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HISTORY 〜大学院理工学研究科数理物質科学専攻 井上直樹教授〜

平成21年3月末退職の大学院理工学研究科数理物質科学専攻 井上直樹教授から、愛媛大学での思い出を寄せていただきました。

定年雑感

ソフトボール大会にて

ソフトボール大会にて

人生には節目がいろいろありますが、 27年間愛媛大学に勤務いたしましたので、いよいよ定年となると感慨深いものです。しかし、このところやたらと忙しいし、まだやり残している研究も気になるわけであまり実感がわきません。どうも往生際が悪い。まあ4月になってからゆっくりやってみようと居直りをはじめました。それにしても人生65年というのは結構長いものでその変化に驚きます。
 小学生の頃は、休みの日には父親と絵ばかり描いて遊んでいました。給食は脱脂粉乳のミルクで味はひどいものでしたし、衛生状態が悪いといっては、校庭に集められてアメリカ軍のDDTを頭から体までぶっかけられました。今そんなことをやったら、大変な問題になるでしょう。先生は絶対的な存在でしたから、モンスターペアレントなんて考えられません。高校生のときに60年安保闘争が起こり、衝撃を受けたのを覚えています。大学生のとき、教養部にはまだ旧制高校の寮がありましたので1年だけ入り蛮カラを装っていました。だんだんと世の中が豊かになり、飲み会も外でするようになりました。大学紛争のときは院生でしたが、一体大学はどうなるのだろうと皆がとげとげしくなっていました。36年前のオイルショックには慌てました。今の経済危機にあたります。
 そして現在、大学が全入時代を迎えるなんて信じられないことです。だからといって大学は卒業証書を簡単に発行することは許されません。卒業資格統一試験も必要になるでしょう。大学は知の拠点であり、教育と研究の場です。そして、教育と研究は車の両輪のようなものです。研究は教員自身の問題でもあり、また、ある程度成長した卒論生や大学院生が相手ですのでやり易いのですが、問題は低学年の教育です。教え過ぎてもいけませんが、そうかといって突き放してもいけません。そのさじ加減が難しいのです。
 話は少しはずれますが、私はスキーというものを少々やります。達人によりますと、スキーの上達にも多くの理論と技術の習得が必要ですが、大切なのは、ストックワークと姿勢、この一点につきます。難度の急斜面だとうまく滑れなくなると言いますが、これは基本の一点ができてないからです。この基本は、緩斜面で繰り返し練習し、また急斜面に挑む、その繰り返しであることを教わりました。これも教育と研究に似ています。理論および実験のいろはを学び、学問に取り組む挑戦的な姿勢が基本となります。したがって、授業はエッセンシャルミニマムで道筋をつけるだけでよいのです。あとは環境作り、自習室や図書館の充実が大切だと思います。そしてもう一つ忘れてはならないのは、学生とのコミュニケーションです。私も楽しんできました。写真は20年くらい前の学科ソフトボール大会の1コマです。以上、定年前にて。
 最後になりましたが、愛媛大学の一層の発展を期待しています。