お知らせ

「愛媛大学・熊本大学・鹿児島大学 三大学合同七夕講演会2022」を開催しました【7月9日(土)】

令和4年7月9日(土)、愛媛大学先端研究・学術推進機構宇宙進化研究センターは、日本天文学会が毎年主催する「全国同時七夕講演会」のイベントの一環として、当センター発足当初から教育、研究で愛媛大学と連携している熊本大学、鹿児島大学と「三大学合同七夕講演会2022~宇宙への招待~」をオンラインで開催しました。各大学の教員、研究員がそれぞれの研究分野について講演を行い、100人近くの方の参加がありました。

本講演会では、はじめに、鹿児島大学天の川銀河研究センターの半田利弘副センター長の開会挨拶があり、その後、熊本大学理学部の高橋慶太郎教授から「地球外生命を探せ!」と題し、「近年、科学的に研究できるようになった地球外に知的生命体はいるか」という人類にとっての大きな疑問について、講演がありました。高橋教授は、太陽系の各惑星の特徴を紹介した後、その中で土星の衛星エンケラドスの氷の下には海があり、そこから毎秒250kgも噴出される大量の水蒸気の中にはメタンやアンモニア、エタノールなどの有機化合物が含まれていることなどから、生命体がいる可能性が最も高い天体であることを説明しました。また、太陽系外惑星については、ハビタブルゾーン(生命にとって重要な液体の水がありうる恒星から程よい距離)に入る地球型の岩石惑星が十数個見つかっているが、実際に生命や知的生命体の存在を見極める観測や探査は難しいため、宇宙からの電波を受信するための「地球外知的生命探査SETI(Search for Extra-Terrestrial Intelligence)」や、2021年からアフリカ大陸で世界各国が共同して2000個もの電波望遠鏡の建設を進めている「SKA(Square Kilometer Array)計画」について、解説しました。

続いて、鹿児島大学の酒見はる香プロジェクト研究員から「なぜ宇宙ジェットが折れ曲がる?電波観測で迫る銀河団内部の構造」と題した講演がありました。宇宙ジェットとは、ブラックホールなどの重たい天体に落ち込んでいる物質の一部が細く絞られて噴出する現象で、銀河からまっすぐ伸びている飛行機雲のようなものです。その宇宙ジェットについて、銀河や銀河団の運動によって折れ曲がる現象は珍しくはありませんが、酒見プロジェクト研究員らの研究グループが衝突銀河団Abell3376の中に、上下方向に噴出した後、左右(二方向)に折れ曲がる“奇妙な”宇宙ジェットを発見し、その原因を探るため、南アフリカにある電波望遠鏡群MeerKATを使って観測したことが紹介されました。そして、宇宙空間には、至るところに磁場が存在しますが、磁場にはゴムのように伸縮する磁気張力があり、衝突した銀河団によって作られた磁場の壁にジェットがぶつかり折り曲げられたという研究結果をシミュレーション画像とともに紹介されました。また、酒見プロジェクト研究員は、前の講演で熊本大学の高橋教授が紹介した「SKA計画」によって、今後さらに、複雑な構造を持つ宇宙ジェットが見つかれば周辺環境の理解が進むと今後の研究の展望に期待感を示しました。

最後に、本学宇宙進化研究センターの内山久和特定研究員が「クェーサーと銀河の関係から迫る宇宙の進化」と題し、講演しました。私たちが住む太陽系の属する天の川銀河は、銀河や銀河団が結びついた「宇宙の大規模構造」の一部です。内山特定研究員は、大規模構造はダークマター(暗黒物質)の強力な重力源の影響で網目状に秩序立った構造になっていることをシミュレーション動画で解説しました。ダークマターは、目に見えない透明の物質なので観測が困難ですが、周辺の銀河を観測することでダークマターの分布を推定することが可能です。その中で、ダークマターが集まっているところに銀河が存在しないことがあることに注目し、内山特定研究員らの研究グループは、宇宙の中で最も明るく星のように見える天体クェーサーが、形成されるはずの銀河を「蒸発」させると理論予測しました。国立天文台ハワイ観測所の超高性能カメラHyper Suprime-Cam(HSC)で観測したところ、実際にクェーサーの近くでは銀河が少なかったことから、クェーサーによって銀河が「蒸発」していることを世界で初めて観測しました。ダークマターと銀河の「ずれ」の原因の一つを発見したことによって、今後、より正確に宇宙の進化を予想することの助けになります。

各講演の後に設けられた質問コーナーでは、参加者から音声やチャットを通して積極的な質問が上がり、講師らと交流する時間となりました。

愛媛大学は、今後も、熊本大学、鹿児島大学と合同で講演会を開催していく予定です。

<宇宙進化研究センター>