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HISTORY 〜先端研究・学術推進機構宇宙進化研究センター 鵜飼 正行 教授〜

 平成25年3月末退職の先端研究・学術推進機構宇宙進化研究センター 鵜飼 正行 教授から大学での思い出を寄せていただきました。

 block_49281_01_m私が京都大学修士課程を修了し、愛媛大学に助手として赴任してきたのは昭和48年4月でした。従って、丁度40年間愛媛大学で教育・研究に従事したことになります。電子工学出身でしたので、愛媛大学では電気工学科に所属し、講師と2人で講座を任されました。今では考えられないことですが、この状態が10年以上、私が情報工学科に移るまで続きました。最初の年から卒業研究の学生を4、5人指導し、学生時代から抱えてきた研究テーマを続けることになりました。今考えると、この最初の10年間が、私のその後の研究の礎になった気がします。上からのサポートがない代わりに圧力もなく、自由な発想でじっくり考えることができ、自分の理論モデルに確固たる自信がつきました。外国からの誘いも多くありましたが、私が研究の最先端にいると思っていましたし、愛媛大学での生活が居心地良かったので、すべて断りました。
 私のライフワークとなった研究テーマに出会ったのは卒業研究説明会で、宇宙プラズマには太陽フレアなど未解決の爆発現象があるという話を聞いた時でした。その当時、京都大学電気工学系では、工学的応用だけではなく、このような基礎物理的な研究を重視する自由な空気がありました。特に、フレアを引き起こす爆発的磁気エネルギー変換機構には、磁力線の再結合(リコネクション)が鍵を握るという話に興味を持ちました。本来ソレノイダルな磁力線が、ある特異点でちぎれ、別の磁力線とつなぎかわるとき、爆発的エネルギー変換が起きるという考えです。私は、就職が良いという理由で工学部を選んだのですが、もともと物理に興味がありましたのでこのテーマを選びました。この問題に本格的に取り組んだのは、愛媛大学に赴任してからです。関連する物理の基礎を徹底的に見直し、問題を整理した結果、一般に信じられている定説に大きな疑問を持ったのです。そこで、ある条件が満足されると、一種の非線形不安定として、系内部からカタストロフィが起きるという「自発的高速磁気リコネクション」という理論モデルを考えつきました。この考えを実証するには、その当時利用され始めていた、計算機シミュレーションという手段を用いる必要があり、京大の計算機を利用するため、何度も出張することになりました。その後は、インターネットの普及により、愛媛大学の研究室から直接最新のスーパコンピュータが使用できるようになり、研究効率が格段に向上したのは幸運でした。
 磁気リコネクションの問題は、現在でも難問中の難問として知られ、多くの理論モデルが消沈を繰り返してきました。私は、首尾一貫して「自発的高速磁気リコネクション」という理論モデルを主張しており、やがてその正当性が証明されると信じています。定年後は、義務を伴わない形で、自由気ままに研究を続けたいと思います。最後に、このような楽しい充実した研究生活を長年にわたって続けてこられたのは、研究室のスタッフだけでなく、愛媛大学教職員の皆様のおかげだと思っています、深く感謝しています。