お知らせ

大学院理工学研究科の土田真愛さんが日本地震学会2016年秋季大会で学生優秀発表賞を受賞しました

 2016年10月5日(水)〜7日(金)、名古屋市で開催された日本地震学会2016年度秋季大会において、地球深部ダイナミクス研究センター (GRC) で研究を進めている大学院生の土田真愛さん(理工学研究科地球進化学コース博士前期課程1年) が、学生優秀発表賞を受賞しました。

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賞状

 土田さんは「2次元円環状モデルを用いたスラブの挙動・形態に関する数値シミュレーション」というタイトルで、GRC の亀山真典教授との成果をポスター発表しました。 近年の地震波トモグラフィー研究により、マントル中に沈み込んだプレート (スラブ) は沈み込み帯ごとに異なる描像を示すことが明らかになっています。例えば、地下660kmにある、下部マントルとマントル遷移層の境界である660km不連続面で水平に横たわる「停滞スラブ」、あるいは660km不連続面で停滞せずにそのまま下部マントルへ沈み込む「貫入スラブ」などが観察されています。 このようなスラブの挙動・形態の違いが生じる原因を探るため、土田さんらは地球の曲率の効果を模した円環形状の2次元流体力学モデルを新たに開発し、これを用いてマントル中に沈み込むプレートの数値シミュレーションを行いました。

 マントル流動の物性について、4つの条件の組み合わせを、合計160通り以上に変えて数値シミュレーションを行った結果、さまざまな挙動・形態のスラブが発現し、観察されているスラブの多様さを十分網羅することができました。 これによると、現在の東アジア下で観察されているような「停滞スラブ」は、沈み込んだ太平洋スラブの全体を見ているものではなく、真っ先に沈み込んだ先端部分が切り離されて下部マントルに崩落してしまった後の「残りもの」であると考えることができます。 加えて、シミュレーションと観測で得られているスラブの形態を詳細に比較した結果、660km不連続面におけるクラペイロン勾配(鉱物の相転移における温度・圧力依存性)と不連続面上下の粘性率の違いという2つのパラメータ値の確定は将来課題として残るものの、海溝の位置が海側に移動(海溝後退)する速度を有意に説明できることが分かりました。 これらの研究成果は、プレートやマントルのダイナミクスの理解に貢献するだけでなく、数値流体力学に基づく成果と地震学・測地学的観測とを結びつける重要な知見と期待され、審査員にも高く評価されました。

参考HP

日本地震学会

地球深部ダイナミクス研究センター(GRC)

<地球深部ダイナミクス研究センター(GRC)>