる大学全入時代が始まります。大学は今や入学希望者の側から見たとき、買い手市場と化し、大学側からは、受験生、入学生の質の確保が重大な課題となっ

てきます。
 高いモチベーションと質を備えた学生を確保するための手だてがどうしても必要であります。そのためには、思い切った入り口部分の改革、募集戦略の改革が必要です。AO入試の方式を大胆に採り入れること、スーパーサイエンス特別コース型の学部を横断した入試の方式、実質的なモチベーションと質を見極める推薦入試の改革、附属学校の整備などを行ない、小中高一貫した教育システム、とりわけ、高大連携などの措置を講じ

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ることが必要です。附属学校の再編統合については現在ワーキング・グループで検討中です。
 入試方式においても、一貫教育にふさわしい新しいシステムを構築するために、入試方法改革検討委員会を設置し、研究を始めることにします。

1-2 入学後の学生にどのような価値を付加することができるのか。大学間の競争は、外見の問題ではなく実質的な効果を競うものになっていくと考えられます。カリキュラムの構造化のために教育コーディネーターの配置、学生の生活学習支援のための教育・学生支援機構を立ち上げるなど、多くの措置を施してきましたが、効果はこれから表に現れてくる

ものと期待しています。特色GPに採択された「キャンパス・ボランテイア」、「ピア・サポート」など、学生が学友、後輩の手助けをする組織を大学が認定し支援していますが、このように目に見える形で学生・大学院生諸君を励ます取り組みを強めていきます。 18年度には研究開発支援経費と同様に、優れた教育改革に対する取り組みを支援する特別経費を新設します。教育コーディネーターの組織的配置を機に、大学教育のあり方・高等教育論の議論と実践を大学ぐるみで行っていくことを呼びかけたいと思います。

1-3 現在、各国立大学において焦点となっているのは大学院教育の改革であり、本学もその例外ではありません。国立大学が少子化と国際競争の激化の時代において、大学院教育に重点を移すことは避けることが出来ないでしょう。大学院教育の改革をテコに国際的にアピール出来る教育体制の実質化を実現しなければならないと考えます。大学院教育改革についてはワーキング・グループが検討を開始しています。

II 世界レベルの研究を推進する

 本学は理系の沿岸環境科学研究センター、地球深部ダイナミクス研究センター、無細胞生命科学工学研究センターの三つの先端研究センターと総合科学研究支援センターを次々に立ち上げ、また、文系の地域創成研究センターをも組織しました。国際間の競争激化の中で、知的財産の保全にもこれまで以上に精力的に取り組まなければなりません。今後も、防災、環境、遺伝子、たんぱく質治療の研究をはじめ、優良な世界レベルの研究センターを立ち上げるなど、重点的な支援を強力に推進します。
  世界レベルの研究は、運営費交付金の枠内では収まり切ら

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ない問題であり、積極的に外部資金を調達する必要があります。また、学内では、萌芽的な助走段階の研究にもきめ細かい助成を行ない、重点的に支援育成する方策をとり、外部資金の獲得のために大学の組織として積極的に取り組んでいきます。

 地方国立大学は実際には知的資産の宝庫であり、これを埋もれさせることなく潤沢な外部資金の獲得によって輝くものにしていかなければなりません。

III 地域から熱く期待され支持される国立大学法人に

 言うまでもなく愛媛大学は、地域の中にあってその教育研究活動を展開していけるのです。地域から真に信頼され、必要不可欠であると考えられ、熱い支持と期待を受けることが、大学生き残りの時代を乗り越える大前提となるものです。地域との連携は種々の機会に求められ、組織的な態勢も整いつつありますが、今後はその上に実をも

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たらさなければなりません。

 特に今後は、四国中央市、今治市、宇和島市の各市にご支

援を得ながら、サテライト・オフィスを設置

し、そこに客員教授を派遣する態勢を整えます。こうした、地域の人々の現場にあって大学の組織と大学人が活動することを通じて、地域の

ニーズを掘り起こし、諸課題を吸収し、要望に応えることにより大学の活力ともしていきたいと考えています。

 また、地域との関係は大学が一方的に資源を提供する関係ではなく、自治体とも緊密に協力しつつ、地域全体を本学のキャンパスと捉え、地域を巻き込んだ教育研究・人材育成・産業振興の態勢を構想していきたいと考えています。

 上記の先端研究の推進とも重なりますが、今年度中には、地域防災情報センターや農学部を中心として循環型社会のためにバイオマスの利用を柱とする研究プロジェクトなどの立ち上げを予定しています。こうした地域貢献型のセンターやプロジェクトを各学部においても立ち上げて、実績を上げていきます。

IV 国際的貢献の重点的展開

  科学技術基本計画の構想にも含まれているように、今後ますます国際社会から尊敬される日本を作り上げていくことが、国立大学にも強く求められると考えられます。

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 東アジアを中心に厳しい状況におかれている諸国からの留学生の受入れと同時に、それらの諸国に学生を派遣し、学習へのモチベーションを高めることにも取り組みたいと考えています。

 欧米の主要大学・研究拠点との交流を実質的に内容を深化させることに留意しつつ、引き続き維持発展させることは当然ですが、同時に、中国や韓国など東アジアの諸国、特にネパールやバングラデシュなど困難な状況におかれている諸国との交流を重点化していく必要があると思います。この面での大学の組織的な支援を通して、上記の国際的に信頼される国づくりに実質的に貢献することを目指します。発展途上国支援においては欧米の大学の国際化から学ぶ必要があり、彼らが蓄積してきた発展途上国援助のノウハウにも慎重な目配りが必要です。

 これからは実質的に発展途上国の真の働き手として本学が名乗りをあげる必要があるということです。

V 大学財政の健全化と自律的な運営

  率直に申し上げて、財政基盤の強化は我々がもっとも頭を痛めている問題であります。 この問題については12月26日と27日にかけて、各キャンパスにおいて説明会を実施しました。現在の制度のもとにおいては、人件費と教育研究費が絶対的に不足を来すことは明らかです。

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 最近の試算によれば、中期計画の最終年度において、18年度人事院勧告に準拠した給与改定を実施したとしても、人件費では9億円余の欠損が予想されます。この試算はしかし、病院の赤字が引き続き生じないという前提に立っており、実際には病院経営の19年度以降の黒字見通しは立ち難い状況です。これを乗り切るには、組織再編による定員削減などにより人件費を減らす以外にありません。

 組織再編・合理化においては、従来の国立大学において等閑視されてきた人材マネージメントの手法を大胆に採り入れ、職員の専門化や能力開発を推

し進め、少数精鋭の体制を構築することが必要です。具体的にはキャンパス事務センターなどへの一極集中の措置を取りつつ、人件費・組織の思い切ったスリム化を図らなければならないと考えます。

 また、学内の生活協同組合が一定の厚生部門を外部組織として担当受注しているのにならって、情報関連のサービス業務は、新たに受け皿となる企業を興し、ITサービス業務は思い切って外部化することを計画中です。これによって、学内のセキュリティーの水準をより一層高め、図書館サービスの電子化・ディジタル化、IT教育支援、人材の派遣等、柔軟に対応する態勢を整えることができます。

 国立大学として、予算や人事運用における自由度が増大したことを十分に活用して、財政危機を突破し、自律的な運営の実を挙げたいと考えております。

 働き手である教職員が十二分にその力を発揮し、学生大学院生諸君が地域と世界を支える個性ある働き手として自己形成することができる大学を作り上げるよう、第二期にあたっても全力を注ぐ所存であります。