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大学院理工学研究科平田章講師らは、原始生命体に極めて近い超好熱菌の転写装置RNAポリメラーゼの立体構造解析に成功しました

 このたび、大学院理工学研究科平田章講師は、京都大学、立命館大学、米国コロラド州立大学、米国ペンシルバニア州立大学の村上勝彦准教授らとの共同研究によって、原始生命体に極めて近い超好熱菌の転写装置RNAポリメラーゼのX線結晶構造解析に成功しました。

 ヒトを含む全生物のゲノムDNA上の遺伝情報は、まず、メッセンジャーRNA(mRNA)と呼ばれる物質に写し取られ(転写)、このmRNAの情報をもとにタンパク質が作られます。この遺伝情報発現の一連の流れは分子生物学において「セントラルドグマ」と称される過程であり、全生物に必要不可欠な生命現象です。転写反応において、mRNAの合成を触媒する分子はRNAポリメラーゼと呼ばれます。RNAポリメラーゼは、通常、複数タンパク質から成る巨大分子複合体であり、mRNAの合成に至る複雑な反応を一手に担う転写装置です。
 本研究結果から、超好熱菌RNAポリメラーゼの新たな転写機構の発見や、高次生命現象を制御する真核生物(ヒトや動物が含まれる)型RNAポリメラーゼとの分子機能進化の変遷過程などを解明するに至りました。今後、転写機構の基本原理を解明する学術的研究の発展だけでなく、RNAポリメラーゼに特異的に結合する化合物をデザインすることで新規抗菌剤の創製に繋がるものと期待されます。

 本研究成果は、総合学術誌Natureの姉妹誌である英国科学誌「Nature Communications」に平成26年10月14日18:00(日本時間)にオンライン掲載されました。

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図1 超好熱菌(アーキア型)RNAポリメラーゼのX線結晶構造(左)、真核生物型RNAポリメラーゼのX線結晶構造(右)各タンパク質ユニットは予想される機能に基づいて色分けされている。
 超好熱菌RNAポリメラーゼの全体構造は、真核生物RNAポリメラーゼと非常に似ている。両者の構造比較から、超好熱菌RNAポリメラーゼをもとに、真核生物RNAポリメラーゼは様々な機能を獲得するために分子的に進化したことが窺える。

※研究の詳細は、プレスリリースを行った際の資料をご参照ください(PDFファイル 652KB)

 なお、本研究はJSPS科研費新学術領域研究(課題番号:25118516)および愛媛大学研究活性化事業「RNA科学の拠点形成」の研究環境整備による支援を受けました。

掲載誌

「Nature Communications」
DOI:10.1038/ncomms6132

論文タイトル

The X-ray crystal structure of euryarchaeal RNA polymerase in an open clamp configuration
(和訳)オープンクランプ構造を保持したユーリアーキア型RNAポリメラーゼのX線結晶構造

<理工学研究科>