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GRCの入舩徹男教授の研究チームが超高圧を利用した透明ナノセラミックスの合成に成功しました

 地球深部ダイナミクス研究センター(GRC)の入舩徹男センター長・教授を中心としたの研究チームが、地球マントルの主要鉱物であるとともに、レーザー発振素子など光学材料としても重要であるガーネット(ざくろ石)の透明ナノ多結晶体の合成に成功しました。

合成された透明ナノ多結晶ガーネット(左上は「ヒメダイヤ」)

合成された透明ナノ多結晶ガーネット(左上は「ヒメダイヤ」)

 酸化物などの微細な結晶を焼き固めたセラミックスは、古くから陶器やレンガ・瓦など様々な利用がされてきました。通常のセラミックスは不透明ですが、近年、不透明の原因である光の散乱や吸収の基となる空孔や不純物のないセラミックスが開発され、「透明セラミックス」として、レーザーや光学レンズなどに応用されています。
 従来の透明セラミックスは、通常1ミクロン(1000分の1ミリ)から100ミクロン程度の結晶の粉末を大気圧下で焼き固めた(焼結)ものですが、個々の結晶のサイズをこれより更に小さくして、0.1ミクロン(100ナノメートル)以下の「ナノサイズ」にすると、セラミックスの透明性が向上するとともに、硬さも増す「透明ナノセラミックス」ができるのではないかと予想されていました。
 研究チームは、通常の焼結法と比べてはるかに高い10万気圧以上の超高圧と、1400℃程度の温度を加えることにより、透明ナノセラミックスの一種である「透明ナノ多結晶ガーネット」の合成に成功しました。得られたナノ多結晶ガーネットは、一つの結晶の大きさが30ナノメートル程度の超微細結晶からなり、宝石などに使われる単結晶ガーネットと同程度の透光性とともに、単結晶に比べて約30%高い硬度を有することも明らかになりました。
 入舩教授らが2003年に開発に成功した超高硬度ナノ多結晶ダイヤモンド(ヒメダイヤ)は、民間企業との共同研究を経て製品化されるとともに、現在では世界の多くの研究室で様々な研究に利用されています。ヒメダイヤの作成手法を発展させ開発した今回の超高圧合成法を用いて、更に新しい多様な透明ナノセラミックスの開発と、そのレーザーや光学素子などへの応用が期待されます。また、ガーネットは地球マントルの主要構成鉱物の一つです。本研究によるガーネット合成は、地球深部の構造や化学組成の解明のため、地球科学における高圧実験用素材としても重要です。
 この研究成果は、イギリスネイチャー出版のオンラインジャーナルNature Communications誌の12月7日版において公開されました。

記者説明会にて(右:入舩徹男GRCセンタ―長、左:大藤弘明GRC教授)

記者説明会にて(右:入舩徹男GRCセンタ―長、左:大藤弘明GRC教授)

発表論文

Tetsuo Irifune, Koji Kawakami, Takeshi Arimoto, Hiroaki Ohfuji, Takehiro Kunimoto, Toru Shinmei, Pressure-induced nano-crystallization of silicate garnets from glass, Nature Communications, doi: 10.1038/NCOMMS13753, 2016.

参考HP

論文HP

Nature Communications   

愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター

プレスリリース資料(PDFファイル 2MB)

<地球深部ダイナミクス研究センター(GRC)>