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大学院理工学研究科の内藤俊雄教授らが平成27年度「北海道発明協会会長賞」を受賞しました

 大学院理工学研究科の内藤俊雄教授らが開発した「表面の電子状態を観察する特殊な顕微鏡」が、平成27年度北海道地方発明表彰で「北海道発明協会会長賞」に選ばれ、 10月30日(金)、函館国際ホテルで行われた表彰式で賞状と楯を授与されました。
 内藤教授は、前任地の北海道大学在職時に、経済産業省のプロジェクト地域新生コンソーシアム研究開発事業に採択され、研究代表者として、平成18年6月〜20年3月にかけて「観察・化学分析・電気特性測定が同時に可能なX線顕微鏡の開発」に取り組みました。
 当時、内藤教授は、光を照射するだけで、有機物に電気伝導性や磁性を付与する研究を始めたところであり、この全く新しい物性制御法の技術は、有機物に限らず広い物質に適用可能で、光、電気、磁気の3つのタイプの信号やエネルギーを相互に変換したり、演算(電気信号)と記憶(磁気信号)の両者を遠隔操作で素早く制御する未来のデバイスの開発につながっていく可能性があると考えられていました。この技術では、紫外線などの光を照射された試料が、化学反応も含めたいろいろな変化を起こし、時間とともに電子状態が変わっていくことがあります。また、こうした変化に伴い、試料表面の形状や電気特性が変わっていく場合もあります。その場合、一般に試料表面の光が当たった場所から、その周辺や深部に向けて不均一にかつ刻一刻と変化が進行します。したがって、光を照射しながら、その場で顕微観察や化学分析、電気特性測定を同時に行わないと、現象の全体像や関連性がつかめません。別の測定をするために、試料を別の装置へ移してしまうと、その途中で光照射以外に空気などと反応し、変化が混じってくることがあります。また、時間がたってしまうと、光がどの場所に、どういう風に当たっていたかも曖昧になってしまいます。そのため、光が当たっている表面を顕微鏡のように拡大して観察しながら、時間とともに変化していく電気特性と電子状態の変化を、一台の装置で、しかもリアルタイムで追跡できることが必要でした。
 そこで、内藤教授が注目したのが、光電子顕微鏡(PEEM)です。PEEMは、電子線を使い、試料表面を拡大して観察する装置で、電子顕微鏡と似ています。しかし、電子顕微鏡は、試料に当てる電子線を人工的に発生させるのに対し、PEEMは光を当てることで試料自身から放出された電子、すなわち光電子を集めて顕微画像を結像します。光電子は、試料中の電子状態・化学状態に関する情報を持っているので、顕微観察に用いるだけでなく、電子状態・化学状態の分析(光電子分光)にも使えます。さらに、試料に電極を付けて電気特性も同時に測れるようにすれば、電気特性、電子状態、試料表面の形状の3つを常に対応させながら計測できます。
 これを皮切りに、試料の温度を変えられるようにしたアタッチメント(付属品、オプション)やPEEM機能だけに特化した“小型廉価版”など、市場調査をもとにニーズに合わせていろいろな製品のラインナップを開発してきました。本プロジェクトで製品化した装置は、高価で特殊な装置であるにも関わらず、すでに何台かが販売され、使用されています。こうした装置が、当初の予想以上に使い道が広く、様々な研究・開発・検査の場面で活躍することが徐々に認められてきました。
 プロジェクト開始から10年を経て、初期のメンバーから起業した販売会社や、PEEMを独自に設計から製造、販売まで一貫してできる国内唯一の製造会社が北海道内に生まれています。こうした一連の時代を先読みした奇抜な製品開発と道内への雇用や経済効果が評価され、このたびの受賞に至りました。