愛媛大学大学院理工学研究科 内藤俊雄教授を代表とする研究グループが、今まで30年間解明できなかった、超伝導体候補物質の一つが超伝導性を実現するための必要条件を明らかにしました。今回、超伝導体と絶縁体の境界に位置するこの物質について、その相反する性質を生み出す原因を明らかにするとともに、今後の超伝導体の開発・設計への示唆を得ました。
概要
この研究で取り上げた物質は、同一の物質でありながら、試料によって超伝導体(電気抵抗がゼロ)になったり、絶縁体(電気抵抗が無限大)になったりと、全く矛盾する性質を示す不思議な物質です。この物質中の原子の配列を詳しく調べ、電気特性とも対応させて比較した結果、超伝導体になる試料と絶縁体になる試料の分子のごく一部に非常にわずかな形状の違いがあることが分かりました。全く予想外であったのは、形状の違いが見つかったこの問題の分子の部分は電気の通り道に含まれておらず、超伝導・絶縁の違いといった電子的性質には無関係だと思われていた場所だということです。このことが、約30年間にわたりこの物質の伝導性の謎を誰も解明できなかった理由と思われます。