!

重要なお知らせ

お知らせ

HISTORY 〜理工学研究科環境機能科学専攻 佐藤 成一 教授〜

平成26年3月末退職の理工学研究科環境機能科学専攻 佐藤 成一 教授から大学での思い出を寄せていただきました。

 block_57390_01_M昭和51年に赴任して以来38年間、愛媛大学にお世話になりました。この間好きなことをして大過なく過ごせたことは誠に幸運でした。これもひとえに皆様のおかげであることを感謝し、この場をお借りして御礼申し上げます。
 赴任当時、前任の教授から助手の研究費は年間4万円しか使えないと言われました。実験室で目に付くものと言えば光学顕微鏡と投げ込みヒーターの入った蒸留水をつくる装置だけだったことに戸惑い、何ができるのか、しばらく考える日々が続いたことが今では懐かしく思われます。こんな時、博士課程でお世話になった葉緑体DNAの発見者として知られる京都大学原子炉実験所の故石田政弘先生から、はなむけに頂いた「佐藤君、愛媛に行ったらひと旗あげなあかんぞ、ムシロ旗でもいいからあげなあかん」という励ましの言葉を思い出し、若かった私はなんとかせねばと気は焦るばかりでした。考えあぐねた末、葉緑体DNAに関する研究テーマを捨てて、核小体の構造について、顕微鏡を使った研究をすることにしました。理由は、競争やお金を気にせずに、しかも実験設備に恵まれない研究室でもできそうだったことです。当時教養部の生物学教室に日立製の立派な電子顕微鏡があり、沢田、池田、日原各先生そして事務職員の高市さんの温かい配慮により自由に使わせていただくことができたことは大変幸運でした。朝、暗い電顕室に入ると、観察が面白いため、終了した時には空がすっかり暗くなっていたこともなつかしい思い出の一つです。約25年間、同じテーマで研究を続け「核小体の構造と機能」について少しずつ新しい知見を蓄積することができ、レビュー掲載の依頼を数件頂いて、それまで発表してきた研究成果を拙著にまとめることができました。しかし、「ムシロ旗」をどの位の高さまで揚げることができたのか自信がありません。
 私が助手の頃は、研究に費やす時間が今と比べてたくさんあったことも幸いでしたが、定員削減に加え、最近では教育改革や社会貢献事業など、新しい試みが次々と計画されるようになりました。社会があらゆる面で高度化し国際競争が激しくなる中で、大学の教育研究への期待が大きくなるのは必然ですが、教職員の負担は増える一方です。それでも、理学部では研究業績は増加する傾向が見られます。今では、研究室の設備も赴任当時と比べて充実し、隔世の感があります。これも、教職員の皆さんが諸課題に組織的に対応し、努力を重ねていることの証であると思います。これまで以上に組織的連携を深め工夫を凝らして新しい課題や困難を克服し、これからも愛媛大学がさらに発展していくようお祈り致します。