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プレスリリース

東南アジア熱帯林の形成過程を解明 ~フタバガキ科樹種の遺伝的解析で、今後の保全にも貢献~

概要

東南アジア熱帯林は生物多様性に富み、種の宝庫だと言われます。多くの生物種が共存し、多様な生態系を形成しているからです。その中でもフタバガキ科樹種は、生態的、林業的に最も重要な樹種です。しかし、フタバガキ科樹種の過度の伐採やプランテーションの開発などにより、この貴重な熱帯林は衰退の一途をたどっています。こうした中、この熱帯林の保全と持続的利用を図るには、その形成過程を理解した上で、保全や利用に関する指針を作る必要があります。

このため本研究では、フタバガキ科樹種で、東南アジア広域に分布するラワン材として知られるShorea parvifoliaを研究対象として、DNA解析を実施しました。研究材料を採取したのは広範な分布域(マレー半島、スマトラ島、ボルネオ島)の合計18集団で、その葉緑体DNAと核DNAを解析しました。その結果、ボルネオ島の集団はマレー半島、スマトラ島の集団とは遺伝的に大きく異なっていました。また、葉緑体DNAの遺伝的多様性はマレー半島が高く、核DNAの遺伝的多様性はボルネオ島が高い結果でした。これまでの知見と本研究により、Shorea parvifoliaはマレー半島、スマトラ島、ボルネオ島が陸続きになった氷期にマレー半島からスマトラ島とボルネオ島に進出し、ボルネオ島ではその後に急速に分布拡大したことが明らかになりました。

以上を踏まえると、マレー半島、スマトラ島、ボルネオ島をそれぞれ保全地域とし、これらの地域間での植栽材料の移動は避け、保全地域内で活用していくことが求められます。

本研究結果は、本研究チームが過去に発表した広域分布フタバガキ科樹種Shorea leprosulaのDNA解析とほぼ同様の結果となり、東南アジアの広域分布種についてはマレー半島、スマトラ島、ボルネオ島などの地理的区分での保全が必要であることが分かりました。

共同研究者

筑波大学生命環境系/山岳科学センター 津村 義彦 教授
森林総合研究所樹木分子遺伝研究領域 上野 真義 針葉樹ゲノム担当チーム長
国際農林水産業研究センター林業領域 谷 尚樹 主任研究員
愛媛大学農学部生物環境学科 上谷 浩一 准教授

プレスリリース資料はこちら(PDFファイル 1,106KB)

お問い合わせ先

<研究に関すること>筑波大学生命環境系山岳科学センター 教授 津村 義彦

Tel 029-853-4629
Mail  tsumura.yoshihiko.ke@u.tsukuba.ac.jp

<取材・報道に関すること>筑波大学広報室

Tel 029-853-2040
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