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「マイナーからメジャーへ昇格?!」大学院農学研究科の渡辺誠也教授が細菌による糖代謝の新経路を発見しました【1月17日(木)】

 渡辺誠也 愛媛大学大学院農学研究科教授(沿岸環境科学研究センター教授 兼任)、福森文康 東洋大学教授、西脇寿 愛媛大学大学院農学研究科准教授、櫻井康博 京都工芸繊維大学博士研究員、田嶋邦彦 同教授らの研究グループは、D-キシロース・L-アラビノース・D-アラビノースといった五炭糖を代謝する細菌の新経路を発見しました。

 私たちが使っている分子生物学の教科書には、「細菌は五炭糖をリン酸化して代謝する」と必ず記載されています(図1)。一方、ある種の細菌は五炭糖をリン酸化を伴わない経路を通じてグリコールアルデヒドとピルビン酸(第1経路)、あるいはα-ケトグルタル酸(第2経路)へと変換することが知られていましたが、その詳細な概要は50年以上に渡って謎のままでした(図2)。渡辺教授による2006~2008年にかけてのL-アラビノース代謝に関与する(第2経路の)全遺伝子の同定以降、他の細菌や古細菌でもこの経路に関連する代謝遺伝子が相次いで報告されると、それらがゲノム上でクラスター(集団)として位置することが分かってきました。今回、渡辺教授らはこれらの情報と化合物ライブラリーを用いた基質スクリーニングを巧妙に組み合わせることで、既知ものとは全く異なる遺伝子(酵素)がD-アラビノース代謝に関与していることを明らかにしただけでなく、五炭糖からグリコール酸とピルビン酸が生じる第3経路も新たに発見しました。これらの知見は、遺伝子クラスターを利用した機能未知遺伝子の基質同定と新規代謝経路発見の有用性を改めて実証するとともに、もはや解明済みと思われていた糖代謝という基本的な生命現象の中にも未知の経路が眠っていたという驚きを私たちに与えてくれます。

 ゲノム情報が蓄積するにつれて、リン酸化を伴わない五炭糖の代謝経路を持つ微生物の数は決して少数ではないことが分かってきました。野球に例えるならば、“マイナーや育成選手”だと思われていたこれらの経路が“メジャーや支配下選手”に昇格し、既知のリン酸化経路と並列に扱われる日も近いかもしれません。

 本研究成果は、2019年1月17日(英国時間)にNature Publishing Groupの発行する学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。なお、本研究の一部は、JSPS科学研究費補助金基盤研究(C)(16K07297;研究代表者 渡辺誠也)、住友財団 基礎科学研究助成(研究代表者 渡辺誠也)、農学研究科研究グループARG(生命機能科学応用開発グループ;グループ長 渡辺誠也)の支援を受けて行われました。

掲載誌

Scientific Reports 9, Article number: 155 (2019) DOI:10.1038/s41598-018-36774-6

題名

Novel non-phosphorylative pathway of pentose metabolism from bacteria.

著者

Seiya Watanabe1,2,3, Fumiyasu Fukumori4, Hisashi Nishiwaki1,2, Yasuhiro Sakurai5, Kunihiko Tajima5, Yasuo Watanabe1,2

1 Department of Bioscience, Graduate School of Agriculture, Ehime University,2 Faculty of Agriculture, Ehime University,3 Center for Marine Environmental Studies (CMES), Ehime University,4 Faculty of Food and Nutritional Sciences, Toyo University,5 Department of Bio-molecular Engineering, Graduate School of Science and Technology, Kyoto Institute of Technology