令和3年9月3日(金)、4日(土)に開催された「日本蘚苔類学会第50回記念宮崎オンライン大会」において、理学部生物学科生物学コース4年生(受賞時)の三好了瑛さん(指導教員:大学院理工学研究科 今田弓女助教)が、口頭発表部門において「優秀発表賞」を受賞しました。受賞した講演題目は「多様なセン類の胞子繁殖に節足動物が与える影響」です。
三好さんの研究グループは、コケ類の繁殖や分散にどのように動物が関係しているかについて研究しています。これまで、コケの胞子はフンバエやナメクジなどの動物によって媒介される例が一部のコケで知られていました。一方、身近にある多様なコケの系統を対象に長期にわたって調査した例はありませんでした。
本研究では、野外で観察されるさまざまな種のコケの胞子体(胞子を形成する世代)に食痕がみられることに着目し、野外でどんな動物が胞子を食べているか、またどのくらい頻繁に食害を受けているかなどを1年間かけて研究しました。その結果、カマドウマやハサミムシといった林床に生息する身近な昆虫が胞子を食べており、それらに食べられた胞子は発芽能力を失うことを発見しました。また、幅広い系統のセン類が食害を受けるものの、その食害率は系統によって異なる可能性なども示唆されました。これらの結果は、多くのコケ類の胞子繁殖に節足動物がさまざまな影響を与えていることを示唆しています。豊富なデータによって裏付けられた新規性の高い内容が、当学会で高く評価されました。
今後は、胞子がなぜ昆虫に好んで食べられるかという至近的メカニズムや、胞子食に対してコケ側の適応進化といった応答がみられるかなどを解明し、コケ類と節足動物との相互作用についてさらに究明していく予定です。
<理学部>