本学図書館は、所蔵する「鈴鹿文庫」の蔵書の中から、中国・宋王朝時代の仏教教典「宗鏡録(すぎょうろく)」と「中阿含経(ちゅうあごんきょう)」を発見し、一般公開を前に記者会見を行いました。
「鈴鹿文庫」とは、京都大学で国文学を専攻し、大谷大学、ノートルダム清心女子大学、神宮皇學館大学の教授などを歴任した、関西の書誌学の開拓者と称されている鈴鹿三七氏の蔵書です。昭和42年、79才で逝去の後、その夫人と元本学図書館長井出淳二郎氏が兄妹の縁で、その蔵書を本学が一括購入(一部寄贈)し、これを「鈴鹿文庫」と呼んでいます。
発見された「宗鏡録」(巻22)は、中国・宋王朝時代に刊行された版本(木版刷り)のテキストで、全100巻あるうちの一部です。鎌倉時代中期に、金沢文庫(神奈川県横浜市)を創建した北条実時が、中国に使者を使わし求め、菩提寺である称名寺に寄進した宋版一切経に含まれていたもので、歴史的に由緒あるものです。金沢文庫は、この「宗鏡録」も含めて宋版一切経全てが、国の重要文化財の指定を受けています。この「宗鏡録」(巻22)は、元は金沢文庫にあったものと既に言及されており、鈴鹿三七氏が入手した経緯は、判っていません。
「中阿含経」(巻56)も同時期に刊行された版本(木版刷り)のテキストで、中阿含経とは「阿含経のうちで中くらいの長さの経を収録したもの」です。京都市東山区にあった三聖寺の開創時(1249〜1256年頃)、沙弥行蓮によって一切経が納められました。1808年に三聖寺の経蔵を撤去した際に、近江の学僧・佐々木海量が所有することとなり、その後各所に分散したと見られています。本学所蔵のものはその中の1冊です。 これら宋版の教典は、とても保存状態が良く、中国教典出版事業の実態や日中の文物交流、文化交流を知る上で資料的価値も高く、近く、愛媛県に文化財指定の申請をおこなう予定です。
- 資料を前に解説するシン教授
- 発見された「宗鏡録」(巻22)
なお、本学図書館では、2006年(開学記念日事業)企画展として、「鈴鹿文庫」一般公開と講演会を、下記のとおり開催しますので、この機会に是非ご視聴下さい。
一般公開
展示 愛媛大学図書館「鈴鹿文庫」の貴重書
日時 平成18年11月11日(土)〜11月19日(日) 10:00〜17:00
場所 愛媛大学図書館 3階ラウンジ (土・日 開館)
講演会 鈴鹿文庫の貴重書−900年前の書物が語るもの−
日時 平成18年11月12日(日)13:30〜15:00
場所 愛媛大学総合情報メディアセンター1階メディアホール
基調講演 「解説 −鈴鹿文庫について−」
福田 安典(教育学部助教授)
特別講演 「文化財の保存と活用 −四国地区の仏教美術作品を中心として−」
萩原 哉(善通寺宝物館学芸員)
シンポジウム 司会 福田 安典(教育学部助教授)
パネリスト 萩原 哉(善通寺宝物館学芸員)
加藤 国安(教育学部教授)
シン ドンファン(法文学部教授)
広報室