プレスリリース

昆虫の「至高のコケ擬態」のからくりに迫る —イモムシがもつ”柔らかいツノ”の多面的な機能を発見—

概要

愛媛大学大学院理工学研究科 今田弓女助教は、「生物の多様なかたちは、環境や他生物との関わりのなかでいかに方向づけられてきたか」という生物学上の普遍的な問いに切り込むため、コケ類に巧妙に擬態する特異な昆虫の生態、形態とその機能を解明しました。

コケ類を食べるシリブトガガンボ亜科(ハエ目)昆虫の幼虫のコケ類に似た姿は2世紀以上前より知られ、注目を集めてきました。しかしあまりに精巧な擬態ゆえに採集が困難で、ほとんどの種の幼虫が未知でした。本研究では、長年の調査のすえ、本亜科の5属8種の幼虫を発見、記載し、その生態と形態を解明しました。幼虫のコケ擬態には「肉質突起」という”柔らかいツノ”が関わっており、その形は種ごとに異なり、生息環境や食草と深く関連していることが判明しました。さらに、肉質突起の一部はイモムシの腹脚に似て発達した筋肉を内部にもち、幼虫の運動に関与することを発見しました。元来は地中にいたものが陸上の植物食者となるのに伴って、陸上生活に適した運動性を獲得したり、多くの天敵から身を守る必要があったと考えられます。柔らかいツノのような不可思議な構造はほかの昆虫の幼虫からも知られていますが、それが多面的な役割を果たしうることを示した世界で初めての例といえます。

本研究成果は、2020年12月25日に英国リンネ協会の発行する動物学の国際学術誌「Zoological Journal of the Linnean Society」にオンライン掲載されました。

参考HP

論文HP

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大学院理工学研究科 助教 今田 弓女

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