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催奇性を回避できるサリドマイドの改良とそれを応用した新たなPROTACの開発に成功しました

このたび、プロテオサイエンスセンターの山中聡士特定助教らの研究グループが、サリドマイドの重篤な副作用である催奇形性を軽減したサリドマイドの改良とそれを応用した新たなPROTACの開発に成功しました。この成果は、重篤な副作用を軽減したタンパク質分解誘導剤開発への第一歩となります。

サリドマイドは半世紀以上前に開発され、胎児に重篤な催奇性を誘発し、世界最大の薬害を引き起こした低分子薬剤として広く知られています。現在、サリドマイド誘導体は血液がんの治療薬として年間約1兆円以上の規模で使用されています。しかしながら、催奇性を回避したサリドマイド誘導体は報告されていません。副作用を軽減することは現状では困難でした。

これまでの研究から、サリドマイドやサリドマイド誘導体はタンパク質分解誘導剤であることが明らかになっていました。山中特定助教らは、研究グループが開発してきた技術を用いることにより、抗血液がん作用に関与するタンパク質を分解誘導し(薬理作用を維持もしくは向上)、サリドマイド催奇性に関与するタンパク質を分解誘導しない(副作用の軽減)、新規サリドマイド誘導体が開発可能であると考えました。

研究グループは、有機合成によりサリドマイド誘導体の化学構造を改変し、薬理作用を持ちながら、副作用を軽減するサリドマイド誘導体を開発し、その作用を詳しく解析しました。その結果、数種類のサリドマイド誘導体が、既存薬レナリドミドが使用されている血液がんである多発性骨髄腫や5q MDS症候群由来の培養細胞株に有効性を示しました。さらに、この改良型サリドマイド誘導体を、次世代の治療薬として期待されているキメラ化合物PROTACへ応用したところ、催奇性に関与するタンパク質の分解が抑制され(副作用の軽減)、薬効標的タンパク質をより選択的に分解誘導する(高い薬理作用)ことを示しました。

本研究成果により、催奇性を回避したサリドマイド誘導体の開発や様々な疾患に対する選択的なPROTACsの開発が促進されることが期待されます。

この研究成果に関する論文は、令和5年8月18日(金)付けでNature Communications誌に掲載されました。

論文

研究グループ

  • 愛媛大学プロテオサイエンスセンター:山中 聡士 特定助教、澤崎 達也 教授、降旗 大岳 特定研究員、柳原 裕太 特定助教、今井 祐記 教授
  • 名古屋工業大学大学院工学研究科:柴田 哲男 教授
  • 徳島大学先端酵素学研究所:小迫 英尊 教授
  • 京都大学大学院生命科学研究科:宮川 拓也 准教授
  • 東京大学:田之倉 優 名誉教授

参考

■ プレスリリース(令和5年8月18日付)
記者説明会の様子 質問に答える山中特定助教(左)と 澤崎センター長(右)
■ 新聞掲載(令和5年8月23日付愛媛新聞)
令和5年8月23日付愛媛新聞(総合)
許可番号:d20230823-04

<プロテオサイエンスセンター>